ENJOYWORKS TIMES

まちと人のあいだに立つ「編集装置」―エンジョイワークス一級設計士事務所を紐解く

Column 公開日:2026/01/20

「設計しない設計事務所」。私たちはそんな言葉で自分たちの仕事を表現していたことがあります。もちろん、設計をしないわけではありません。ただ、完成形や使い方を先に決めすぎない、関係性まで固定化しないという意思を込めた表現です。施主さん(お客さん)の思い描いている住まいや暮らし、要望を実現するための術を「設計」というスキルで整理すると言えばいいでしょうか。実際のプロジェクトの現場で培われた、私たちの設計とまちづくりの関わり方そのものです。

エンジョイワークスは、地元の湘南では不動産会社として知られることが多いかもしれません。けれど実際の「仕事」は、土地や建物を“扱う”という一端だけでなく、その先にある暮らしや営み、まちの変化に長く関わり続けてきました。その過程で、設計はいつも“最後の工程”ではなく、“最初から必要な視点”として存在。だから私たちは、設計業務を外注するのではなく、社内に持つという選択をしました。 不動産、企画、設計、施工、運営。それぞれが分断されるのではなく、地続きで考え、同じテーブルで議論する。その中心に、設計がある。私たちが目指してきたのは、そんな「まちづくり系」の設計事務所のあり方です。

私たちの仕事の特徴的な一つ「スケルトンハウス」。キャッチコピーは「自分の暮らしは自分で作る」。設計スタッフはこれに伴走する同志のような存在

設計なくして成り立たない、まちづくりの現場
たとえば、横須賀で展開している、田浦月見台住宅再生のプロジェクト。この取り組みは、市の遊休不動産(旧市営平屋住宅団地)の利活用に関する事業スキームの検討、関係者調整、運営の仕組みづくりまでを含めたエンジョイワークス全社横断型の「まちづくり」です。住居のDIY設計は各入居者さんが独自に行っていますが、共同棟(集会棟・サウナ棟)や補修に関しては、建築設計のスタッフが担当。まちに開かれた空間づくりと居住空間のサポートにおいても、事業全体をつなぐ共通言語として機能しています。

また、まちに佇む古い蔵を再生する「泊まれる蔵」プロジェクトでは、建物が持つ歴史や空気感を丁寧に読み解きながら、内装設計を担当しています。単に保存するのでも、刷新するのでもなく、この場所がこれから町にどう開かれていくのか、人が交わる拠点としてどう使われていくのかを見据えた設計。宿泊施設として人を迎え入れることも、私たちにとってはまちづくりの大切な一手。湘南でも、古い民家を民泊などに再生するお手伝いもしていますが、建築、運営、まちとの関係性が重なり合うことで、場ははじめて息をし始めます。

元工場をシェアアトリエに、古民家や古い蔵を宿泊施設に。そんな地域に密着したリノベーションも強み

こうしたプロジェクトに共通しているのは、設計が単独で完結していないこと。不動産の条件、事業としての持続性、運営のリアル。そのすべてを社内でバトンタッチしながら空間を組み立てています。

暮らしとコミュニティがつながる「場の設計」
住まいの分野でも、この考え方は変わりません。「設計しない設計」の最たる例が、私たちの開発した「スケルトンハウス」。構造体をあらわにし、内装を住み手に委ねる住まいです。完成された間取りを用意するのではなく、暮らしの変化に合わせて更新できる余地を残すこと。住み手が設計の当事者であり続けることで、時間とともに愛着を積み重ねる。私たちはまさに伴走者の立ち位置です。また、壁のない分譲住宅「エンジョイヴィレッジ」は、住まい同士、そしてまちとの関係性を開くプロジェクト。コミュニティを設計しすぎず、偶然が入り込む余白を残すこと。物理的な境界をあえて曖昧にすることで、暮らしと関係性が自然に育つ「場の設計」に関わっています。

特に湘南というフィールドは、暮らしと仕事が混ざり合い、住まいの使われ方が変化し続けている地域。完成形を前提とした設計はすぐに更新を迫られます。空き家の利活用、リノベーション、事業併用住宅や二地域居住。現場で起きるリアルな課題に向き合いながら、スタッフたちは「変化に耐え、更新され続ける力」を身につけてきました。

毎年12月の「OPENHOUSE WEEKEND」イベントでは、施主さん宅の案内役に。まちの人とのコミュニケションも自然と増えています

私たちが考える設計とは、単にかたちをつくることではありません。この場所は誰のものなのか。どう使われ、どう育っていくのか。まちにとって、どんな意味を持つのか。そうした問いを「共有し続けること」から始まります。完成させないからこそ、関わり続けられる。

設計を、まちと人のあいだに立つ「編集装置」として。私たちはこれからも、現場からまちづくりを支えていきたいと思います。

□エンジョイワークス一級建築士事務所ウェブサイト
https://enjoyworksdesign.com/
□建築設計部Instagram
https://www.instagram.com/enjoyworks_design/
□建築設計部ブログ(活動LOG)
https://enjoyworksdesign.com/log

全ての記事 Column (47) Feature Project (75) Interview (27) New Topics (68) Report (22) 数字で読むエンジョイワークス (9) 自治体共創 (34)

ENJOYWORKS TIMES

Follow us