ENJOYWORKS TIMES

【FSK LAB第2回レポート】お店を開く前に、まずは畑を知る。和歌山・紀の川の農家さんとの出会い

Feature Project Report 公開日:2026/10/06

果物を使ってお菓子や料理をつくる人は、その果物が育った畑をどれくらい知っているでしょうか。仕入れ先から届く果物は、形も大きさもそろった「商品」です。けれど産地では、その陰で、傷があるものや大きさが基準に届かないものが日々生まれています。味わいは変わらないのに、行き場のない果実。それを誰が、どう活かすのか。その答えは、畑と厨房の距離が縮まったところにあるのかもしれません。

和歌山県紀の川市は、桃や柿、みかん、いちじくなど、一年を通じて多彩なフルーツが実る産地です。私たちエンジョイワークスは2023年からこの町の粉河エリアで、農家さんや行政、地域の事業者とのつながりを育ててきました。拠点は、大正期の旧旅館をリノベーションした「紀の川三笠館」。ここでフルーツをテーマにしたマルシェを開き、粉河駅から粉河寺へ続く「とんまか通り」を中心としたエリアリノベーションを進めています。

その延長線上で、この夏に始まったのが「FRUITS STREET KOKAWA LAB」。パティシエや料理人、カフェ開業、フルーツを使った「商い」を目指す人たちを、農家さんと直接つなげる試みです。規格外や未利用のフルーツを素材に、商品開発から試販売、出店までを全6回で実践するプログラムです。8月の顔合わせで紀の川という産地に出会った参加者が、次に向かったのは畑でした。

第2回「フルーツと農家さんに会いに行く」で訪ねたのは、八旗農園さんとおおくぼ果樹園さん。「果物たち」はどのように育ち、どこへ行くのか。満員となったこの回で、参加者は農家の言葉からその答えを探しました。(プログラム担当・レポート:エンジョイワークス・和田拓将、齋藤璃子)

◾️FRUITS STREET KOKAWA LABウェブサイト
https://mikasakan.com/ja/fluits-lab/

「もったいない」の先で、農家さんが続けてきたこと
八旗農園さんは、県の誇る地域ブランド「あら川の桃」の生産者。栽培のほか、規格外の桃を加工品にしています。さらに、周辺の農家さんの規格外品もJAより高い価格で引き取り、地域全体の廃棄を減らす活動も。見学では、加工品を手がけるようになった経緯や加工工程を説明していただきました。参加者のアンケートには、「商品になりにくい規格外品を無駄にしたくないという、作物への愛情を感じた」という声がありました。一方で、「加工してもなお廃棄が出ることに驚いた」という感想も。加工すれば廃棄がゼロになるわけではありません。その現実を知れたのも、現地に足を運んだからこそです。

なかなか見れない加工場。実際に見学しながらお話を聞く貴重な機会に

次にうかがった、おおくぼ果樹園さんは、夏にイチジク、秋には柿、冬に八朔と多品種を手がけており、広い畑を2人で管理しています。後継者が見つかったことを話してくださったときの喜びは、複数の参加者の印象に残りました。気候によって果実の育ち方が変わること、柿の袋かけの方法など、栽培の具体的な話も聞けました。「商品の見方が変わりそう」と新たな視点を得たようです。

商品の背景にある、生産者の技術と自然との関わり。農園見学を通じて、第一次産業が生み出す価値を捉え直します

「自分にもできそう」と「大変そう」を、両方持ち帰る
訪問後、参加者には「自分にもできそうと感じたこと」と「大変そうだと感じたこと」をたずねました。できそうという声には、次のようなものがありました。「一次加工品を組み合わせてアレンジする商品開発なら、勝ち筋があるかもしれない」「ジャムなど加工品の併売」「加工業者さんと農家さんに直接会えたことで、仕入れのハードルが下がった」。「大変そう」という感想の中身は、早朝からの収穫、収穫から出荷・加工までの一連の作業、気候による収入の差、新しい設備を入れる費用といった、消費者には見えていない現場のこと。「毎年同じように果樹を育て、収穫し続けること」に目を向けた人もいました。

興味深かったのは、複数の参加者が触れた「ロット」の問題。「販売の最小ロットがもう少し小さければ購入したい」「ピンポイント・小ロットで取引してくれる農家さんがあるのか不安になった」。お店を始めようとする人に必要な量と、農家さんが出荷する単位には差があります。このすき間をどう埋めるかは、このプログラムが向き合う具体的なテーマとして浮かび上がりました。

「自分のやりたいことを、フルーツにどう結びつけるか」に悩む声もありました。「ママと子の居場所づくり」を構想している人もいれば、柿に合うケーキの組み合わせを模索している人もいます。どちらも、自分のテーマとフルーツの接点を一緒に探る場を求める声かもしれません。

つくる人と出会い、地域のフルーツを使った商品づくりを考える。挑戦へのヒントと、実現に向けた課題が見えてきます

農家さんの側から見えたもの
今回は、受け入れてくださった農家さんにもアンケートをお願いしました。印象に残ったこととしてあがったのは、「お取引を検討したい」と声をかけられたことです。質問や話の内容が濃かった参加者のことも覚えていてくださいました。

そして、とんまか通りにあったらいいと思うお店をたずねると、二つの答えが返ってきました。一つは「しっかりしたご飯やデザートが魅力的で、たまに夜はバーをやるような、地域の人も集まれるお店」。もう一つは「紀の川の魅力を発見させてくれる店」です。協力したいお店の条件は、「私とやりたいという気持ちがあるお店」でした。シンプルな言葉ですが、産地と作り手の関係の本質を突いていると感じます。農家さんにとっても初めての試みでしたが、この日の出会いが取引や協業へとつながる「芽」となりそうでワクワクしました。

背中を押すより、解像度を上げた一日
今回は参加者自身の「構想の解像度を上げる」ためのプログラム。農家さんの仕事と、規格外フルーツの現実に触れて「大変さ」も見えてきた。でも、「やってみたい気持ちは変わらない」。そう答えた参加者がいたことが、それを物語っています。畑と厨房の距離は、一度の訪問で縮まるものではありません。けれど、その距離の中身を知ったことが、次の一歩の足場になるといいなと感じました。加えて、参加者同士のコミュニケーションも生まれていて、気付きの共有のほか、お互いの構想も刺激になったようです。

*****
次回、第3回は「現地へみんなで行って妄想する(まち歩き)」。産地で見たものを胸に、今度はとんまか通りを歩きます。空き店舗を前に、自分のお店のかたちを思い描きます。これまで参加していない方も歓迎です。
◾️FRUITS STREET KOKAWA LAB 第3回「現地へみんなで行って妄想する(まち歩き)」
日時:2026年10月18日(日)
会場:紀の川三笠館(和歌山県紀の川市粉河2086)
参加費:無料(実費負担あり)
詳細・申し込み:https://mikasakan.com/ja/fluits-lab/

*****
今回、見学を受け入れてくださった農家さんたちは、新たな販路づくりにも取り組んでいます。
詳細はこちら https://enjoyworks.jp/news/33572/

マルシェは「つどいの実」と名付けられ地域と農家さんの繋がる場へとなっています

全ての記事 Column (57) Feature Project (91) Interview (31) New Topics (95) Report (37) 数字で読むエンジョイワークス (12) 自治体共創 (39)

ENJOYWORKS TIMES

Follow us