「冬の鰤と紅ズワイガニが食べたい」と、富山の氷見を訪れたのが18年前のこと。ここは関東圏とはまた違う、豊富な魚介資源のまち――そんな印象に留まっていた私が、この夏久しぶりに訪れたのは富山県射水市でした。以前、事業者インタビューでお話を伺った赤間遼太さんが運営する「AKAMA鎌倉」の第二弾となる宿泊施設、「AKAMA富山」のプロジェクトが進んでいると聞き、旅の途中に足を伸ばしてみました。(ENJOYWORKS TIMES・佐藤朋子)
AKAMA富山のプロジェクトが始まったのは今年6月。発信のために富山そして射水・内川エリアのポテンシャルを探っていたのですが、写真や素材、Web記事を見れば見るほど気になる存在に。メールマガジンでも「おさかな天国」と表現しましたが、冬に限らず旬のリレーを楽しめる魚介の豊富さ、立山連峰の稜線、そして国内でも珍しい“運河のあるロケーション”。――これは行くしかない。
中部エリアから北上し、金沢を経由して射水市へ。お昼ごはんに立ち寄ったのは魚介ではなく、富山ブラックラーメン。長時間煮込んだ醤油だれが黒々としていてスープも真っ黒ですが、しょっぱさ一辺倒ではなく、深みのある味わい。なるほど、ご当地ラーメンの奥深さに「ふむふむ」と頷きつつ、本題の内川エリアへ向かいました。
富山県は三方を急峻な山々に囲まれ、深い湾を抱くように平野が広がっています。富山平野の大部分は、立山連峰から流れ出る急流河川が形成した扇状地。なるほど、どこを見渡しても山が目に入るわけです。そして川沿いに広がる運河も、この地ならではの特徴。県内にいくつかある運河は、単なる水路ではなく、産業振興や都市の将来を見据えて整備された計画的インフラなのだそう。そのひとつが、ここ射水市の内川エリアです。まちの中に川がある、という表現がぴったり。歩いていて「いきなり運河だった」と感じたほどで、小さな漁船が行儀よく並ぶ水辺のすぐ向こうに住宅や店舗が並びます。まさに“数歩外に出れば水辺”という暮らし。運河にかかる橋も個性豊かで、人々の愛着を感じました。

左の写真はリノベ前の様子、まさに漁師小屋。それを丁寧にリノベ(写真右は8月時点の外観)
そして本題のAKAMA富山へ。開業前のため内部には入れませんでしたが、もともと漁師の番屋(待機場所)として使われていた建物をリノベーションしているとのこと。間口が広く、堂々とした佇まいながら、まち並みにしっくりと馴染んでいました。プロジェクトリーダーの赤間さんは、「地域の営みの中にある歴史ある建物を、そこに根付く文化や人々の想いとともに、居心地のいい空間として再生していきたい」とインタビューで語っていたことを思い出します。その“居心地の良さ”を形づくるのが、まさにこの運河沿いのロケーションなのでしょう。
滞在体験の柱となるのは、やはり“海の恵み”。地元の漁師や若いシェフとしっかりタッグを組みながら展開していくそうです。「これほど間近で、日常の中で漁師や獲れたての魚を見られるエリアはあまりない。この体験をぜひ多くの方に味わってほしい」と赤間さん。今回は駆け足の訪問でしたが、次回はぜひ、どっぷり“漁師町体験”に浸りたいと思いながら、運河を後にしました。
その後は、車で5分ほどの「新湊きっときと市場」へ。“きっときと”とは「新鮮な」という意味だそうです。次男は「白エビソフトクリーム」を頬張り、富山の日本酒を購入、さらに魚介のお土産も調達。左手には日本海、右手には遠く立山連峰――そんな景色を楽しみながら次の目的地・富山市内へ向かいました。今回は車での旅でしたが、電車なら北陸新幹線で東京から富山まで約2時間。以前訪れたときは寝台列車「北陸」で約8時間かかったことを思うと、ぐっと“近く”なったものです。

射水で食べた(買った)ものの一部(ブラックラーメンに白エビソフト!?、鱒の寿司などなど…)
エンジョイワークスが関わってきた拠点や宿泊施設の特徴は、単に「泊まる」場所ではなく、その土地にある資源を吸い上げ、地域に人・もの・体験を還元していること。プロジェクトに伴走した「AKAMA富山」もそのひとつです。ここで奮闘する人々や、地域がどう変わっていくのか――そのストーリーを、これからさらに深く伝えていきたいと思います。
AKAMA富山
https://toyama.akama-inc.jp/
プロジェクトの経緯はこちら
https://hello-renovation.jp/renovations/26539

11月に開業した「AKAMA富山」。開口部の広さと水辺の明るさはここだけのロケーション
赤間さんインタビュー記事(2024年11月)はこちら
https://enjoyworks.jp/times/129/
2025/11/11
2025/11/18