毎月この連載「数字で読むエンジョイワークス」を書くたびに思うのですが、私たちの仕事は物件の売買や管理といった枠をはるかに超えて、「地域の未来そのものをつくる営み」に近づいている気がします。空き家や遊休資産の相談を受けているだけのつもりが、いつのまにか移住や地域活性、公共施設の使い方まで話題が広がることも。地域の課題は一つひとつ切り離せるものではないと実感します。こうした複合的なテーマに向き合うには、従来の事業のやり方を前提とするだけでは十分でない場面も増えてきました。
“できること”を広げてきた私たちの視点から生まれた場
その背景から、エンジョイワークスが2022年に立ち上げたのが「#新しい不動産業研究所(以下、研究所)」です。不動産会社、建築会社、まちづくり会社、デベロッパーなど、立場の異なる事業者が、地域で求められる実務や知見を共有し合うためのプラットフォームになれば、という思いがありました。空き家活用、公共施設の利活用、地域の関係づくりといったテーマは、いま全国各地で共通の課題になっており、いち事業者の思いや努力だけでは解けない事例も増えています。場の再生や運営、コミュニティを育む分譲事業、新規事業のプロデュース、地域拠点の創出…など、従来の取り組み領域を大きく超えて「できること」にチャレンジしてきた私たちならではの視点が原点と言えるかもしれません。
#新しい不動産業研究所ウェブサイト
https://atarashi-fudousan.jp/
ちょっと難しい表現をすると、「不動産業の領域拡大」。2025年現在、研究所には全国から63社が参加しています。多様な地域・業態の企業が集まっていることで、取り組みの幅が自然と広がり、地域によって異なる実践を持ち寄れる点に価値があります。とくに公共性の高いプロジェクトや住民参加型の検討などは、地域ごとに最適な進め方が異なるため、成功した方法だけでなく、試行錯誤の過程を共有できることが重要です。
研究所では、月に一度の分科会や現地視察、会員向け情報配信などを通じて、主に実務者同士の情報交換を行っています。活動自体は肩肘を張ったものではありませんが、継続することで、ある地域の工夫が別の地域での参考になったり、行政との協議を進める際の判断材料になったりと、徐々に効果が見え始めていると思います。

研究所では「視察ツアー」と題した交流イベントも。現地の事業者のプロジェクトに立ち寄ったり、エンジョイワークスの施設を見学したり
“新しい”という言葉には、従来の仕事を否定する意図はありません。仲介や管理といった基本的な実務があってこそ成り立つ取り組みばかりです。ただ、地域の資源をどう次につなぐか、持続的に活用するには何が必要かといった、これまで十分に整理されてこなかった領域に向き合う機会が増えていることも事実で、その状況に対して素直に名前をつけたものが、この「研究所」。まだ一般化できるほど体系化されているわけではなく、現場で働く人が日々の実践を積み重ねていく段階にあります。

会員企業や「おもしろいこと」に挑戦している事業者によるオンラインでの事例紹介、対談イベントなども開催
「空き家×民泊」分科会に見る、新たな可能性
「研究所」では、最近「空き家×民泊」の分科会を立ち上げました。空き家の再生のノウハウは広がっていますが、どのように使うか(使えるか)、その可能性を拓くもの。10月に実施したオンラインセミナーには会員企業に加えて、一般の事業者など40組以上の参加がありました。情報共有にとどまらない、次のアクションへのヒント。地域に眠る可能性を、実践と学びの積み重ねで少しずつ形にしていく。その営みこそが、私たちが不動産業を通して未来に手を伸ばす方法なのかもしれません。
空き家×民泊by#新しい不動産業研究所LINE https://line.me/R/ti/p/@874wvhbo
