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駅前からまちを変える。「いこみなチャレンジ」スタート/自治体共創CASE⑭奈良県生駒市

自治体共創 公開日:2025/06/03

あなたの住んでいる場所の「町の顔」ってどこですか? 駅前はまちの第一印象を決める「顔」のような存在です。人が行き交い、日々の暮らしの始まりと終わりが交差する場所。そこが活気を失うと、まち全体の印象や活力にも影響が及びます。かつて地域の経済や交流の中心だった駅前商店街がシャッター通り化している事例は、全国の共通課題。人口減少と高齢化、車社会による郊外型商業施設への人流のシフト、そして核となる大型店舗の撤退などが主な要因です。さらに再開発の遅れやオンライン消費の拡大も重なり、人が集う場としての機能が薄れています。その一方で、近年は駅前を再生しようとするエリアマネジメントや官民連携の取り組みも各地で進められていて、「再挑戦の舞台」として駅前を位置づけ直す動きも広がっています。

奈良県の北西部、大阪・難波から電車で約20分という距離にある生駒(いこま)市。関西都市圏のベッドタウンとして発展してきたまちです。山々に囲まれた自然の風景と、都市的な利便性を併せ持つこの地域は、住宅地として高い人気を誇ってきました。しかし、人口減少と少子高齢化の波は、生駒にも例外なく押し寄せています。とりわけ、市の玄関口……いわゆる“顔”となる近鉄・生駒駅周辺の市街地では、商業施設の機能低下や歩行者の減少、空き店舗の増加といった課題が顕在化しています。

地域の担い手と動き出す“いこみな”

こうした背景を受け、生駒市では「まちを人の手に取り戻す」ような新しい取り組みを始めています。その一つが、「生駒駅南口みらいビジョン」を核とした、地域参画型のエリアマネジメントの推進。これは、行政主導のまちづくりから一歩踏み出し、地域住民・民間事業者・市外の関係人口を巻き込みながら、持続可能な都市空間をつくり出そうとするものです。まちの可能性を市民自らが再発見し、その場に新たな価値を生み出していく——そんな意思が、少しずつ形になりはじめています。

写真左は1970年代の「ぴっくり通り」。店が立ち並ぶ商店街も活気があった。写真右は現在の様子

門前町として栄えた駅南口エリア、通称「いこみな」では、空き店舗を活用したチャレンジショップの展開、小さな事業者の出店支援、公共空間の活用実験など、地域の担い手が主体となったプロジェクトが動き始めています。例えば、空き店舗に子ども服を扱う店や花屋が開業し、地元の人々や訪れた人にとっての“まちの居場所”が再び息を吹き返そうとしています。

「生駒駅南口いこみなプロジェクト」ウェブサイト https://ikomina.com/

そうした動きの次なるステップとして、生駒市とエンジョイワークスがタッグを組んで「事業者育成型公募」を実施します。生駒駅南口前市街地の空き物件を活用しながら、地域とともに育つ事業者を発掘・支援することを目的とした生駒駅南口エリア事業伴走プログラム「いこみなチャレンジ」です。重要なのは、単に出店することがゴールではないという点です。このまちで「事業を始めて」「続けていく」。その両方に寄り添い、立ち上げから成長までを伴走する支援体制を整えています。

まちの多様なプレイヤー(専門家、起業の先輩)をメンターとして招き、事業展開のノウハウや計画策定、建築・デザインなどの個別アドバイスが受けられるのも特徴です。さらに、実際の物件候補も用意しています。木造アーケードに連なる町家、たった5坪の路地裏物件、市民の足「ケーブルカー」の駅まで40歩の角地テナント、ピロティが2階の昭和レトロビルなど、一見ただの「空き物件」も、視点を変えると唯一無二のポテンシャルを秘めています。そこで何ができるか?を妄想するところから始めても構いません。起業したい、物件を見つけたい、事業を育てたい——そんなチャレンジを後押ししていきます。

ちょっと癖があるかもしれないけれど、見方を変えれば面白いかも…(対象物件の一部)

エンジョイワークスの手掛ける自治体との「事業者育成型公募(事業伴走プログラム)」の事例についてはこちら
【「事業者を育成する?」まちづくりのプレイヤーを育てる仕組みとは/自治体共創CASE⑤全国で展開、事業者育成型公募】
https://enjoyworks.jp/times/041/
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全国各地のまちが似たような課題を抱えるなかで、生駒市が目指すのは、事業者と地域がともに学び、ともに育ち合える場をつくること。これから始まる公募は、その一歩を踏み出す方に向けたもの。このまちに関わってみたい、何かを始めてみたい、自分の事業を通じて地域とつながりたい。そんな想いを持つ方にとって、ちょうどいいスタート地点になるかもしれません。「ともに」つくる、まちのこれから。その一歩をお待ちしています。

7月には現地とオンラインの説明会を実施予定。事業構想の書類選考の後、伴走支援を受けながら12月に公開プレゼンテーションを行う予定です。

生駒駅南口エリア事業伴走プログラム「いこみなチャレンジ」ウェブサイト
https://ikomina-challenge.jp/

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