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【旅するENJOYWORKS⑤】120の宿が始まる第一歩。別府の新しい湯治、TOJIHAUSに泊まってみた

Report 公開日:2026/04/21

もくもくと湧き上がる湯けむり。「いでゆ坂」の石畳をトゥクトゥクで走り抜けると、吹きつける風の中にかすかに感じる硫黄の匂い。子どもの頃、家族旅行で訪れて以来となる「温泉のまち」別府は、記憶よりもずっとコンパクトに感じられました。けれど、そのこじんまりとしたまちの中に、それぞれのエリアの個性がぎゅっと凝縮されているようでもありました。エンジョイワークスが今年、本格スタートさせた「TOJIHAUS」のプロジェクト。その「はじまり」の現場に、湘南から足を伸ばしてみました。その様子をレポートします。(エンジョイワークス コミュニケーションデザイン部・染川祐佳里)

暮らすように泊まる、別府の新しい宿
私がTOJIHAUSについて初めて聞いたのは、昨年の秋のこと。入社したばかりの私は、エンジョイワークスの事業の幅広さに驚き、それぞれの概要を覚えるのに必死でした。そんなときに、別府市で新しいプロジェクトが始まると知ったのです。まちなかに点在する「空き家」を活用し、湯治を目的とした中長期滞在向けの一棟貸し宿をつくる計画です。全国平均(約13%)を上回る約18%、およそ12,000軒の空き家が地域課題となっているという別府。TOJIHAUSが目指すのは、そのうちの1%にあたる120軒を「宿」へと再生すること。点ではなく面で、まち全体を再生していく構想です。その「点から面へ」の現場へ。今回の別府出張の目的は、第一歩となるTOJIHAUS 001と、それに続くTOJIHAUS 002の撮影。改修を終え、この春から宿としてスタートする2軒を訪ねました。

▼TOJIHAUS 001:楽しさをシェアする宿
別府はご存知の通り、2800以上の源泉があり「温泉郷」と呼ばれる「圧倒的な温泉のまち」。そのうち「別府八湯」のひとつ、平安時代からの歴史を持つ柴石温泉の近くに、今回エンジョイワークスが再生した2軒があります。内壁を取り払い、空間をのびやかに使えるよう設計されたTOJIHAUS 001は、吹き抜けから柔らかな光が差し込みます。大きなアイランドキッチンが設けられており、複数人で料理をしても窮屈さがありません。実際にスタッフが集合して7名で料理や食事をしてみましたが(宿泊人数は最大4名)、動線にも余裕があり、みんなでわいわいと楽しむことができました。もともとどのような間取りだったか想像がつかないほど、リノベーションで建物が生き返る。そんなリアルな「再生ストーリー」がありました。

そして肝心の「湯」どころ。「001」は、人気の柴石温泉から徒歩2分の場所にあります。目の前を流れる川のせせらぎを聞きながら、散歩がてら温泉へ向かう。そんな贅沢が日常に溶け込み、つまりは「暮らすように過ごす」ことができる場所なのだと再確認しました。

▼TOJIHAUS 002:朝を楽しむ宿
血の池地獄や龍巻地獄から車で1分の立地。裏手には森が広がり、遠くには別府湾が見渡せる静かな丘の上にあります。庭には果樹があり、自然の中でゆったりと過ごしたい人にぴったり。「001」と少し異なり、平屋ならではのワンルームの室内は、大きな窓のおかげで外の自然と地続きの感覚を楽しめます。もともとは温泉が引かれていたというお風呂は広々としていて、温泉に行けない日でも身体を整えることができそうです。

この宿でとくに印象に残ったのは、朝の時間でした。明け方、鳥の鳴き声で目を覚ますと、橙色の柔らかな光が部屋の中に差し込んでいます。眠い目をこすりながら外へ出ると、真正面から朝日が昇っていました。ひんやりとした空気の中で、刻々と変わっていく空の色を眺める時間は、ただそれだけで満ち足りた気持ちに。ここでの滞在は「人間らしい感覚」を取り戻す、リトリートにもなりそう(もっと長くここで過ごしたい!と思ってしまいました)。001が家族や友人と賑やかに過ごす場所だとすれば、002はひとりや夫婦で穏やかに時の流れを感じるための場所。宿のコンセプトや立地によって、同じ別府でもまったく違う時間が流れているように感じられました。今後、003、004…と計画中とのことなので、それぞれの「顔」の違いも発信できたらなと想像がふくらみました。

空間の「余白」が心地よい、001と002の様子

TOJIHAUSWebサイトOPEN! https://tojihaus.jp/

第一印象は「ちょっと恐い!」。トゥクトゥクでめぐる別府のまち
TOJIHAUSでは、新しい試みとしてトゥクトゥクを導入しています。別府はバスも走っていますが、本数が多いとは言えず、移動手段に少し悩む場面もあります。そこで導入を準備しているのが、emobiのトゥクトゥクです。

まだ試行段階ではありますが、私がモニターに。後部座席に乗せてもらい、実際にまちを走ってみた第一印象は、「ちょっと恐いかも」。車よりも道路の凹凸を感じやすいのと、吹きつける風の冷たさ。髪はボサボサになるし、自転車以上、車未満。けれど、気付けばその感覚は少しずつ変わっていきました。窓のない車体は、風も音も匂いもダイレクト。そのむき出しの体験こそが、まちのリアルを知るきっかけとなるのかも。車では通り過ぎてしまう景色に出会える。徒歩では行けない距離まで足を延ばせる。トゥクトゥクだからこそ出会える風景がある。そんなポジティブマインドに変わっていました。

もちろん、バッテリーの持ちや季節による快適さなど、運用面での課題はあります。それでも、この小さな乗り物は、120の点をつなぐ「血管」のような存在になるのかもしれません。まちの細い路地や坂道を巡りながら、人と場所とをゆるやかに結ぶ。この小さな乗り物でまちを回遊する体験が、TOJIHAUSが提案する「新しい湯治」を形作っていければいいなと改めて感じました。

そして、生活の延長線で忘れてはいけないのが「食」。近隣のスーパーには、新鮮な魚介や大分県産の野菜・肉が豊富に並んでいてシンプルにおいしい(そして安い!)。地元の食材で料理をすると、それだけで少し特別な時間に。それも「暮らすように旅をする」大きな構成要素なのですね。

湯けむりのまちで、自分好みの「一湯」を見つける
今回の短い滞在で訪ねられたのはごく一部でしたが、別府のまちはエリアごとに表情が違います。山あいの柴石温泉。湯けむりが立ちのぼる鉄輪温泉。海沿いの砂湯に、賑わいのある駅前のアーケード街。そしてロードサイド店が並ぶ国道沿い。フェリーが寄港する大きな海と、温泉を生み出す立派な火山。源泉の数が2,800を超えると聞いてこれまた驚いたのですが、それらが限られた範囲に密集しているのが、別府の面白さです。想像よりも「コンパクトなまち」に、点在する宿がつながることで、別府の楽しみ方はもっと広がっていくのかもしれません。

想像以上に「湯けむり」に纏われたまち。滞在体験をよりカスタマイズして楽しめそうです

いわゆる一般的な旅館やホテルに泊まり、その宿の温泉を楽しむのももちろん素敵な体験。でも、あえて一棟貸しに泊まり、さまざまな温泉を訪ね歩く。その中で、お気に入りの「一湯」「一棟」を見つける。そんな別府の楽しみ方が、TOJIHAUSにはあります。その一歩は、宿を増やすだけでなく、まちと人との関係をゆっくりと編み直していく始まりのようにも感じられました。

TOJIHAUSの様子や別府での私たちの動きについてはInstagramでも発信中!

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