日本各地で増え続ける空き家や遊休不動産、人口減や高齢化といった社会課題。これらの問題の解決策と関連するのは、地域のくらしや経済、コミュニティの在り方、まちの将来像…ではないでしょうか。まとめて言うと、それ全体が「まちづくり」。誰もが「当事者」であり、行政だけが担うべきことではないのですが、ただ現実には、地域で「まちづくり」を担う人材は限られていて、多様なスキルや資源を持つ事業者や団体などが出会う機会も十分ではありません。個人の「思い」だけで解決できるものでもなく、「連携や協働がもっと必要…」と感じている人が増えています。つまりは、モノだけでなくヒトやコトをつなぎ、地域に根ざした仕事や交流の場をつくることが不可欠です。
7月13日に東京駅・八重洲の「POTLUCK YAESU」で行われた「まちづくりコネクション」。エンジョイワークスが運営する次世代まちづくりスクールの主催で、昨年12月に続いて2回目の実施となりました。このイベントは、社会課題を乗り越えるために、「顔の見える関係性」「前向きな出会い」を意図的に生み出す場として企画されたもの。単に企業が求人情報を出すだけでなく、参加者同士がビジョンや価値観を共有し、お互いの強みやニーズを理解した上で「共にまちをつくる仲間」としてつながっていく(協業相手となる)ことを目指しています。この「コネクション(つながり)」こそが、持続可能なまちづくりに欠かせないエネルギー源。新たな仕事が生まれ、事業が育ち、地域の未来が開けていく。今回はまちづくりに関わる多様なプロフェッショナルとして、エンジョイワークスを含めて全国から14社が会場に集結しました。
このイベントは、ただの交流会ではありません。地域の課題を自らの仕事として背負い、解決に挑むプロフェッショナルたちの「学び」と「共感」、そして「実践」が織りなす場です。国土交通省が創設した「地域価値を共創する不動産業アワード」の大賞受賞企業三社…エンジョイワークスと九州地域を拠点とするNPO法人福岡ビルストック研究会、小田原市の株式会社旧三福不動産(神奈川県小田原市)のほか、全国各地で空き家再生や不動産利活用、地域コミュニティの形成、建築設計や施工などに取り組む、実践型のまちづくり企業が出展。各社による事業プレゼンテーションののち、参加者たちが各事業者のブースで「直接話ができる」名刺交換タイムを設定しました。
メインスペースでは各社のプレゼン。その後、各社のブースなどでフリースペースで名刺交換をしながらコミュニケーションタイム
参加者からは「普通の就活イベントとは違って、まちづくりに関わるいろんな立場の人と話せた」「自分の経験がどう生きるかを考えるきっかけになった」「ここでの出会いが何かに繋がりそうな気がしてワクワクした」「プレゼンを通じて、当初注目していなかった企業にも関心が広がった」といった能動的な感想のほかに、「会社というより“人”に惹かれた」「実際にまちづくりをしている人と話せて、現場の熱量を感じられた」「仕事を探すというより、仲間を探す場という感じだった」「今後もつながりたいと思う人たちと直接コミュニケーションが取れた」といった声もあり、“人”とのつながり、まさに「コネクション」の意図を感じ取っていただけたようです。また、「まちづくりに携わる“仕事のリアル”を知ることができた」「業界横断で企業が集まっているのが面白い」といった感想もありました。
一般的には「求職(転職)のイベント」というと一方向の説明になりがちですが、まちづくりコネクションは“価値観でつながる仲間と出会う場”。出展者からは「イベントに参加することでほかの地域や事業などに関心をもつきっかけ・刺激になり、自分たちの活動を簡潔に伝えられるようまとめたいと思った」「いくつかの企業の方と、その深掘りをする機会を得ることができ、参加して良かった」「近い思いを持って各地で活動している方々と交流できて刺激を受けた」「今後つながっておきたい方とコミュニケーションを取ることができ、有意義な時間でした」「普段、同業他社と交流する機会がない中で、さまざまな角度からのまちづくりの考え方を聞けて面白かった」と、特に“刺激になった”“つながりが生まれた”という言葉が多く聞かれました。事業のビジョンや地域への思いを共有し、共に動き出す“実践の入口”になったようです。
登壇したのはNPO法人福岡ビルストック研究会/吉原住宅有限会社/株式会社スペースRデザイン、株式会社創伸建設、木楽ホーム株式会社、グッドルーム株式会社、株式会社ジーバー、MIKAWAYA21株式会社、株式会社エンジョイワークス、合同会社swan、山崎建設株式会社、株式会社アーキネット、バリューマネジメント株式会社、株式会社旧三福不動産、一般社団法人小岩駅周辺地区エリアマネジメントひととわ不動産(順不同)
まちづくりの現場は多面的です。物件や資金があっても、それを活かし切るための人材・ノウハウ・ネットワークがなければ、取り組みは空中分解しがち。逆に、意欲とスキルを持つ人材がいても、適切なプロジェクトやパートナーに出会えなければ、潜在能力は眠ったままです。だからこそ、「リアルな出会い」によるマッチングは不可欠。オンラインだけでは伝わりにくい人柄や熱意、相性が見えることで、信頼関係が芽生え、協働のハードルが下がります。
こうして具体的な協業や転職が進むことで、まちづくりは「点」から「線」「面」へと広がるのではないでしょうか。まちづくりは、一人ではできません。でも、“誰か”と出会えたとき、動き出す未来があります。だから今、地域には“出会いの場”が必要。この「コネクション」が地域を動かす一歩となることを期待しています。
主催の次世代まちづくりスクールウェブサイト
https://hello-renovation.jp/machi-school
2025/07/15
2025/07/29