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地域を編集し直す、フルーツのまち。紀の川市・粉河エリア、3年の軌跡とこれから

自治体共創 公開日:2026/06/02

和歌山県(旧・紀伊国)の第一の大河川だから「紀の川」。県北部の山あい、この川が中央を流れる紀の川市。果樹の産地として知られ、今の季節は梅やいちじく、そして柑橘や桃など、季節ごとに異なる「実り」をもたらすまちです。そんな地域にエンジョイワークスがはじめて足を踏み入れたのは4年ほど前のこと。きっかけは、私たちが取り組んでいた「0円リノベーション」の仕組みを知った紀の川市の担当職員からの問い合わせ。市内の空き家をどうにかしたい、という相談からでした。そのやりとりから、私たちから「空き家を活用して事業をするプレイヤーを公募して伴走支援しよう」と提案。地域の人たちが主体的に関わり、事業を立ち上げていくプロセスそのものを支援する、という新しい連携のかたちをひとまずスタートさせました。それが2022年秋。その後、私たちは市内の「粉河エリア」での地域活性化に本格的に取り組み始めることになります。

求められていたのは「観光客を呼ぶこと」ではなく、「地域の人たちが自分たちの暮らしや仕事を編集し直す」ことでした。現地での事業着手は2023年中ごろから。そして2024年6月の地域拠点・宿泊施設(紀の川三笠館)開業からマルシェリニューアルまで、紀の川市との官民連携の中で、エンジョイワークスが見てきたのは、交流人口から小商い人口へと足がかりを移す、地域の人たちの緩やかで着実な変化です。

官民連携の第一歩——三笠館と現地体制の構築
2023年は「プロジェクトゼロ」の段階。私たちは総務省の「地域活性化起業人」「地域おこし協力隊」の制度を使って、自社採用のスタッフを3人、現地に派遣しました。何から着手したか、というと、自分たちの住まいのDIYです。もちろん空き家(市からの紹介物件)。荷物の片付けに追われ、綺麗な床を探して寝るような過酷なスタートでしたが、地元の高校生たちもDIYに参加。このプロセスから地域住民との交流が生まれ、地元のお祭り(粉河祭の「だんじり」)を一緒に担ぐなど、コミュニティに深く溶け込むきっかけとなりました。

これに続いたのが、大正期創業の旧旅館・三笠館をリノベーションするプロジェクト。増築を重ねた4棟の両端の建物を残して、中央部分を地域最大級のウッドデッキテラスへと改修し、カフェ・宿泊施設・プライベートサウナ、複合的な拠点を整備しました。エンジョイワークスは単なる施設の運営者としてではなく、紀の川市全体の地域活性化に関わるプレイヤーとして「根を下ろした」のです。スタッフはいずれも20代のワカモノ。ヨソモノの視点と地元へ向き合う姿勢を持った若いチームが、粉河という地域に「浸透していく」プロセスが始まりました。2024年6月、「紀の川三笠館」として開業するタイミングで、エンジョイワークスは市から「地域再生推進法人」にも指定されました。遊休不動産の利活用や関係人口の創出と拡大、これに関わる人材育成に取り組む立場として、文字通りスタートを切ったのです。
*官民連携の経緯や三笠館のプロジェクト着手の様子はこちらの「共創動画」で紹介

旧施設の面影を残しながらリノベーション。カフェや宿泊・サウナの複合施設として、地域の・旅行者の「憩いの場」に少しずつ育っています

紀の川三笠館ウェブサイト https://mikasakan.com/ja

このチーム構成は、単なる「事業運営」の枠を超えていました。彼らは日々、施設のDIY、カフェ運営、地域住民との対話を通じて、「紀の川での地域活性化とは何か」という問いに、現場で向き合い続けています。地域の子どもたちの憩いの場になるよう「三笠チケット」という仕掛けを生み出したり、「ローカルビジネス」の事業者育成プログラムを実施したり、マルシェを定期開催したり、地元農家さんと連携したり…と、そうした一つ一つの実践が、地域との関係を深めています。

マルシェが定着し、「三笠館」の認知が少しずつ広がる中で、同時に見えてきた課題もありました。交流人口の創出と小商い人口(事業者)の実践の場としての役割は担えているけれど、「何度も足を運びたい」「ここで何かを始めたい」という動機づけがもっとできないか? 同様に、三笠館も開業から2年を迎えるなかで、次のステップが求められていました。「食べる・宿泊する・つながる」という場の機能は言語化できたけれど、もっと、施設全体、さらには地域全体を再編集する必要がありました。

粉河エリア全体を見ると、JR粉河駅から三笠館へとつづくメインストリート、「とんまか通り」商店街の回遊性や空き店舗の問題は依然として課題のままです。三笠館のすぐそば、西国三十三所札所である粉河寺は観光客を呼んでいますが、人の流れは寺参りで終わり、まちなかにはあまり波及していません。一方、地元の人たちの生活動線は寺とは反対方向にあります。つまり、地域内の「賑わいの空間」と「生活の空間」が分断されたままだったのです。

粉河駅から粉河寺まで連なる門前町。寺の手前に位置するのが「紀の川三笠館」

フルーツを軸に、地域の日常を再編集する
そんな課題を改めて洗い直して掲げたのが、「地域最大の資源(フルーツ)と直結したコンセプトによるエリアリノベーション」。“フルーツが染み出す”をキーワードに、昨年11月に、フルーツカフェへとビジュアルもメニューもリニューアル。そして、今年1月には農家さんからフルーツの旬の情報や美味しい食べ方を提供してもらい、それを実演する場を作り、地元のシェフが農家で収穫したフルーツを使って料理を作る体験ツアーを実施しました。

さらに「EATLO KINOKAWA」と題した「フルーツまわり」を網羅した発信媒体も立ち上げています。朝起きてから夜眠るまで、生活のあらゆるシーンでの「フルーツとの付き合い方」の提案まで領域を広げる。例えば…フルーツの皮を使ったアロマ、果樹の木から作るカトラリー、疲れのとれる入浴法——五感すべてを通じて、フルーツが暮らしに「染み込む」瞬間を提案しています。こうした「食べる」だけに留まらない、多感覚的な体験を通じて、紀の川市全体を「フルーツを核とした地域ブランディング」の実験場にしていく狙いがあります。

◼️EATLO KINOKAWA(KokawaRenovation)Instagram https://www.instagram.com/kokawa_renovation/

主役はあくまでも地域。農家さんが作ったフルーツを、加工・提供するサポートも始めています。同時に、学生用のシェアハウスと2拠点居住用の民泊・賃貸の整備なども着手予定。新しい視点と継続的な関わりを地域に広げていくことも考えています。これまでの数年間は下地づくりの期間で、「賑わいがある住みたいまち」への転換がこれからの軸足。地元の人たちとの信頼関係をさらに深めて、地域の課題を丁寧に言語化し、そして官民で力を合わせて新しい可能性を形にしていく——そうしたプロセスの中で、小さく芽生えているその萌芽をしっかりとした形に育てていく。複数の拠点と関わり方が織りなす、より厚みのある「紀の川・粉河」へと、次の一歩はすでに始まっています。

施設運営からマルシェ企画、エリアリノベーションまで。20代の若者が地域に溶け込んで「まちづくり」を真剣に考えています

*日々の「三笠館」の様子はこちらのInstagramから。
*リニューアルしたマルシェ「つどいの実マルシェ」は6/21開催!

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