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「全国100棟」の思い届け! BBTサミット現地レポート

ColumnReport 公開日:2024.09.10

観光で経済を回す――。日本政府が「観光立国宣言」からビジット・ジャパン・キャンペーンをスタートしたのが2003年のこと。そこから約20年、コロナ禍もありましたが、2024年の訪日外国人旅行者数は3500万人、旅行消費額は8兆円と過去最高になる見通しだといます(7月19日、第24回観光立国推進閣僚会議より)。つまり、観光事業は経済波及効果が大きく、地域の活性化、雇用機会の増大などの効果も期待されているのです。

その中で旅先の志向も変化していて、「ナンバーワン」よりも「オンリーワン」に注目する傾向も。著名な観光地もいいけれど、場所や人、宿泊、グルメ、お土産、景色…それらを掛け合わせた「旅体験」の価値をもっと大切にしているということ。そこで私たちが提供している宿が「The Bath & Bed(バスアンドベッド)」。未利用の古い蔵をリノベーションした「泊まれる蔵」です。大きなお風呂と大きなベッドの特別な空間の宿。2018年に神奈川県・葉山町で第1号「The Bath & Bed Hayama(バスアンドベッドハヤマ)」。が稼働してから5年、現在は全5棟の「バスアンドベッド」が、多くの旅行客にオンリーワンを提供しています。これを全国に、もっと広げたい――。そこで開いたイベントが「BBTサミット」。9月4日に開かれた催しの様子をレポートします。(取材:ENJOYWORKS TIMES 佐藤朋子)

会場は東京駅からすぐのポットラックヤエス。「バスアンドベッド」に興味のある方や投資家、蔵の所有者、設計や建築の事業者、自治体の方などなど、オンライン&オフラインで、100名近く参加いただきました。プログラムではまず、エンジョイワークスがなぜ「泊まれる蔵」を始めたのか…を解説。続いて、2022年からブランディングで協業している電通の森口哲平さんも登壇し、「宿泊事業ブランド」としての価値や「まちと繋がる」というコンセプトの意義などを説明いただきました。

BBTに関心がある蔵オーナーや設計事務所の方などさまざまな業種の方に来場いただきました(写真はエンジョイワークス代表、福田の登壇の様子)

葉山で始まったバスアンドベッドが、さまざまな人の手とアイデアを借りて「BBT(The Bath & Bed Team/バスアンドベッドチーム)」になり、全国に広がる――。その一例として、金沢大学との産学連携事業も紹介。今年6月から学生の授業の一環として、金沢市内に「泊まれる蔵」を作る観光プロジェクト演習に取り組んでいます。タイトルは「まちとつながる観光ビジネス」。エンジョイワークス代表の福田や電通・森口さんも登壇して、次世代の観光ビジネスとまちづくりについて研究する内容です。まさに実学というところですが、学生たちはこの講義前に、自主的に地元の繁華街などで声掛けをしたり、Googleマップを駆使したりして市内にある「蔵」をピックアップ。実際に現地で、福田とまちを歩いて蔵を巡るフィールドワークも実施しました。担当する同大の堤敦朗教授(オンライン参加)は「(この授業を機に)地域が持っている価値を『再価値化』していくか、ないものを考えて新しいものを作るのではなく、“あるもの”をどう使うかという方法論がポイントだと学生が気付き始めた」と、学びの芽が生まれている様子を話してくれました。

金沢大学での講義の様子。真夏日近い気温の中、蔵を巡ってまち歩きしました

さらに、「能登の震災で自分の家の蔵を失った学生が、その思い出のある蔵を再生することに関心があって参加している」「市外・県外に出たいと考えていた金沢生まれの学生が、蔵を巡るまち歩きの中で自分の街の良さを再認識して『新たな価値を創出したい』と地元へのマインドセットにも影響している」といった、学生の様子も伝えてくれました。実際に蔵を選定し、パートナーを見つける、蔵をBBTにしていく過程でリアルな実装プロセスを体験する、まちとつながるための体験を創造する…それらが丸ごと授業。学生たちは、立派な「BBT」メンバー。教授の報告を通して、その成果物となる「The Bath & Bed Kanazawa」に期待が膨らみました。

運営を始めた人、これから挑戦する人の声

理念やビジョン、期待感は分かった! でも実際の運営は…?というギモンもあるでしょう。そこで、5月に愛媛県の道後で開業したばかりの「The Bath & Bed Dogo」を運営する株式会社Bluetoothの橘洋二さんをオンラインでつなぎました。オープンから少し経ち、夏休み期もあり、稼働は少しずつ伸びているそうで、「(他のお客さんを気にしなくていい)一棟貸しのニーズが高いことに驚いた」とのこと。実はこの蔵、再生できそうな古民家を探していて偶然見つけたもの。バスアンドベッドの仕組みを使って挑戦してみよう!と相談頂いたことがきっかけでした。宿は奥道後の源泉を引いていて、かけ流しのお風呂があるのも特徴。道後温泉の繁華街に近いこともあって、「将来、しっかり利益を生む物件に」と手応えを感じているそう。さらに、兄弟が経営する洋菓子店のスイーツを絡めたおもてなしプランなどの構想も話してくれました。

*The Bath & Bed Dogoのオープンまでのストーリーはこちら
「泊まれる蔵」が丸わかり。蔵のリノベから開業までをリポート
https://enjoyworks.jp/times/062/

また、会場には新潟県の寺泊でこれから「バスアンドベッド」を立ち上げようとしている兼子悠さんも参加。祖父母が遺した蔵(と母屋)をどうすればいいか…という、親戚の間での懸案事項の解決策として、この事業に手を挙げてくれました。「(物件に対して)何をしていいか分からないし、売るか残すかどっちかっていう話になっても、売却してもマイナスになるような場所で、『やっぱり難しいよね。もうどうにもこうにもならないよね』と堂々巡りで。そこでこの事業を知ったのですが、じゃあ費用はどうするの?というところで、(親族には)ファンドでの資金調達の仕組みを教えて、ようやく理解してもらえたかな」と経緯を辿って話してくれました。これから事業着手なのですが「こういう家族の(相続の)問題などを抱えている方、やっぱりいっぱいいらっしゃると思うので、そういう方々にも参考になるような事例になればいいな」と、その先にも期待を膨らませていました。

写真左はオンラインで参加した橘さん。会場ではこれから事業化に着手する兼子さんが「蔵再生」の思いを語ってくれました。

イベントを終えて、会場参加者からは「遊休不動産の活用方法に関して、幅の広さを感じた」「地域を巻き込む、共感者を生む進め方が参考になった。地道な活動が大事ということも」「友人が所有している蔵を(バスアンドベッドにできないか)紹介しようと思う」などの感想が集まっています。ある自治体の方は「まちの価値創出につながる地域の魅力の掘りおこしのアイデアに」と、このイベントへの参加理由を話してくれました。

私たちも「BBTサミット」のイベントを通して関わってくれている人の声を聞き、改めて、観光資源の「作り方」や人の巻き込み方などを含めたBBTへの期待を感じ取ることができました。掲げるのは「全国100棟」。各地に“オンリーワン”があちこちと生まれる――。これが実現する日も、そう遠くはないかもしれません。

The Bath & Bed Teamウェブサイト
https://bathandbed.team/

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