築古団地や社宅の再生をトピックに、全国各地で学びと対話を重ねるエンジョイワークスのオンラインセミナーシリーズが、9月にスタートしました。テーマは「循環型団地再生のカタチ」。10月は、「日本最大規模の賃貸住宅事業者」といわれるUR都市再生機構をゲストに迎え、団地再生のリアルと今後の可能性を探りました。登壇したのは、同社戦略推進部の担当者。団地の新しい活用事例や、再生の現場で見えてきた課題など、貴重な実践知を共有してもらいました。
点から面へ。エンジョイワークスが取り組む団地再生
「建物の寿命を延ばすだけでなく、まちの関係性をどう再生していくかが大事」。セミナー冒頭で話したのは、エンジョイワークス事業企画部の松島孝夫。横須賀市の旧市営住宅「月見台住宅」や、大分県別府市での面的空き家再生など、近年は”点”の再生から”面”での再生へと広げているなかで、自社の取り組みと団地再生への思いを紹介しました。さらに2026年には区分所有法改正が控えており、団地再生に追い風が吹くタイミング。加えて、「新築価格の高騰も背景に、既存住宅、とくに団地への注目が高まっている」と話しました。

いままさに、団地再生の転換期。このタイミングでの早いアクションが必要(セミナー投影資料より)
URが見つめる団地再生のこれから
続いて登壇したのがUR都市機構。URのルーツは戦後の住宅不足を解消するために設立された日本住宅公団。現在は、全国で約70万戸もの賃貸住宅を管理し、建て替えが進むエリアと、集約(ダウンサイジング)による再編を進めるエリアの両輪で、団地の未来を描いています。事業の紹介のなかでも印象的だったのは、神戸市垂水区・新多聞団地での「陸上養殖プロジェクト」。団地内で診療所として使われていた建物をリノベーションし、ヒラメやエビを養殖するというユニークな事例です。団地の頑丈な構造と断熱性を活かし、新たな産業と雇用を生み出そうという試み。「団地の余白を、地域に必要な機能で満たす」ことの意義を語りました。もう一つの事例は、福岡県宗像市の「ひのさと48プロジェクト」。九州最大級といわれた団地を、9棟解体し戸建て住宅を建設する一方で、1棟を地域の交流拠点へと再生。地元企業など10社が出資し、カフェやビール工房、フォトスタジオが入る複合施設として生まれ変わりました。”住む場所”から”関わる場所”へ。団地再生の新しい方向性を感じさせる取り組みです。
URからは、こうした取り組みを通じて見えてきた展望も語られました。「郊外だからこそできる暮らしがある。距離ではなく、ライフスタイルの魅力をどう発信していくかが大事」「築40年、50年を迎える建物が今後さらに増えていく。古い建物に新しい価値を見出し、共用部の収益化や長寿命化をどう進めるかが鍵」との言葉も。団地再生は、いまや行政や民間、地域の枠を超えた共創のテーマへと広がっているのです。
■UR都市機構の団地再生事業紹介ページ
https://www.ur-net.go.jp/chintai_portal/rebuild/index.html
次回はJR東日本とともに。木更津から見える”なりわい住宅”の可能性
エンジョイワークスが団地再生で重視するのは、「遊休不動産の活用」「環境への配慮」「新しい暮らし方の創出」という3つの視点。社宅や団地を持つ企業・自治体とともに、地域循環の仕組みをつくっていくことを目指しています。11月6日(木)に開催するシリーズ3回目のゲストは、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)。千葉県木更津市でエンジョイワークスと取り組む社宅再生プロジェクト「KISS MARCHE(キスマル)」を取り上げます。旧社宅を”なりわい住宅”として再生し、地域の暮らしと働きを結ぶ新しい実験の現場です。団地や社宅をどう未来につなぐか。現場からのリアルな実践と対話をぜひ参考にしてください。
【イベント】築古団地・社宅でお悩みの企業/自治体向け 2026年 団地再生が加速する!!「循環型団地再生のカタチ」
第3回 2025/11/6(木)10:30-11:30
方式:オンライン(お申込みの方へZoomリンク等をお送りします)、参加無料
次回セミナーの申込みはこちら
https://hello-renovation.jp/news/detail/27367

「よくある」団地の風景。空間に余裕があり、緑に囲まれているのも特徴のひとつ
2025/11/04
2025/11/11