空き家が増えている、増え続けている——そう言われるようになって久しいですが、ここ10年近くは急増の時期は過ぎ、高い水準で推移しています。一概に「空き家」といっても、賃貸や売却など、次の動きがあるものばかりではありません。総務省の調査によると、「居住目的のない空き家(分類でいうとその他の住宅)」の増加が顕著だといいます。防災、衛生、景観など、放置された「その他分類の」空き家がまちに与える影響は、もはや個人の所有物の範囲を超えた地域課題になっています。
ただ、自治体も決して手をこまねいてきたわけではありません。管理が著しく悪化した「特定空家等」については、指導や勧告、命令、最終的には代執行による解体まで、一定の権限を持って対応してきました。ただし、これらはあくまで「悪化してから」動く仕組みです。特定空家等に至る手前の段階では、自治体が指導や勧告を行う法的根拠がなく、気づいたときには手遅れというケースも少なくありませんでした。(空き家であっても)不動産という個人の所有物に対して、行政がどこまで介入すべきか、そんな議論もあります。加えて、多くの市区町村では専門人員が不足しており、所有者一人ひとりに寄り添って活用の相談に乗る——という伴走的な支援までは、なかなか手が回らないのが実情です。
そうした課題を受けて、2023(令和5)年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が改正されました。放置しておくと危険・不衛生・景観悪化などで周囲に深刻な悪影響を及ぼすような「特定空家等」になる手前の段階で早期の指導・勧告を可能にしました。ただ、早期に対応できるようになっても、実際に所有者へ寄り添い、管理や活用を支援する担い手は自治体だけでは十分とは言えません。そこで、地域で活動する民間団体の力を生かす仕組みとして創設されたのが「空家等管理活用支援法人」制度です。
◼︎国土交通省による制度紹介
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001710793.pdf
この制度は、空き家の管理や活用に取り組むNPO法人、社団法人、会社などを市区町村が指定し、公的な立場から活動しやすい環境を整えるもの。指定を受けた法人は、所有者への相談対応や情報提供、活用希望者とのマッチング、所有者の探索、普及啓発といった業務を担うことができ、所有者本人の同意があれば、自治体が持つ所有者情報の提供を受けることも可能になります。人員も専門性も限られる自治体にとって、地域に根差した民間の力を「補完的な役割」として組み込める仕組みといえます。
少しずつ広がる支援法人制度
制度が始まってから、指定の動きは少しずつ広がっています。国が掲げる目標は、施行後5年間で120法人とのこと。昨年3月時点では90を超える法人が指定されており、自治体ごとに温度差がありながらも、制度活用に活路を見出しているようです。実際の運用は自治体ごとに個性が出ています。京都市では宅建協会や京町家再生研究会など複数の法人が、相談対応から専門家派遣、出張講座まで幅広く担っています。堺市では2法人を指定し、相談から売却・賃貸・解体まで一貫して伴走するワンストップ支援を打ち出しています。
私たち、エンジョイワークスも「空き家」の地域課題に取り組んできたひとり。8月7日には、月見台住宅も位置する横須賀市から同制度の指定を受けました。このまちには丘陵に囲まれた谷筋に住宅が連なる「谷戸」と呼ばれる地形が多く点在しています。細い路地や階段が入り組み、車が入りにくいこの地形ゆえに、使われないまま残る空き家も少なくありません。私たちは、それらを「困りごと」ではなく「使える資源」として捉え、持ち主からの相談に乗りながら、活用したい人や地域の担い手とつなげていきます。周辺の空き家や未利用地も含めてエリア全体で考え、横須賀という土地の特性を活かしながら、新しい使い道を育てていきたいと考えています。

細い路地が入り組む「谷戸」の地形
◾️横須賀市による報道発表(8/7付)
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/4821/akiyashienhouzin/20260807.html
空き家問題は、放置すれば地域の生活環境を損ない、活用すれば地域の資源になる——その分かれ目に立つのが空家等管理活用支援法人という制度。その仕組みは、行政だけでは届きにくかった一軒一軒の空き家に、地域の民間プレイヤーが伴走する道をひらくものだと言えます。制度の広がりとともに、まちづくりの現場を持つ立場から、こうした動きに関わっていく可能性を感じています。
◼︎昨年実施した、空家等管理活用支援法人に関するオンラインイベントのレポート記事https://note.com/jichitaikyosolab/n/nb25cf327ad12
2026/08/18
2026/08/18