奈良県生駒市、近鉄・生駒駅南口エリア「いこみな」で展開しているプログラム「いこみなチャレンジ」。空き家・空き店舗の活用を軸に、事業をつくりたいプレイヤーと、それを応援する地域の人たちをつなげるために、今年6月にスタートしました。このプログラムが生まれた背景には、駅前に点在する空き物件の増加や、新しい挑戦が生まれにくい環境に対する課題意識。そこで立ち上げたのが、生駒市とエンジョイワークスが「小さく始められる場所づくり」と「まちぐるみの応援」をセットにした“官民連携”による事業者育成型公募「いこみなチャレンジ」でした。
■いこみなチャレンジウェブサイト
https://ikomina-challenge.jp/
事業者(参加者:チャレンジャー)募集を開始すると、想定していた以上の応募があり、「生駒で挑戦したい」「事業をサポートしたい」「地元に賑わいを取り戻したい」――まちの中に潜んでいた熱量の「可視化」につながったのです。エントリーした事業者への企画立案の伴走支援などを経て、12月7日に実施したのが「公開プレゼンテーション」。その様子と「これからの兆し」をレポートします。
熱量に満ちた「まち」への想い
公開プレゼンは、当日は6組のチャレンジャーが、これまで磨き上げてきた事業プランを発表しました。「公開」なので、聴講者も一般募集。駅の南口やまちの活性化に関心がある、新規事業の具体的なアイデアや展開を学びたい、自身の事業展開や地域活動の可能性を探りたい―といった方のほかに、まちづくりの先進事例として参考にしたい―と、自治体職員も来場しました。登壇した事業者は、旧公設市場の長屋を舞台に「地域と世界をつなぐ日本文化の小さなサロン」をつくる構想〈IKOMA ART BASE〉。味が変化していく一皿の“旅するカレー”を通じて、まちあるきのきっかけを生み出す飲食店を提案した〈SPICECURRY 寶山(HOZAN)〉。子育て世代に寄り添う複合施設〈あるくあるっく〉、希少なレトロ自販機を生かした〈めん類自動販売機 いこみな〉、生駒に滞在型観光を生む〈ゲストハウス&カフェ〉、家具とドーナツを掛け合わせた〈椅子とドーナツ〉…と、個性豊かなアイデアが続きました。いずれも自身の経験やまちへの思いから生まれたプランであり、聞き手に深く響く発表となりました。
地元起業の先輩たち…事業計画の立案に伴走したメンター陣からは、「熱量こそが人を巻き込み、まちの文化をつくる」「店づくりはスタートであり、続けることでまちの歴史になる」といったエールが寄せられ、会場には挑戦者を後押ししたいという空気が満ちていました。

生駒市コミュニティセンターで開かれた公開プレゼンの様子
ガバメントクラファンを使った新しい資金調達も
イベント後のアンケートでは、参加者の9割以上が「とても満足」「おおむね満足」との感想が。さらに「新しい事業が増えるきっかけになる面白い活動」「事業を考える人の熱が伝わった」「来年のプログラムが気になる」「次も参加したい」という声もあり、プロジェクト全体への期待や関心の高さに加えて、チャレンジャーそれぞれの個性と視点から、“地域に新しい風が吹くかもしれない”という期待が生まれていました。
このプログラムは、プレゼン登壇者の2組「IKOMA ART BASE」と「SPICECURRY寶山」が、資金調達のため「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」に挑戦していることも特徴のひとつ。空き店舗再生には改修費や設備投資が不可欠で、個人が挑戦するには大きなハードルとなります。ここに、ふるさと納税を活用して、市民の共感が直接的な支援につながる仕組みを設けました。これも、官民連携プログラムの特徴。市民が挑戦者を“自分ごと”として支え、資金や応援を共感という形に変えて、まちの未来をともにつくる仕組みにもチャレンジしています。
2組のガバメントクラウドファンディング紹介ページはこちら
■生駒に彩りを!アートと学びが交わるギャラリー&ワークショップ「IKOMA ART BASE」
■生駒に、“スパイスでつながる”新しい賑わいをつくりたい!「SPICE CURRY寶山(HOZAN)」

GCFのサイトページ
まちと挑戦者が育ち合う未来とは
いこみなチャレンジは、空き店舗を起点に地域の意志がつながり、まちが新しい動きを始めるプロセスそのものを価値とする試みです。その土台を支えているのが、生駒市とエンジョイワークスによる官民連携。行政の地域課題への視点に、民間の企画力や伴走力が重なることで、挑戦を継続的に生み出す環境が整えられています。
今回の公開プレゼンで生まれた熱量は、この官民協働が市民参加へと広がっていく兆しでもあります。来年度はサポーター制度や物件提供の仕組みがさらに強化され、挑戦の循環がより強固になっていく予定。ここで生まれた芽が、生駒の風景を少しずつ変えていく——その過程をこれからも共に見守り、育てていきましょう。
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補足:ガバメントクラウドファンディングとは?
自治体が進める公共性の高いプロジェクトを、ふるさと納税を通じて寄付で応援できる仕組みです。寄付は自治体へ直接届き、税控除の対象にもなるため、市民や全国の支援者が“共感する取り組み”に主体的に関われるのが特徴です。
生駒市役所リリース
https://www.city.ikoma.lg.jp/cmsfiles/contents/0000039/39554/20251120_02_.pdf