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Life with ONSEN——別府だけがもつ湯のかたち

Column 公開日:2026/09/29

健康は時代を問わず、世界共通の関心事です。国や文化の違いはあれど、人々は心と体を整える方法を探し続けています。その中でも「湯に浸かる」という健康法は、人類史においてもっとも古い癒やしの手段のひとつと言われています。世界を見渡せば、「湯」にまつわる名だたる温泉都市がいくつも挙げられます。ニュージーランドの北島にあるロトルア、アイスランド南西部のブルーラグーン、お風呂(bath)の語源であるイギリスのバース、フランスのちょうど真ん中、盆地地帯にあるヴィシー。まだまだありますが、では、温泉大国、日本で私たちが拠点を置く別府は、これらの都市と何が違うのでしょうか。そして、その理由はどこにあるのでしょうか。

世界に名だたる温泉都市たち
ロトルアは、タウポ火山帯に広がる地熱地帯。マオリの先住民文化とともに、大地の力そのものに身を委ねる湯治文化を育んできました。ブルーラグーンは、もとは地熱発電所の排水という偶然の産物です。シリカや藻類が生み出す乳白色の湯を持つリゾート地として世界中から旅行者を集めています。バースは、ローマ帝国時代の浴場遺跡を持つ英国唯一の温泉地。1987年に「バース市街」として世界遺産に登録され、2021年には「ヨーロッパの大温泉保養都市群」の一員としても再登録されました。現在はスパ施設でしか入浴できず、湯そのものよりも遺跡と建築美、文学的な文化資産としての価値が際立ちます。ヴィシーは、ナポレオン3世が主治医の勧めで通ったことをきっかけに本格整備が進んだ保養都市です。温泉水を「飲む」という飲泉文化が今も息づいています。

世界の温泉地では、自然景観や歴史的建築とともに、温泉が特別な滞在体験として親しまれています

いずれの都市にも共通するのは、温泉が「非日常」として切り取られていること。旅行者はその土地を訪れ、遺跡を見学し、リゾートで癒やされ、また日常へと帰っていきます。

別府は何が違うのか——火山列島がつくる奇跡の地形
日本は、環太平洋火山帯の上に連なる火山列島です。国土の随所に火山が分布し、その恩恵として全国各地に無数の温泉が湧き出しています。世界の陸地面積に占める日本の割合はごくわずかにすぎませんが、世界の活火山のかなりの割合が集中すると言われるほどの、稀有な地質環境です。その中でも別府は、日本有数——いや世界でも屈指の湧出量を誇る温泉地。源泉数・湧出量ともに世界トップクラスとされ、泉質の種類も驚くほど多様で、世界に存在するとされる泉質のうち、実に7割前後を有すると言われています。

山から海へと続く扇状地に市街地が広がる別府。火山がつくった地形と温泉が、まちの日常に溶け込んでいます

けれど、別府の独自性は数字だけでは語れません。まちを歩けば、山と市街と海が、驚くほど近い距離で凝縮していることに気づきます。鶴見岳をはじめとする山々の裾野に広がる扇状地の上に市街地が形成され、坂を下ればすぐそこに別府湾が広がる。火山活動によってつくられたこの複雑で立体的な地形こそが、まちのあちこちから湯けむりが立ちのぼる独特の風景と、多彩な泉質を生み出す土壌になっています。まちの八カ所に湯どころが点在する「別府八湯」には、昭和レトロな共同浴場建築が今も現役で残り、地元の人々が日常的に湯に浸かっています。地獄と呼ばれる坊主地獄や血の池地獄が見せる、青・赤・白という地熱ならではの色彩も、火山地帯であるこの土地の地質が生み出す唯一無二の景観。同じ火山帯の恵みを受けるロトルアと比較しても、山・街・海がこれほど近接し、しかもそれが生活圏と一体化している例は珍しいのではないでしょうか。

そして何より、別府では温泉が「非日常」として切り離されていないことも特筆すべきかもしれません。観光客が訪れる特別な場所である以前に、住民にとっては毎日の暮らしの一部。仕事帰りに共同浴場に立ち寄り、近所づきあいの延長で湯を共にする——そんな光景がまちのそこかしこに。自然の力と人々の営みが境界なく重なり合い、温泉が生活そのものに溶け込んでいる。これこそが、世界の名だたる温泉地とも異なる、別府だけが持つ在り方です。「Life with ONSEN」——湯と暮らしのハイブリッド。それを体現する温泉都市は、世界を見渡しても、そう多くはありません。

まちに立ちのぼる湯けむり、日常の風景、温泉の蒸気を生かした食文化。別府では、温泉が暮らしのあらゆる場面に

TOJIHAUSという答え
私たちが別府で取り組む「TOJIHAUS」は、まさにこの別府らしさを、滞在という体験に翻訳する試み。「TOJI」は、湯治から。温泉地に長く滞在し、湯に浸かりながら心身を整える、日本古来の知恵に由来しています。かつての湯治は、自炊をしながら温泉のそばで静かに佇み、質素に淡々と過ごす素朴な営みでした。今も昔も、その本質は変わりません。

そこで目を向けたのは、まちに点在する空き家です。単に古くなった建物を直すのではなく、その土地の空気感や近隣との程よい距離感を継承しながら、現代の「暮らすように滞在する」空間へと再生させる。すべての物件に共通するのは「シームレスな空間」という思想です。食べる、くつろぐ、働く——それらが途切れることなくつながることで、ホテルの部屋では得られない、自分の家にいるような自由さが生まれます。観光として温泉を「消費」するのではなく、別府というまちごと好きになってもらう。TOJIHAUSが目指しているのは、そんな滞在のかたちです。

◾️TOJIHAUSウェブサイト https://tojihaus.jp/

既存の梁や柱、建物の記憶を受け継ぎながら、別府での新しい滞在のかたちへと再生したTOJIHAUS

世界の名だたる温泉都市を見渡してあらためて見えてくるのは、別府という土地が持つポテンシャルの大きさ。火山列島という地質的な奇跡の上に、暮らしと温泉が境界なく溶け合うまち。そのかけがえのなさを、これからも私たちはTOJIHAUSを通じて伝えていきたいと思います。

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なぜ別府?なぜ空き家?なぜ点から面へ?…それを共有すべく、10/3(土)には「BEPPU共創FORUM 2026」を別府市内で開催します。テーマは、「空き家を資産に、地域にお金を。」全国有数の温泉地として知られる大分県・別府市ですが、市内には約12,000軒の空き家があり、空き家率は全国平均を上回る約18%にのぼります。「共創」と銘打ったこのフォーラムでは、空き家を地域の「負債」ではなく「資産」として捉え直し、そこで生まれた価値やお金を、次の空き家再生や地域の新たな挑戦へつなげていく仕組みについて、企業・行政・金融機関・地域事業者など、さまざまな立場から考えます。当日は、空き家を宿泊施設へ再生した「TOJIHAUS」のオープンハウスも実施いたします。

会場は公衆浴場「芝居の湯」を併設している公共施設、別府市コミュニティーセンター。温泉地の「これから」を深く考えながら湯に浸ってみてはいかがでしょうか。

◾️詳細・参加申し込みはこちら
https://enjoyworks.jp/news/33399/

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