青空の下にカラフルなガーランドが掛かり、人々の賑やかな声が混ざりあう。エンジョイワークスが各地で仕掛ける「マルシェ」のひとコマ。その場所は、空き店舗を再生した地域拠点や旧市営住宅、シェアアトリエ、塀のない分譲地などさまざま。そもそも「マルシェ」とは、フランス語で「市場」という意味ですが、日本では特に地元の生産者や作り手が集まり、食品や雑貨、手作り品などの販売やワークショップを行うイベントとして定着しています。例えるなら、人やものの出会いの交差点。新鮮な地元産品や個性的な手作り品(掘り出し物)との出会いや交流やイベント体験を楽しむ場、とも言えるでしょう。
私たちがなぜ「マルシェ」を実施するのか? もちろん、その場所(施設や拠点)を多くの人に知ってもらう「きっかけ」ではありますが、地域の方が自分の手仕事や小商いの出口(販路)として「場」を開いていくためという意義も。スモールスタートから開業への階段として、市場調査のような役割を持たせることもできます。つまりは、マルシェは「買い物」を超えた体験の可能性があり、ファンを育てる「コミュニティ装置」にもなり得るのです。そうした場を地域に開いていく。ここに意味があると考えています。
【①月見台住宅*マーケットイベント】
今月プレオープン(プレまち開き)した横須賀市にある月見台住宅。築60年超の市営住宅団地の再生を市から託された私たちが実施したのは、マルシェ(マーケット)イベントでした。「なりわい住宅」として、「住む・暮らす・働く(稼ぐ)」ができる場所にすることを目指しています。そこで昨年9月と12月、今年の4月と7月にマルシェを開きました。その目的は、入居を考えている方にお店のイメージを膨らませてもらうのはもちろんのこと、地域(地元)の方に、この場所の再生を知ってもらい、まちの“仲間”になってもらう・未来の賑わいを共有するという意味合いもあります。主催する私たちにとっても、掘り出し物がありそうな「マルシェ」をきっかけに、月見台住宅での取り組みを知ってもらえたら。そんな狙いも。
https://tsukimidai.com/
出店者との距離が近いのもマルシェの良いところ。数回のマルシェ(マーケット)を経て、この7月にプレまちびらきしました!
【②紀の川MIKASAKAN つなぐマルシェ】
一方で、マルシェを「ファーストゴール」とする事業もあります。和歌山県紀の川市にある旧旅館をリノベーションしたMIKASAKAN。カフェや宿泊施設、サウナを併設している地域拠点です。私たちが再生を手掛けたこの場所で今年1月から定期開催しているのが「こかわつなぐマルシェ」。市と協働で実施している地域活性化プログラム「紀の川ローカルビジネススクール」の実践の場として機能させています。地域資源を活用したビジネスアイデアの具体化を支援するもので、マルシェへの出店を通じて、事業の立ち上げを実践的に学んでいます。いきなりお店を開くのではなく、商品やサービスを対面でやり取りしながら事業計画をブラッシュアップさせていく。小さな挑戦の場として機能させています。もちろん、地域拠点として再生したMIKASAKANを多くの人に知ってもらいたい。人を集める、人が留まる、人が寄ってくる求心力・吸引力のある場所にしたいという思いもあります。毎月第2週目は「つなぐマルシェ」として定着しつつあり、人と人、人と場所、人とモノ…を「つなぐ」きっかけが生まれています。
https://kokawa.enjoyworks.jp/
https://mikasakan.com/ja/
近隣だけでなく、市外からの来訪も多く、「マルシェイベントの可能性、広がりはまだまだある!」と現地担当者
【③KIKI BASE FUJISAWA キキマルシェ】
もうひとつ、私たちの運営する施設に入居する事業者さんたちを「盛り上げ」て、さらにはその仲間を「増やす」ためのマルシェも。こちらは私たちの地元、湘南(藤沢市)にある「KIKI BASE FUJISAWA」。“町工場”をシェアアトリエ・シェアラボにリノベーションした施設です。町なかにひっそりと存在する工場は、実はクリエイターや芸術家、起業家、研究者が集まる実験基地。地域の方に、作業スペースやコワーキング拠点として“使える”場所であることをもっともっと知ってもらいたい。マルシェはその「入口」のためのもの。「近くに住んでいるので、どんな場所か知る機会になった」「おもしろい使い方ができそう」「コーヒーショップなどもあって、普段使いもできそう」…などなど感想もあり、その次のきっかけを提供できていると嬉しいです。
https://kikibase-fujisawa.com/
5月から毎月第4日曜日に定期開催。まずは地域の方にもっと知ってもらう「きっかけづくり」に
エンジョイワークスが目指すのは、まちを想う「暮らしのプレイヤー」が増えていく世界。マルシェは、誰もが一歩を踏み出せる「まちづくりの入口」として、場所の魅力と人の可能性をつなぎ、地域の未来に小さな灯を点します。手に取った商品や交わした会話、その場の空気すべてが、まちを好きになるきっかけに。そんな“好き”の積み重ねが、まちを動かし、やがて育てていく——そのはじまりに、マルシェがあればと願っています。
富山では私たちが手掛ける「エンジョイヴィレッジ」がマルシェ会場に。「なりわい暮らし」のイメージを膨らませてもらう狙いも https://www.instagram.com/enjoyvillage_official/