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【めぐる、団地①】金沢シーサイドタウン ―― 50年前の“未来都市”で、心地よい暮らしの種を見つける

Report 公開日:2026/01/20

かつての高度経済成長期、団地は「憧れの近代生活」を詰め込んだ夢の器でした。機能的に配置された住棟、歩車分離の安全な道、計算し尽くされた豊かな緑地。しかし、半世紀が過ぎたいま、団地を語る言葉の多くは「老朽化」「高齢化」「孤独」といった、どこか閉塞感のあるものに取って代わられています。今この瞬間も、団地は日本社会が抱える課題の最前線。そして同時に、身近な課題を解決するための最強の「プラットフォーム」としての可能性を秘めているのでは――?私たちは、そんなことを考えるようになりました。

団地を「寿命を迎えた過去の遺物」としてではなく、これからの日本を支える「未来のインフラ」として捉え直し、各地を縦から横から見てみる――その第一弾として訪ね歩いたのは、横浜の海辺に生まれた壮大な計画都市「金沢シーサイドタウン」。 海から創り出されたこの巨大な「ハコ」は、どのように生まれて、どんな現在地なのかー。

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横浜市最南部の金沢区。鎌倉時代に幕府の要衝として栄えた歴史ある町です。そんな場所にある広大な団地街区。「金沢シーサイドタウン」は、横浜の未来を背負った巨大プロジェクトの一環で整備された場所です。高度経済成長期、横浜市は人口増に対して、土地が足りなくなるという大きな問題に直面。その時期に計画されたのが、市の基盤を強くするための「六大事業」でした。今の横浜を象徴する「みなとみらい地区」や港北ニュータウンの造成、ベイブリッジや市営地下鉄など交通インフラに加えて「金沢地先埋立事業」こそが、団地造成のはじまり。このまちは、ただの住宅地ではなく海から造り出された「計画都市」なのです。

元の海岸線を活かした汽水域に沿うように並ぶ団地群。空から見ても…圧巻!

ほどよい自然との調和
金沢シーサイドタウンがユニークなのは、文字通り「ゼロ」から海を埋め立てたという点。この事業の目的は一つではありませんでした。住むための土地、そして企業を誘致するための工業地、すべてを複合的に一度に確保する、という壮大な目標がありました。東京湾側には工場や研究施設、ここと線を引くようにグリーンベルト(金沢緑地)と首都高速湾岸線、無人運行の新交通システム、「金沢シーサイドライン」が南北に走ります。その西側に広がるのが、金沢シーサイドタウン。元々の海岸線から緩やかにつながる一帯が団地エリアです。

住宅用地は約100万㎡(月並みな比較ですが東京ドーム約21個分)。日本住宅公団(現在のUR)、市営、分譲と約9000戸、1970年代にさまざまなタイプの住宅が計画的に建てられ、「団地が生み出すまち」の究極の形となっています。そして、街の景観も「埋め立て地」という無機質なイメージはありません。内湾と外湾という元の地形を活かして、団地の建物がもともとの海岸線に沿って美しく連なるように配置。さらに、車が走る道と、人が歩く道とを完全に分離する緑道や遊歩道が整備されています。住民が安全に移動し、子どもたちが安心して遊び、自然な形でご近所付き合いが生まれるような「歩く人が主役の街」なのです。

団地自体も高層と中低層、メゾネットなど画一的ではなく、それも街のリズムを生み出しています。計画当初から複数の建築家が関わっており、景観デザインと同時に住環境のデザインを重視しているのが特徴。エリア北部にある並木第一小学校は槇文彦氏の設計で、岡本太郎氏の壁画がある幼稚園も。海苔の養殖などで栄えた漁港は、埋立を免れて汽水域の「ふなだまり公園」として憩いの場になっており、1992年には、「シーサイドタウン」自体が国土交通省の都市景観100選にも選ばれています。かつて4つあった小学校は、子どもの減少により統合されて3つになりましたが、廃校跡地には、リハビリ専門の病院が開業。校舎内にあったコミュニティハウス(コミハ:地域交流や生涯学習の場)も姿を変えて院内に再整備されています。

そして、公園の名称にもちょっと注目してもらいたいのです。サルダの鼻・イド藻・中藻・のりべか・イガイ根…これ、全て団地エリアの公園の名前なのですが、どれも、かつての地形や漁に関わる言葉。貽貝(イガイ)の岩礁だったから「イガイ根」というように。漁業が盛んだったこの土地の歴史は、そんなところに息づいているのです。

まちなみも余裕があって穏やか。幼稚園の壁画以外にも、公園には彫刻があったり、アート志向も。計画されたまちだけど、「人の温度」がある…そんな印象

「海と緑の財産」が支える未来
ただ、多くの団地が抱える住民の高齢化という課題は、金沢シーサイドタウンも例外ではありません。しかし、この街は他のニュータウンにはない大きな「財産」を持っています。それは、計画段階から計算された「自然との調和」。埋立地でありながら、海岸線沿いのなぎさの景観や緑地帯がたっぷりと確保されています。実は、徒歩と自転車圏内にアウトレットモールや商業施設、工場直売所、レジャー施設(温水プールや八景島、海の公園など)がある、「生活至便な街」でもあります。

「海」「計画された緑」「公共交通網」という優位性は、今後の街の再生において大きな力となります。水辺と緑地のポテンシャルを活かしたコミュニティ活性化も、住民が取り組み始めているところ。「計画的に造られた団地街区」は次のステージに。高齢化などの課題を乗り越え、「誰もが憧れる海辺の未来都市」としてさらに進化できる可能性を秘めているのです。

金沢シーサイドタウンのまちづくり活動「あしたタウンプロジェクト」ウェブサイト http://ashitatown.jp/

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「めぐる、団地」連載では、団地の新しい活用やまちづくりなどの現場を追いかけていきます。
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