60歳、65歳。会社員であれば、定年退職という人生の節目を通るでしょう。さて、これまでの「会社」から、今住んでいる地域が「ベース(拠点)」の生活になったら、何をしますか?現役時代には時間が取れなかった習いごとを再開する。孫と過ごす時間を何より大切にしながら、自分のペースで毎日を組み立てる……。いろいろあるでしょうが、その中の一つが、地域の歴史に「ハマる」。古道を歩き、歴史講座を受け、図書館に通い、気づけばガイドサークルの一員に。制度の上では「一区切り」とされる年齢を過ぎても、暮らしはむしろ自由になり、人生の解像度が上がっていく。そういう時期でもあると思います。
そこで少し俯瞰してみると、あることに気づかされます。長年の仕事で培った段取りの力、子育てや介護をくぐり抜けてきた忍耐と柔らかさ、人と場をつなぐ自然な気遣い。豊かな経験や厚みを持つ人たちが、地域にこんなにいるのに、そういうものが、地域の中でなかなか循環していかない。これは個人の問題ではなく、いまの社会が抱える構造的な課題かもしれません。定年後の選択肢として、地域で「人生の積み重ね」を活かせる場所が見当たらないって、もったいないですよね。
ーーだから、私たちは食堂をつくります
この課題に向き合うため、私たちエンジョイワークスは一般社団法人IKKAと手を携え、鎌倉・由比ガ浜に共生型食堂「(仮称)みんなの食堂」を立ち上げます。2026年8月の開業を目指しており、この取り組みは国土交通省「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」にも採択されています。シニアの社会参画と、障害のある若者の就労機会という「2つの壁を越える」モデルとして、国からも注目されているスキームです。
なぜ「食堂」なのか。それは、食の「場」が持つ力を信じているから。毎日誰かが訪れ、言葉を交わし、気づけば顔なじみになっていく。私たちは、そういう日常の積み重ねの中にこそ、人の経験や個性が自然ににじみ出ていくと考えています。事業の原点となっているのは、仙台市発の食堂ブランド「ジーバーFOOD」。地域のシニアが主役として働く仕組みを構築し、すでに200人以上が携わり、全国30以上のエリアへと広がりを見せています。地域の食材を活かした手作りの定食や弁当を届けながら、シニア世代にとって誇りある「おしごと」の場を各地につくってきた取り組みです。
ジーバーFOODウェブサイトhttps://gbfood.gbaaa.jp/

料理が得意な人、ではなくてできることを持ち寄っていく形(上記写真は仙台の事例)
「支える・支えられる」ではなく、「持ち寄る」場所へ
鎌倉では、このモデルにもう一つの個性を重ねます。ダウン症のある人と家族の「まなぶ・はたらく・くらす」を支援する一般社団法人IKKAとの連携です。カフェでの就労体験や私たちの運営する企業研修施設「旧村上邸」の清掃など、「ダウンインターン」に取り組んでいるIKKAさん。この食堂も、その「はたらく」の挑戦の場のひとつ。シニアが若者のそばに立ち、一緒に店を切り盛りしていく。教える人・教わる人ではなく、それぞれができることを持ち寄る働き方です。「人を育て、場を整え、失敗を受け止めてきた」シニア世代の経験が、若者の挑戦をそっと支える。関わる人たちの人間的な豊かさが食堂の一番の強みになる。
この食堂は完成形を押しつけるものではありません。地域の声を聞きながら、地域の人が店に立ち、地域とともに育てていく。場所は、私たちが10年前にリノベーションしてカフェとして運営していた鎌倉・由比ガ浜の旧HOUSE YUIGAHAMA。ここを、バリアフリーな食堂として、まちの「いつもの一軒」にしていきたいと思っています。

由比ヶ浜通りの旧カフェを「食堂」仕様に改装を進めていきます(写真右は関係者によるキックオフミーティングの様子)
一緒につくりませんか?
今年夏の開業に先立ち、地域の皆さんと構想を深める連続イベントを開催します。まず4月は、「鎌倉で暮らすシニアはどんな暮らしをしているのか?」「日々の生きがいや、地域との関わり方は?」を聞かせていただくワークショップを実施します。この食堂がどんな場所であるべきか、地域に暮らす皆さんの声からつくっていきたいと思っています。
5月には、実際に食堂で働く仲間・スタッフを募る交流会も。それぞれの経験や得意なことを持ち寄りながら、「自分はどんなふうに関わりたいか」を一緒に考える場にしたいと思います。「まずは話を聞いてみたい」「応援したい」という方も、もちろん大歓迎です。
人生の厚みが、まちをおいしくする。 そんな食堂を、鎌倉で一緒につくっていきましょう。
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一般社団法人IKKAとエンジョイワークスの取り組みはこちら
◼️「持続可能な場」と人の循環とは? ダウンインターンを通して旧村上邸で考えたこと
https://enjoyworks.jp/times/117/
2026/04/07
2026/04/07