不動産に関わる社会問題のひとつ「空き家」。住宅だけでなく、まちなかの「空き物件」の増加は、昨今の全国的な課題です。商店街では「シャッター通り」化が進み、いわゆるテナント貸しもひと昔より難しくなっているようです。時代や場所、担い手、複合的な理由があると思いますが、お店の灯が消えると、人の流れも変わります。
そんな中、進学や就職で一旦まちを出て故郷に戻ってきた人。自然や環境に魅かれて移住してきた人。我が町の現状を憂いて腰を上げた人など、「まちの賑わいを取り戻したい」という思いを持った人がどの町にもいます。しかし彼らにとっても、物件と資金があればいい?その場で根付かせるために必要なことは?この町で続けていける?需要はある? あれこれ考えていくと、「ハードル」はどんどん高くなっていきます。そのような地域の複合的な課題に取り組みながら、開業・事業継続をしていくためのノウハウを学ぶ「公募型・物件活用事業支援プログラム」が今、静岡県三島市で行われています。
事業は昨年夏に私たちエンジョイワークスと地元の建設会社、加和太建設の共催でスタート。新たに事業や商いにチャレンジしたいと考えている人たちが、空き物件を活用してそれぞれの思いや夢を実現することができるプログラムです。その名も「みしますきー(三島まちなかチャレンジプログラム)」。事業アイデアの公募で集まった16件から選考を行い、8件が事業化に向けて走り出しています。提供する「場」は、築100年の古民家や名店が集う飲み屋街の一角、駅徒歩3分の複合ビルのワンフロア…など。エンジョイワークスは事務局として、参加者には事業に関するメンタリングやコンセプトの講座、市内のイベントポップアップによるモニタリングを行ってきました。スタートから約半年、2月15日には参加者によるプレゼンテーションも開かれました。
新たに展開される事業は、物件利用を伴う創業を前提としているため、まちなかの空き物件を効果的に活かすことにつながります。参加者は、事業に適した物件と出合いながら、独立開業のノウハウを学び、場づくりの経験を高めるなど、課題を解決しながら操業に向けた準備を整えてきました。「不動産」に関わることだけでなく、専門領域のメンターには、地元金融機関、商工会議所のほか、市内の起業経験者も招き、「チーム」として事業立ち上げに伴走してきました。これには、創業に関わる人を地域の中に増やしていく狙いもあります。
事業を共催した加和太建設とは、2023年に資本業務提携を結んでいます。地方の各地で安定的な事業基盤を確立し、その土地の不動産物件の利活用や売買に関する様々なニーズを把握している企業(今回の場合は加和太建設)に、エンジョイワークスが持っているノウハウ(地域の空き家・遊休不動産の利活用の企画立案や事業計画策定、関係人口の巻き込み、資金調達、施設運営)をかけ合わせることで、新たな活性化の「種」を作り出すことができると考えています。
私たちができるのは、「まちの元気」を追求する地方企業の想いや理念を具現化するためのお手伝い。三島でのプロジェクトは、地域内の連携によって一緒にボトムアップし、短期間で成果に結びつけるロールモデルです。今回、約半年の事業併走を経て、創業という種から芽が出て、根が付き始めたところ。このスキームが全国に広がるよう、エンジョイワークスも走り続けます。
みしますきー 三島まちなかチャレンジプログラム
https://mishimaskii.com/