「団地って意外と“自分で手を入れていい空間”が残っているし、何より懐が深い。少しの工夫と哲学があれば、どこにだって豊かさは作れる。ここに越してきて、そう思っています」
団地は、戦後の「憧れの暮らし」を体現する近代的住まいとして登場し、核家族の新生活を支えてきました。やがて昭和の風景としてノスタルジーを帯びる一方、高齢化や空洞化が進み、静かな時間が流れる場所へと変化。近年はその余白や人との距離感が見直され、再生や創造の場として新たな可能性を拓いています。
“団地を愛する人を増やす。愛される団地を増やす”をミッションに掲げて、私たちが昨年から手掛けている「愛ある団地再生プロジェクト」。その第一弾となったのが、神戸市垂水区・明舞団地の一室。この物件の購入者(入居者)であるイラストレーターの香川和朗さんの言葉が、冒頭の一文です。「なぜこの物件に?」「なぜ団地?」「どんな暮らし方?」…香川さんのインタビューを通して、「愛ある団地」の可能性を紐解きます。(聞き手:エンジョイワークス事業企画部・萩原龍介、構成:ENJOYWORKS TIMES・佐藤朋子)
これが今回の団地再生の舞台、JR神戸線「朝霧」駅近くの明舞団地
近年、団地リノベーションが注目されています。間取りや内装デザインを刷新して、シンプルで柔軟な空間を作っていく。多様なライフスタイルに対応できる自由度も魅力です。「愛ある団地再生プロジェクト」は、これを踏まえつつ、遮音・断熱といった住宅機能を高めて、持続可能な住まいを市場に提案していくということにも重点を置いています。さらにもう一方では、不動産事業者が買い取りをして、リノベーション後に販売する「買取再販」の仕組みを循環させるという側面も。これらさまざまな要素を絡めた「団地再生の可能性を拓くチャレンジ」でもあるのです。そこで、私たちの挑戦の第一弾の“お客さま”である香川さんに、物件を引き渡してから初めて、その住まいを訪ねてみました。
まず心を奪われたのは「モノが少ないのに、寂しくない」という空間の印象。整然と配置された必要最小限の家具と、静かに存在感を放つ小物たち。その佇まいは、まるで洗練されたホテルのようです。ひときわ目を引くのは、リビングと洋室に設置された2つの照明。そして、テーブルと椅子、ベッドにローチェア。いずれも1点1点、自分で丁寧に選んだパートナーのような存在だと言います。「こだわり」という簡単な言葉で表現するのは申し訳ないくらいで、無駄を削ぎ落とした空間は、まさに「最小の美」。本当に必要なものを置く「引き算の暮らし」を体現しています。
物を多く持たない生活。その代わり食器やインテリアなどの1点1点にこだわりを集中
香川さんが「引き算の暮らし」を選ぶきっかけとなったのは、意外にも引っ越しのアルバイトだったとか。東日本大震災の頃、イラストの仕事と共に、ダブルワークで引っ越しの現場に。ある日、一人暮らしの2LDKから溢れ出る4トントラックの荷物を目の当たりにし、「モノってなんだろう?」と深く考えるようになったと言います。その思索の末、たどり着いたのは「今、この瞬間を楽しむ」という悟りのような境地。そのために「“いらないもの”は極力減らすべきだとマインドが変わった」と。一緒に暮らすパートナーとともに定期的に「いらないモノ会議」なるものをしていて、これまでに手放したモノは、自転車、テレビ、車、掃除機などなど。香川さんからは「掃除は、ほうきとクイックルワイパーで充分ですよ」と、ちょっと達観した言葉。本当に必要なものだけを選んで、持たないことで心と身体に少し“余白”が生まれる。生活する空間は広ければ広いほどいいというものではなくて、実は団地って人が程よく手が届く「ちょうどいい」と思えるサイズなのかもしれません。
神戸・朝霧が持つ「光」と「余白」。団地購入の決め手は?
香川さんがこの団地空間を気に入って入居を決めた背景には、暮らしの哲学だけでなく、「まち」への視点も大きな要素だったようです。実家のある千葉県で両親を見送った後、広すぎる家を持て余し、自由度の高い物件を探し始めたのがきっかけ。そして偶然、(神戸市垂水区にある)朝霧の団地が目に留まったのです。「URの賃貸物件で、DIYで自由にいじれるのが面白そうだったし、家賃も手頃。この『朝霧』という地名にはあまり馴染みがなかったけど、来てみてびっくり。駅を降りてすぐ、“明るさ”に包まれるような感覚があったんです」。その「明るさ」とは、単に日当たりのことだけではなく。道幅の広さ、空の広さ、そしてまち全体の“余白”のこと。神戸市西部、山と海に挟まれた静かな住宅地・朝霧は、香川さんにとって特別な場所になっていました。「神戸の他のエリアにはない魅力があると思います。ストンと広い道が抜けていて、視界が開ける。海だけでなく空も近いし、なにより静か。まちに、ちゃんと呼吸できる隙間がある。それでいて生活に必要な病院・食品スーパー・スポーツジムも充実している団地だからこその住環境。かつ心が整う場所だなと思っています」
そんな雰囲気に惹かれてこのまち(の別物件)に住み始めた香川さん。ただ、当初は仕事へのやる気が起きず、ふさぎ込んだ時期もあったといいます。これからの人生設計に悩んでいた時、パートナーからの一言が転機となりました。「ギャラリーみたいな家で、過去作品の展示会をしながら、ゆっくり新しい絵を描くのはどう?」。拠点を変えることを考えて物件探しを再び始めたものの、「やっぱり朝霧を離れたくない」という気持ちもありました。そんななか、彼女がスマホで見つけたのがこの明舞団地の物件でした。内見したその日のうちに「ひとめ惚れしたから買います」と購入を決意。自身の「引き算の美学」をさらに具現化できそうな場所―という直感でした。
団地暮らしのリアルとプレミアムな価値
再生前の「2DKの空き物件」だったら購入していたか? 香川さんが求める生活の「余白」はイメージできなかったかもしれません。リノベーションによって南向き1LDKという空間に変え、白と木目を基調としたミニマルな内装デザインに。さらに団地の弱点である断熱性や遮音性も改善することをテーマに設計しており、そこにどれくらい価値を感じてもらえるか? 「愛ある団地」はその挑戦でもありました。
「作りこまない」リノベも特徴のひとつ。手を加えすぎない、可変性がある…そのあたりもこれからの団地再生のポイント
ただ、この物件は、エレベーターのない4階。これも団地特有の課題であり、私たちは購入の懸念材料と想定していましたが、香川さんは、「エレベーターがないことは全く気になりません。むしろその分、エレベーターのメンテナンス費が不要なので建物全体の管理費・修繕費が安い。そもそも朝霧は坂が多いので、歩くことが好きな人はすぐに慣れると思います」と、現実的かつ冷静な分析。「そんな考え方も」とハッとさせられました。さらに、フルリノベーション物件が1000万円台(当物件は1280万円)で購入できるというコストパフォーマンスの高さも魅力だったと話してくれました。そして、団地ならではのプレミアムな価値として、香川さんはこう続けます。「住んでいる人の年齢層が高いからか、マナーを守る意識が高い。 “人を思いやる気持ち”を持った穏やかな方が多く住んでいるように思います。管理組合の理事長も気さくな方で、『今度、似顔絵を描いて―!』と頼まれました」と、物件や立地だけでない団地暮らしの程よい機微も感じられているようです。
この団地に居を移して数カ月。日々を丁寧に暮らすことに集中しているという香川さん。朝、洗濯をして自炊し、晴れた日にはお弁当を持って大蔵海岸へ行くのが日課だとか。築50年を超える明舞団地に流れる、ゆったりとした時間。それは、モノを減らした先に広がる「光」と「余白」に包まれた暮らしです。
丁寧に再生された住まいは、アイデアと哲学次第でいくらでも“自分だけの居場所”になり得る。自分の理想の生き方を実現するための「舞台」。光と余白に満ちた一室が示すのは、古い団地を“もう一度住みこなす”という未来。私たちも明舞を起点に全国へ、新しい集合住宅の物語を育てていこうと思っています。
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株式会社エンジョイワークス
不動産特定共同事業者[金融庁長官・国土交通大臣 第114号]
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2025/06/24
2025/07/01