今年4月に公表された、総務省による「住宅・土地統計調査」の速報。全国の空き家戸数が過去最多の900万戸超という統計が明らかになりました。5年前の調査から50万戸以上増加しています。自治体によって「空き家率」は異なりますが、国内の平均は13.8%。7.2戸に1戸が空き家という計算です。ただ、外から見て「空き家」と分かる物件ばかりではなく、増加の弊害を「まち」として意識する機会はないかもしれません。空き家を取り壊して更地にする、駐車場などに転用するケースも多いのですが、建物がなくなることは「まちなみ」や町の「一体感」にも影響します。これに加え、取り壊しをしてなくとも(人が住んでおらず)管理されていない建物は傷みが早く、倒壊なども危険性もはらんでいます。「家」という個人の所有物が社会問題となるのは、そんな理由から。そこで「空き家活用」という視点が求められているのです。
「空き家問題」に対して、私たちエンジョイワークスが2023年に福井県とタッグを組んで実施した事業が、「空き家活用アイデアコンテスト」。まずは、(空き家の存在と)利活用について多くの人に知ってもらう―。その一歩となるイベントです。目的は、「地域資源としての空き家を利活用し賑わい創出の拠点として生まれ変わるアイデア、空き家の価値や魅力を最大限に活かすアイデアを発掘する」こと。対象の場所は、県南西部の小浜市。市内には国宝や国指定の重要文化財が多数あり、海のある奈良と呼ばれる城下町で、「小浜西組重要伝統的建造物群保存地区」内にある4つの空き家の活用アイデアを公募しました。
地域特性を再発見する機会に
第一次審査を経て、公開プレゼンテーションに選ばれた6件はどれもバラエティに富んだものばかり。例えば、イタリアの分散型宿「アルベルゴ・ディフーゾ」を参考にした、分散型シェアハウス「ポスト・レット・ディフィーゾ」や、空き家を町家の風情を活かしたレストランや写真スタジオにリノベーションしコンテンツ化した「小浜婚」(まちなか結婚式)。「西組まちなかプレイパーク」と題して、海や森、公園と動線をつないで、空き家を子どものプレイスペースや秘密基地に転用する案、工業や農業・商業の専門課程のある地元の高校からは、学校での学びを反映させたカフェ開設など、地域特性や土地の持つポテンシャルを深掘りしたアイデアが集まりました。
コンテストのゴールは、事業化の可能性があるものを発掘し、県内外に広く情報発信すること。どのアイデアも、参加者が地域資源をブラッシュアップして、「地域活性に何ができるか?」という視点で知恵を凝らしたものばかり。「街を深掘り」する機会になったようです。まさに、「入口の入口」に近いもので、「まずは、空き家の存在を知って、空き家でできることを妄想してみよう!」という立ち位置。これが実現したらおもしろそう…そんなワクワクがありました。
今回はここまで(アイデア出しまで)、だったのですが、私たちは、公募した事業案を実現性あるものに吸い上げて開業運営まで事業化するプログラム…「事業者育成型公募」も、いくつかの自治体で展開しています。「空き家・空き物件を使って地元でチャレンジしたい」という、まちづくりのプレイヤーを増やしていくことで、持続可能な事業にしていく取り組み。そんな挑戦の“仕掛け”を作るのが私たちの役割。まちの「ジブンゴト」を広げて、人・モノを循環させるために、さまざまな手法で併走していきます。
福井県空き家活用アイデアコンテスト特設サイト
https://fukui.hello-renovation.jp/
福井県による同事業紹介(県ホームページ)
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kenchikujyuutakuka/akiyacontests.html
事業者育成型公募の記事についてはこちら
https://enjoyworks.jp/times/041/