まちの“これから”は、決してドラマティックな瞬間だけから生まれるものではありません。たいていの場合、その始まりはとても小さく、誰かが静かに動き出した一歩だったりします。奈良県の近鉄・生駒駅南口──地元の方が「いこみな」と呼ぶこのエリアでは、まさにその小さな一歩が積み重なり、少しずつ未来の輪郭が立ち上がろうとしています。昭和のにぎわいをとどめる木造アーケード、時間が止まったような5坪の路地裏物件、かつて商店が軒を連ねた町家。ひとつひとつに歴史のレイヤーが重なり、まちの中に静かに息づいてきました。しかし、それらは時代の変化の中で役目を終えかけていた場所でもあります。
そこに再び光を当て、新しい営みを迎え入れるためにスタートしたのが、生駒市とエンジョイワークスが協働で進める「いこみなチャレンジ」。空き物件をただ埋めるのではなく、その場所に合った事業や、その場所を面白がってくれるプレイヤーを見つけ、さらに専門家の伴走で“事業として育てていく”ことを目指したプログラム。7月から参加者を募集し、エントリーは25組。ものづくりから飲食・小商い・コミュニティスペースなど、多彩な可能性を秘めた事業者がこのまちに関心を寄せてくれました。事務局とメンターとの対話やブラッシュアップを重ねて、いま、このまちで新しい景色が生まれようとしています。
いこみなチャレンジウェブサイト
https://ikomina-challenge.jp/

これまでの説明会やまち歩きの様子
物件の余白と、事業者の個性が出会うとき
今回候補に挙がっている物件は、どれも使い手次第でガラリと表情が変わる余白を持っています。旧公設市場に連なる町家は、木の質感や天井の高さがそのまま残り、手を入れすぎず“味わい”を活かす方向性もあれば、現代の暮らしに寄せたリノベーションも考えられる幅の広さが魅力です。5坪の路地裏物件は、小さいからこその勝負ができる場所。焼菓子店やセレクトの小物屋・ギャラリーなど──使い方によってまちの雰囲気に新しい余韻をもたらしそうです。こうした“物件の個性”と“事業者の個性”が出会ったとき、どんな未来のシーンが立ち上がるのか。

空き店舗だけど「業種と掛け合わせたらおもしろそう」という物件たち(提示例、今回のマッチング物件とは異なります)
12月7日に行われる5組の公開プレゼンテーションは、その瞬間に立ち会える貴重な場。また今回は、最終審査で惜しくもマッチングに至らなかった事業者も登壇します。物件との条件が合わなかったというだけで、事業の完成度や熱量はむしろ高く、「どこか別の場所なら、むしろ伸びるはず」と感じられるケースばかり。まち側に眠る空き物件や、まだ表に出ていない不動産情報とつながれば、新たな可能性が一気に開くかもしれません。会場に来てくださる方々──特に物件オーナーや不動産関係者にとっては、事業者と直接話し、印象を確かめ、未来の使い手と出会う時間にもなります。
「いこみなチャレンジ」が目指すもの
そして、この場は事業者やオーナーだけでつくるものではありません。地域の方の「こういうお店がほしい」「応援しています」の言葉が、挑戦を後押しし、事業の実現性を高めます。生まれたお店に通う人、SNSで紹介する人、日々の雑談で話題にしてくれる人──そうした日常的な関わりこそが、まちの新しい営みを支えていきます。「いこみなチャレンジ」は、単なるマッチング事業ではなく、まちとひとが育ち合うプロセスそのものだと感じています。
公開プレゼンテーションは、この大きな流れの“はじまりに立ち会える日”。生駒駅南口でこれから生まれる挑戦と未来を、ぜひ見届けていただけたら嬉しいです。
■「いこみなチャレンジ」公開プレゼンテーション
日時:2025年12月7日(日)15:00~18:00(予定)
会場:生駒市コミュニティセンター(奈良県生駒市元町1-6-12生駒セイセイビル)
参加申込・お問い合わせ:申込フォーム
または生駒市都市づくり推進課 拠点形成室(0743-74-1111 内線3811)
観覧参加申し込みはこちらから*12/6(土)締切
主催:生駒市役所/運営:エンジョイワークス
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公開プレゼン登壇者には、生駒市と「ガバメントクラウドファンディング」に挑戦している事業者もいます。持続可能な事業にしていくための資金調達の仕組みにもご注目ください。
□ガバメントクラウドファンディング®を運営するトラストバンクのリリース(11/20付)
https://www.trustbank.co.jp/newsroom/newsrelease/press991/
https://ikomina-challenge.jp/news/59
2025/12/02
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