横須賀・田浦の丘の上に佇む月見台住宅。かつて市営住宅として地域の暮らしを支えた昭和の建物群が、今、新しい価値を「まとって」います。ここは、長屋住居をリノベーションしてレトロモダンな「なりわい住宅」として再生した町で、「新しさ」はそれだけではありません。共用スペースとして整備したサウナ棟も、その洗練された内装に目を引くのですが、注目したいのが屋根。シルエットは他の住居と変わらないものの、上から見ると分かる“黒い屋根”にヒミツが。実は最先端の「屋根一体型太陽光発電パネル」で、株式会社モノクロームが開発している「新しい」屋根なのです。後付けのパネルよりも軽量で(屋根そのものなので)取り付けの際や屋根自体の雨漏りなどのリスクも低いそう。なによりも「載っている」という印象がないので、外観デザインもスマートなのです。
モノクロームの本拠地は横須賀・秋谷。エンジョイワークスとオフィスを共にする仲間でもあります。「自分で使う電気を自分で発電し自分でまかなうことを、ごく当たり前にできる暮らしをつくりたい」と創業された同社。「建物の美観を損なうことなく再生可能エネルギーを作って活用する世界を拓いていきたい」というのが屋根一体型のパネル開発のきっかけだったとか。既存の建物に自然に組み込める点も強みで、屋根材としての耐久性を持ちながら寿命や保証を延ばす設計で、廃棄リスクを軽減。さらに景観に溶け込み、住宅街や観光地でも導入しやすいため、都市部での普及も期待されています。
■株式会社モノクロームウェブサイト
https://www.monochrome.so/
2024年には世界的に権威ある国際デザイン賞「レッドドット・デザイン賞」のプロダクトデザイン部門で最高賞「Best of the Best」を受賞。さらには、今月発表された「COOL JAPAN AWARD 2025」ではアウトバウンド部門にも選ばれています。これは日本の文化・伝統・コンテンツ・技術・観光資源などを「世界から見て魅力的=クール」と評価された商品やプロジェクトに対して選定されるもの。デザイン、先進性…この「屋根一体型太陽光発電」は、各方面から評価されている技術なのです。
最新技術も取り入れながら、持続可能な社会を目指す——それが月見台住宅のサウナ棟が体現する価値。東京湾を見下ろす高台に広がる昭和の面影を残す長屋群と、そこに自然に溶け込む最先端の太陽光発電システム。この絶妙な組み合わせが生み出すのは、ノスタルジックな建物の佇まいが醸し出す温かみと、革新的なエネルギー技術が織りなす未来への希望が調和した、まさに「面白い場所」です。
サウナ棟を上から、横から。スタイリッシュなパネルが長屋に馴染んでいます
月見台住宅は、過去の記憶を大切にしながらも新しい価値を創造し続ける、集合住宅の新たなポテンシャルを体現しています。「昭和長屋にクールな屋根」——月見台のまちを歩いているだけではちょっと見えづらいかもしれませんが、少し見上げて、ここに詰まっているそんな「新しさ」も感じていただけると嬉しいです。
■月見台住宅*ウェブサイト
https://tsukimidai.com/
■COOL JAPAN AWARD2025ウェブサイト
http://www.cooljapan.info/2025.html
サウナの内観はシンプル。外には「ととのい」デッキも用意しています