日本有数の豪雪地帯、福井県池田町。人口約2,200人、町域の92%を山林が占める町です。30年で人口が半減、高齢化率も約46%で県内一。全国平均(29%)を大きく上回っていて、この町もほかの自治体同様、「空き家」という課題を抱えています。特徴的なのは、その物件たち。雪が深い場所とあって、雪の重みに耐えられるように太い柱や梁があり、とにかく構造が頑丈。町のホームページに掲載されている「空き家」の中には、築100年超という古民家がいくつかあります。物件としてのポテンシャルはすごくありそう…だけど、利活用に手をあげる人がたくさん出てくる訳ではない、というのも悩みでした。そこで、2021年の夏に実施したのが、エンジョイワークスの「事業者育成型公募(空き家再生プロデューサー育成プログラム)」です。
町と地元の金融機関である福井銀行とタッグを組んだこの事業。町所有の2件の古民家を対象に、空き家・遊休不動産を利活用して持続可能な運営ができる事業者を募集するもの。「地域活性化に資する事業」という部分がポイントで、地域住民の参加や関係人口と定住人口の増加を目指すプログラムです。私たちはその運営と研修講座を担当しました。
場所を提供すれば…事業が進むわけではありません。参加者には、エンジョイワークスが開発した無料のオンライン起業支援ツール「ハロリノノート」を利用してもらって、空き家を使った起業のステップを学んでもらいました。現地の研修では、コンセプト案組み立てのアドバイスも。「起業に向けて何から手をつけていいのかわからない」「起業を考えているけれど本当にこれでいいのか、もう一つ自信を持てない」――そんな悩みやプロセスに寄り添い、企画の実現性ブラッシュアップに併走するのが「事業者育成型公募」の特徴です。
*ハロリノノートは2023年2月に無償提供終了
このプログラムには8つの事業者から応募があり、選考会を経て、福井県内の企業(トゥモローズリハビリテーショングループ/坂井市)を選定しました。同社が提案したのは「一棟貸し切りの古民家バケーションレンタル」。リノベーション工事を経て、2023年春に「ふらふ」がオープンしました。広い空間を活かした内装とコンセプトで、今では「わざわざ行きたい宿」に。町にとっても、所有していた空き家の使い道が見つかった!というだけではありません。「里山体験」という観光資源への関係人口を新たに創出して、さらには(施設運営で)働く場も増やしています。宿の料理にジビエのBBQや地元の方が手掛けた総菜を出すプランもあるとか。特産や食材にも触れて、町をもっと楽しんでもらう。開業から1年ちょっと、そんな好循環が生まれています。
*「ふらふ」運営事業者の記事はこちら
生まれ故郷に新たな観光資源を作る!―「事業者育成型公募」でバケーションステイ施設を開業@福井県池田町
https://enjoyworks.jp/times/082/
「空き家900万戸」の時代、これを活用して「何か」を始めたい――そう考える人は、増えています。ただ、事業の持続性や資金などのハードルは、思ったよりも高いのが現実。理由があって空き家になっている訳ですから、店を開業しても、人を呼ぶコンテンツがないと先細りに。プランニング・ブランディングの視点も欠かせないのです。
池田町のケースは、ニーズやコンセプトが合致した好例。地元を思うプレイヤーに事業のノウハウを提供して「育成する」。次は、そのプレイヤーが、さらに地元で輪を作っていってくれれば…。私たちの「事業者育成型公募」は、エンジンをかけるきっかけづくり。山間のこの小さな町の事例のように、一歩を踏み出す後押しを全国で展開していきます。
自治体と企業がリードする、“参加する”地域活性ソリューション(実践例紹介ページ)
https://enjoyworks.jp/produce/solution/
事業者育成型公募とは?
https://enjoyworks.jp/times/041/
福井県池田町「町有空き家活用プロジェクト」
https://town.ikeda.fukui.jp/kurashi/sumai/1471/p002689.html