ENJOYWORKS TIMES

官民連携で灯す、まちの挑戦の火——「いこみなチャレンジ」2年目レポート

Report 公開日:2026/09/08

「まちに、事業を担うプレイヤーがいない」。人口減少や商店街の空洞化に悩む自治体の多くが、口を揃えてこの課題を口にします。ただ、その担い手を見つけ、育てていくことは、行政だけの力ではなかなか難しいものです。空き物件があってもそれは「民間」の領域。情報はあっても、そこに挑戦したいという人と出会い、伴走する仕組みがなければ、まちは動き出しません。

奈良県生駒市で、その「仕組みづくり」に奔走しているのが私たちエンジョイワークスです。近鉄生駒駅南口エリア「いこみな」を舞台にした事業者育成プログラム「いこみなチャレンジ」は、生駒市とエンジョイワークスの官民連携によって、今年で2年目を迎えています。8月22日、一次選考を通過したプレイヤーたちが事業プランを発表する「公開プレゼン+メンタリングイベント」が開催されました。当日の様子から、2年目に入ったプログラムの「いま」をレポートします。
◾️いこみなチャレンジ2026(生駒駅南口エリア事業伴走プログラム)ウェブサイト 
https://ikomina-challenge.jp/

2年目に積み重なる、まちの熱量
いこみなチャレンジは3カ年計画で、今年度はその2年目。5月から新たな参加者の募集をスタートしました。6月のキックオフイベントに集まったのは70名超(オンライン25名、現地36名)。そこから20組がエントリー、さらには、彼らをサポート・応援したいという「サポーター」には16名が手をあげてくれました。7月にはメンター(地元事業者など起業の先輩、専門家たち)による一次選考会が行われ、15組が公開プレゼンへと駒を進めました。

エントリーから一次選考を通過した割合を見ると、1年目より高い水準で選考を通過するプレイヤーが増えています。まちや物件との向き合い方、事業の具体性が、1年を経て少しずつ磨かれてきていることの表れなのかもしれません。

公開プレゼン+メンタリング、10組を超える挑戦者たち
8月22日、生駒市内で行われたイベントには、一次選考を通過したプレイヤーが次々と登壇。5分間のプレゼンテーションに続き、メンター陣からの質疑やアドバイスが重ねられる、公開の場での「壁打ち」の時間となりました。

顔ぶれは多彩です。大阪でジュエリーやバッグのセレクトショップを営んできた方は、空き物件の中に「小さな街」をつくるという発想を持ち込みました。大阪農林会館や芝川ビルのように、小さな部屋の集まりがいつのまにか街の名物になっていく——そんな未来を、候補物件である旧中国料理店に重ねています。建築家の参加者は、ビルの奥に眠る3坪の極小テナントを「まちの最初の一歩」と位置づけ、小ささを弱点ではなく可能性として捉え直していたのが印象的でした。

「朝の5分を豊かにする」というコンセプトによる週末限定の自家焙煎コーヒースタンド構想は、大きな投資ではなく、自分の暮らす場所で小さく試すという、このプログラムらしい一歩のアイデア。また、若年層の3割近くが朝食を欠食しているというデータや、生駒市に朝早くから食べられる店が少ないという地域の空白に着目し、土鍋炊きご飯のおにぎり屋といった提案もあり、「地産地消を通じて一次産業を支えたい」という思いも語っていました。

生駒のまちが抱える課題に向き合い、それぞれの視点から具体的な解決策となる事業アイデアが提案されました

まちの外から加わる挑戦も生まれています。ゲストハウスの立ち上げをプレゼンした参加者は、宿泊業と日本語教師の経験を活かし、訪日外国人旅行者に「生駒の日常」を届ける滞在プログラムを描いています。本人もこれを機にこのまちで暮らし始めるそうで、まずは一人の住民として街を知っていきたい、という言葉が印象に残りました。ほかにもゲストハウスでの物件活用アイデアがあり、宿泊という切り口から関係人口を増やす提案が重なったことも、今年ならではの特徴だと感じます。

ウェルネスの視点を持ち込む挑戦もありました。健康や姿勢づくりの学びの場の提案や「チャイと絵本の喫茶室」、奈良の暮らしを体験する小さなウェルネスリトリートを描く構想など、事業計画の数字だけでなく、その場に流れる時間の質そのものを事業の核に据える視点は、公開プレゼンの会場にやわらかな余韻を残していました。小さな一歩から始める・地域の空白に着目・外から来た人が住民として関わる・数字だけでは測れない「時間の質」を事業の核に据える——10組を超えるプレゼンを聞いていると、「いこみな」というエリアだからこその、発想の幅広さを、あらためて感じます。

専門家の伴走も、厚みを増しています
プレゼンとメンタリングの合間には、大和信用金庫による「事業計画のつくり方」講座も行われました。資金計画や収支計画をどう組み立てるか、地域金融機関ならではの視点からの解説は、これから事業計画をブラッシュアップしていくプレイヤーたちにとって実践的な学びになったのではないでしょうか。あわせて、ガバメントクラウドファンディング(GCF)の仕組みについても説明の時間が設けられました。ふるさと納税を活用し、市民の共感を直接的な支援に変えるこの仕組みは、1年目に「IKOMA ART BASE」と「SPICE CURRY寶山」の実装を後押しした実績があります。今年度も、資金調達の選択肢のひとつとして紹介されました。

「いこみなチャレンジ」から生まれた事業のInstagram
SPICECURRY 寳山:https://www.instagram.com/spice_curry_hozan/

これからのスケジュールと、まちに根付いていく先に
プレゼンをして「終わり」ではありません。この秋からは、個別のメンタリング、実証実験と最終選考、そして12月12日には「地域へのお披露目」となる公開プレゼンを予定しています。一つひとつの機会は、通過するための審査というより、事業を磨きながら地域との関係を少しずつ深めていくための時間として設計しています。

その先を裏付けているのが、1年目の歩み。昨年度は、成果目標として掲げていた新規事業化件数1件に対し、実際には3件が見込まれています。そして、事業化を目指すプレイヤーは計12組にまで広がりました。プレゼンの場だけで完結せず、参加者同士の連携やメンター・サポーターの自発的な関わりが、プログラムが終わった後も動き続けています。例えば、メンターが設計に関わり、さらには別のプレイヤーが施工を手掛ける——とか、サポーターが物件探しに協力したり、エリア周辺の人たちがすでに輪に加わっていたりと。じわじわとさまざまな掛け算が生まれています。今年、新しい顔ぶれがこの土台に加わることで、まちに一歩ずつ、確かな積み重ねが芽生えているのです。

写真は昨年の「いこみなチャレンジ」の様子。このプレゼンから2つの事業が誕生しました

まちにプレイヤーを生み出し、それを応援する「地域の力」も創出していく。行政だけでは難しいこの仕組みづくりに、私たちはこれからも伴走していきます。この日灯った10組を超える挑戦の火は、これから開業準備や物件交渉を経て、生駒駅南口の風景に少しずつ溶け込んでいくはずです。空き物件が「課題」から「可能性」へ、そして日常の風景へ——その過程にぜひ注目してください。

全ての記事 Column (55) Feature Project (88) Interview (31) New Topics (91) Report (36) 数字で読むエンジョイワークス (12) 自治体共創 (39)

ENJOYWORKS TIMES

Follow us