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社会課題に挑む「まごころアパート」! シニアの住環境整備と飽和する賃貸共同住宅の活用

Column 公開日:2025/02/25

突然ですが、日本の国内にどれくらい「アパート」があるか知っていますか?「アパート」の定義は日本独自のもので、主に1~2階建ての低層集合住宅を指すのですが、階数別借家共同住宅数という統計データ*によると、これらに該当するのは約530万戸(マンション含む)。賃貸住宅市場においてアパートの供給は需要を上回っていて、飽和状態と言われています。地域の差はあるものの、全国での平均空室率は約18%。空いた土地にアパートを新築して投資物件にする(賃貸経営)―といった運用方法がありますが、いずれにしても人口減少が進む中で「空室問題」は避けて通ることができません。
*2023年実施、総務省統計局「住宅・土地統計調査」より

ちょうど今年、2025年は団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になり、不動産市場は大きな変革期を迎えるタイミングと言われています。いわゆる「不動産の2025年問題」で、都市部では高齢者向け住宅の需要が増加する一方、地方では人口減少に伴う空き家の増加が深刻な課題に。需要と供給のバランスが崩れており、これとアパート市場の現状を掛け合わせてみるとどうでしょうか? 持ち家から賃貸への住み替えを希望する高齢者が増える可能性があるのですが、バリアフリー対応やさまざまなサービス付きの「シニア向け賃貸住宅」のニーズが高まると予想されています。さらに高齢単身者が増えるため、保証人確保が難しくなり、家賃保証サービスや自治体支援の活用も必要になってくるでしょう。

前置きが長くなりましたが、これらの課題解決になる…既存の賃貸共同住宅(アパート)の活用とシニアの住環境向上を掛け合わせたプロジェクトが、横浜市内でスタートしています。その名も「まごころアパート」。この事業を立ち上げたMIKAWAYA21株式会社は、高齢者の「ちょっと困った」を解決するためのサービスを提供している企業。シニア向け生活サポート事業「まごころサポート」を全国各地の企業と提携して展開しています。同社が始めた「まごころアパート」は、地域に点在する賃貸アパートを「小さなシニア支援拠点」として、高齢者が住み慣れた環境で安心して暮らせる住居にリノベーションする取り組みです。国土交通省の「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」にも採択されていて、IoT技術を活用した見守りシステムと、生活支援スタッフの常駐も特徴。バリアフリーなどの改修はもちろんですが、多世代交流施設やコミュニティスペースを併設し、地域住民とも交流できる仕掛けも作っています。さらに、共有キッチンでは、株式会社ジーバーによる「ジーバーFOOD」という地域の料理上⼿なシニアが活躍する事業も組み入れる予定で、「孤立を防ぎ、豊かな生活を支援する」。シニア世代の多様なニーズに応え、安心と活力ある生活を提供する新しい住まいの形で、ここを拠点に地域の包括的な「みまもりあいネットワーク」を構築していく狙いもあるのです。

まごころアパートウェブサイト
https://magocoro.me/apart/index.html

高齢化に伴う諸問題×住み替えにアパート活用で複数の課題解決に挑戦(現地説明会資料より)

第1号は横浜市の郊外にある新興住宅地近くの「まごころアパート松葉台」。新築と既存アパートを改修した2棟で、その間には縁側空間のような「ミチニワ」を設けています。「小さなシニア支援拠点」という表現のとおり、近所の方が散歩に来る、遊びに来る、世話をしに来る、(ジーバーFOODに)働きに来る―地域のまざりあいのある「コミュニティアパート」を描いています。すでに新築棟は完成していて、もう1棟は改修工事中。私たちエンジョイワークスは、事業の仲間としてこの事例を発信しながら、横展開のサポートをしています。

「まごころアパート」を中心に地域の方々が行き来するイメージ

「空き家」の課題は、物件への入居があれば解決するわけではありません。人口動態だけでなく、住まい方・暮らし方が変化するなかで、時代のニーズに応えつつ持続可能な活用の「手立て」を考えることが求められています。「まごころアパート」には、そんなヒントがたくさん詰まっています。

物件配置のパースと空間イメージ

【イベントレポート記事】
■「まごころアパート」連携プロジェクト・キックオフイベント
(昨年7月開催、MIKAWAYA21とエンジョイワークス、株式会社ジーバーの三社による共催)
https://magocoro.me/corp/topics/20240805-2614/
【外部メディアによるイベント取材記事】
■新たに創設予定「居住サポート住宅」第一弾が今秋完成、高齢化する住宅街の新たなチャンスとは?
https://www.kenbiya.com/ar/ns/policy/houkaisei/8124.html

昨年7月のキックオフイベントには、不動産やまちづくりなどに関わるさまざまな事業者が参加

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エンジョイワークスが運営する「#新しい不動産業研究所」では、「まごころアパート松葉台」の視察イベントを実施します。事業主体のMIKAWAYA21の平川健司さん、設計を手掛けるオンデザインパートナーズの西田司さん、当研究所の矢部智仁が現地を案内します。
地域に安心とワクワクをとどける。人生100年時代の新しい住まいを拝見! まごころアパート松葉台 見学ツアー
日 時:2025年3月17日(月)13:00~15:30
参加費:研究所会員→無料、非会員→¥1,100-/人
参加:現地集合、現地解散
住所:神奈川県横浜市神奈川区菅田町2874−29
アクセス:JRほか新横浜駅からタクシー またはバスでご来場ください
※周辺は住宅街のため、タクシーをご利用の場合、セブン-イレブン横浜八反橋店までタクシーで来ていただき、そこから徒歩でお越しください。セブン-イレブンから現地までは徒歩5分程度です。
イベント概要はこちらhttps://atarashi-fudousan.jp/news/60

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