住宅は、つくり続ける時代から、「どう使い続けるか」が問われる時代に入りました。全国に積み上がってきた膨大な住宅ストックは、老朽化や空き家といった課題を抱える一方で、見方を変えれば、まだ十分に活かし直せる可能性を秘めています。いま求められているのは、「壊すか、残すか」という単純な二択ではありません。住み続けられる状態へ、どう再生していくか。その問いに向き合う動きが、各地で静かに、しかし確実に広がっています。
その「再生」の手段として注目されているのがリノベーションです。見た目を整えることではなく、性能や使い方まで含めて、住み続けられる状態へ住宅を更新していく考え方。暮らしやこれからの使われ方に合わせて、住宅の価値や役割を見直し、更新していくことを指します。細かく仕切られていた間取りを見直し、家族構成や働き方に合わせて空間を組み替える。そんな発想も可能なのです。
ストック再生の思想と実装力を知る場
こうしたリノベーションの実践を、より多くの人に届けるために、(一社)リノベーション協議会が発信の場として設けているのが「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」です。全国で生まれている良質なリノベーションの取り組みを可視化し、住宅ストックの可能性を社会に向けて広く伝えることを目的としています。このアワードが評価するのは、単なるデザイン性や規模の大きさではありません。どのように向き合い、どんな社会的な意味を与えているのか。再生に対する思想と、それを形にする実装力そのものが問われる場です。事例の紹介にとどまらない、住宅再生の現在地を映し出す、ひとつの指標とも言えるでしょう。
昨年末に開かれた「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2025」の『800万円以下部門』で最優秀賞を受賞した株式会社フロッグハウス(神戸市)の取り組みも、そうした文脈の中にあります。受賞物件は市営住宅。住まいとしての性能向上や長寿命化を丁寧に積み重ねながら、「暮らしを続けていくための再生」を実装している点が高く評価されました。その姿勢は、建物単体の改修にとどまらず、住まいを社会のストックとして捉え直すものでもあります。同社は、「眠っている資源を再生し、地域で新しい風を起こす」という理念のもとに、中古物件や団地のリノベーションが事業の柱。「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」においては5年連続入賞(2025年時点)を果たしており、団地住戸の再生における遊び心のある空間デザインと機能性を重視した施工も注目されています。
リノベーション・オブ・ザ・イヤー2025の最優秀賞作品と講評
https://www.renovation.or.jp/oftheyear/award.html
□フロッグハウスウェブサイト
https://froghouse.top/
私たちエンジョイワークスは、このフロッグハウスとともに「愛ある団地」というプロジェクトにも取り組んでいます。神戸市にある明舞団地の一室を対象に、省エネ性能やデザインを高めるリノベーションを実施し、団地を住み続けられる住宅ストックとして更新していく試みです。団地を消費するのではなく住み継いでいく。そのために手を入れ、暮らしの価値を整えていく――そんな考え方を「愛ある団地」という名前に込めました。このプロジェクトでは1号・2号をフロッグハウスとともに手がけており、現在は2号物件の販売を開始しています(プロジェクト自体は5号まで進行中)。

フロッグハウスとの「オープンハウス」の様子。施工中の様子を見学できるイベントも実施しています
□愛ある団地1号ウェブページ
https://hello-renovation.jp/renovations/23533
まちとの「生き方」につながる、住宅ストック活用
実は一方で、同じリノベーション・オブ・ザ・イヤーの場において、エンジョイワークスは無差別部門で最優秀賞を受賞しています。約1.4万㎡の市営住宅団地のエリアリノベーションというまさに「無差別」な規模です。一方で、住戸単位に視座を変えた再生。一見すると両者はスケールの異なる全く違う取り組みに見えるかもしれませんが、私たちが向き合っている問いは変わりません。住宅ストックをどう活かし、どう住み続けていくか。その課題を、住戸、団地、エリアという異なるレイヤーで同時に扱っている。同じ場に、同じ問題意識を持つプレイヤーとして立っている、という整理のほうが私たちの実感に近いと言えます。
これらの取り組みに共通しているのは、住宅再生を「完成形」として捉えていないこと。再生とは、一度きりのリノベーションで終わるものではなく、住み続けるために更新し続けるプロセス。すでにある膨大な住宅ストックをどう扱うかは、これからのまちの姿そのものに直結します。小さな住戸の再生も、団地の再編も、エリア全体の再生も、根っこにあるのは同じ問い。「住宅ストックとどう向き合うか」という時代的なテーマは、「まちとどう生きていくか」という視点を交えながら、私たち一人ひとりに問いかけているのかもしれません。

写真左側が、田浦月見台住宅プロジェクトの「Before」。右は住戸や庭、共有スペースの改修後「After」
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※冒頭の写真は、昨年12月に開催された「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2025」の授賞式の様子(左から5人目がエンジョイワークス福田、6人目がフロッグハウス清水代表)
エンジョイワークスが運営する「#新しい不動産業研究所」でのフロッグハウス・清水大介代表のインタビュー記事(2025/6/2公開)
https://atarashi-fudousan.jp/properties/463
ストック再生に関するエンジョイワークス代表・福田のインタビュー記事(2026/1/6公開)
https://enjoyworks.jp/times/253/