「トゥクトゥク」という乗り物をご存知でしょうか? 東南アジアで広く親しまれている三輪の乗り物。タイやベトナムなどで観光客に人気です。そのトゥクトゥク、日本でも近年、観光地での新しいモビリティとして注目を集めています。少しスタイリッシュに形を変え、さらに電動化されたトゥクトゥクは、小型で軽快、そして環境に優しい。自動車よりも小回りが利き、自転車よりも快適に移動できる——そんな魅力があります。運転には普通自動車免許が必要ですが、ちょうど車と原動機付自転車(原付)との間のような操作感。窓のない開放的な空間で、その土地の風を感じながら周囲の景色を心地よく体験できます。
大分県別府市にこの3月、新しく誕生した一棟貸し宿泊施設「TOJIHAUS」。ここで今、ユニークな取り組みが始まります——それが、電動トゥクトゥクのレンタルサービス。TOJIHAUSでの滞在中、宿泊客は気軽にトゥクトゥクを利用して、別府の街を自分たちのペースで巡ることができる。観光地を効率的に周るだけではなく、街に馴染み、街を「体感する」乗り物として。温泉の湯けむりが立ち上る街並みを見つめながら、地元の人々との距離を感じながら、思わぬ小路を発見しながら——そうした偶発的な出会いと発見が、トゥクトゥクの移動スタイルから生まれるのです。

3人乗り、「ちょうどいいサイズ」のトゥクトゥク。乗っているときの視界はこんな感じ(写真右)
「街との対話」を深める、自走式という自由
なぜトゥクトゥクなのか。注目される理由は、単に「新しい」「珍しい」というだけではありません。観光地での移動といえばレンタカーやタクシー、公共交通機関が一般的です。最近では電動自転車のシェアサービスも広がっていますが、別府のような坂の多い街では、湯上がりに汗をかいてしまったり、目的地付近にポートがなかったりと、少しだけ不便を感じる場面も。宿に備え付けている自走式のトゥクトゥクは、そんなジレンマを解消してくれるはずです。
宿の玄関から自分たちの手でハンドルを握り、大切な人と肩を並べて風を切る。一列で走る自転車とは違い、移動中も会話を途切れさせることなく、同じ景色を見て、同じ匂いを感じる。それは「分断された移動」ではなく、旅の物語がずっと地続きになる体験です。開放的な乗り物だからこそ、走りながら視線が自然と街に向かい、耳に届く音や風が、より五感に響く。それはまさに「街との対話」——観光ではなく「街との関係性を結ぶ体験」かもしれません。

まちを見渡す高台のロケーション、そしてさまざまな「温浴」、地獄蒸しなど「温泉のまち」ならではのカルチャー。これを自由に辿る足としての期待大!
実際に、私たちエンジョイワークスの拠点、鎌倉ではトゥクトゥクがまちを駆ける姿をよく目にします。史跡めぐりや観光の「足」として、あるいは旅を楽しむコンテンツそのものとして。彼らにとって移動時間は、目的地到着と同じくらい大事な要素になっています。旅先や二地域先で、自由な移動手段が手元にある。それだけで滞在体験の解像度は驚くほど高まります。
移動そのものが、旅の主役になる
温泉という自然の恵みを享受する時間の素晴らしさは言うまでもありません。その上で、宿を出て街を探索し、気になったカフェに立ち寄り、地元で愛される食堂で食事をして、また宿に戻って温泉に浸かる。こうした一連の流れすべてが、自らの手で操る「体験」として統合され、より深い思い出として刻まれていきます。
別府を訪れる理由は人それぞれ。しかし、その滞在が「何をしたか」から「どう感じたか」にシフトする体験が、TOJIHAUSで始まっています。晴れた日には海を目指し、曇った日には独特の街の佇まいを眺め、夜には灯りが増す商店街で人間模様を観察する。街に馴染み、街に溶け込むこの移動体験が、あなたと別府の関係を、より豊かなものに変えるかもしれません。
このトゥクトゥクを皮切りに、TOJIHAUSでは、滞在の質を高めるサービスを一つずつ丁寧に増やしていくべく知恵をこらしています。すべては、ゲストの時間をより充実したものへと変えるためのツール。そんな視点を大切にしていきたいと考えています。
*使用開始は5月中旬以降を予定、事前に免許の確認や利用レクチャーを行います
■TOJIHAUSウェブサイト(画面上をトゥクトゥクが走っています!) https://tojihaus.jp/
■電動トゥクトゥク Emobi
(TOJIHAUSはこちらの車体を使用しています) https://www.emobi.co.jp/

この春開業した「TOJIHAUS」の室内。「滞在体験」のエッセンスを室内外にちりばめているところ