富山県射水市。「いみず」と読みます。“天然のいけす”と言われる日本海側有数の漁場・富山湾の西の玄関口にあたる港町。古代の人々が水の湧き出る様子を表す言葉「イ」と「ミズ」に由来し、自然の水の豊かさを象徴しているとされています。これは農業・漁業の発展にもつながっており、沿岸部の新湊漁港は県内一を競う水揚げ量で、「富山湾の宝石」とも呼ばれるシロエビにホタルイカ、ベニズワイガニ、ブリ（寒ブリ）…と、多様かつ高品質な魚介類が豊富。まさに「おさかな天国」な町、射水。
まさに水の恵みに囲まれた町。北陸新幹線が停車する富山駅から電車で10分、車では30分の距離
新湊漁港を中心とした歴史的な港町「内川エリア」は、水産業と観光業が融合した独自の地域産業圏があり、美しい運河や伝統的な町並みは「日本のベニス」と称されているほど。観光資源として高い価値がありますが、景観保全と観光振興のバランス維持が課題となっています。また、2005年の合併で農村部と漁港町が一つの市となっており（新湊市・小杉町・大門町・大島町・下村）、旧市町村それぞれ、人口減少と高齢化は共通の課題なのですが、その内側を見ると、観光客は増えても、地域の定住人口は減少傾向にあり、いわゆる「観光依存型リスク」が顕在化しつつあるようです。
移住や新規出店をはるかに上回る速度で空き家が増加していて、観光地として注目されながらも、地域としての維持にも課題が。行政（射水市）もまた、そうした現状に対して強い危機感を抱いています。そこで、「価値ある内川をどのように未来へつないでいくべきか」をテーマに、市は 内川エリアのブランド価値を向上させるため「内川未来戦略会議」を立ち上げて、地域内外の専門家・プレイヤー11人と共に議論を進めています（エンジョイワークスの福田もその一人）。
この会議では昨年度計7回の議論で、こうまとめています。「現状は、この景色でしか内川の魅力が伝わっていない。内川にある『なにか素敵だね』という雰囲気は漁師町の風情、営みが生み出してきたものであり、ここにしかない風土的価値・文化的価値。内川で残すべき、守るべき景観とは建物ではなく情景である。その情景は住んでいる人（漁師町で暮らす人々）がいないと成り立たない」――と。漁業や漁師の暮らしと生活者・消費者の接点がなく、この町特有の漁業文化を体験できる機会が足りていないといった課題も浮き彫りになりました。
「わざわざ暮らしたい奇跡の湊町、内川」。これは、この会議が示した“価値を未来に紡いでいくため”のヴィジョンです。こうした動きを背景に、新たなプロジェクトが始まろうとしています。それが、「AKAMA富山」。内川の運河沿いにあるかつての番屋（漁民の作業小屋）をリノベーションし、“漁泊”をコンセプトにした宿泊と地元の漁業関係者や料理人と連動したプログラムなど、“内川らしい体験”を組み合わせた新たな地域事業です。
プロジェクトリーダー、赤間遼太さんのインタビュー記事→ ＊前編 ＊後編
運河沿いに生活の営みがある内川。水辺の向こうに立山連峰を望むロケーション
「多くの観光客が日帰り訪問に留まり、観光の客足を経済発展に活かしきれていない」。それならば、この情景の中心に、人が泊まり、暮らしを感じる場所を作りたい。地域の魅力を効果的に伝える宿泊施設を――。運河を目の前に体験コンテンツを詰め込んだ事業がいま、走り出しています。
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プロジェクトの開始に合わせて、現地でトークフォーラムを企画しました。「内川戦略会議」で描かれたヴィジョンを具体化する「AKAMA富山」の取り組みを紹介しながら、地域の持続性を支え、次なる挑戦へと連鎖していくヒントを共に考えていきます。
【内川のこれからを考える、新しい関わりのかたち ─地域とつながるAKAMA富山の取り組み】
■イベント概要
https://hello-renovation.jp/news/detail/26507
開催日時：2025/6/2（月） 1部18:15～18:45／2部19:00～20:30
参加費：2,000 円
会場:
1 部／AKAMA富山予定地（https://maps.app.goo.gl/12peDf97gnWMJbnn9）
2 部／クロスベイ新湊（https://maps.app.goo.gl/Cph7VvXVc91etgZM8）
■登壇者（順不同）
牧田和樹氏(一般社団法人射水市観光協会会長)
高木新平氏(株式会社ニューピース代表)
福田和則(株式会社エンジョイワークス代表)
赤間遼太氏(合同会社ひと・いき代表)
明石博之氏(グリーンノートレーベル株式会社代表)
加治幸大氏(北陸ポートサービス株式会社代表)
■当日スケジュール
1 部：AKAMA富山予定地
18:15～18:45 AKAMA富山現地紹介
2 部：クロスベイ新湊
19:00～19:40 未来戦略会議の背景とヴィジョン共有
登壇者：牧田和樹氏、高木新平氏、福田和則
19:40～20:10 未来戦略会議からみた AKAMA富山について
登壇者：赤間遼太氏、明石博之氏、加治幸大氏、福田和則
ファシリテーター：高木新平氏
赤間さんが手掛けた宿泊と飲食の複合施設「AKAMA鎌倉」（上記写真）。古い民家をリノベーションしたプロジェクトの第二弾が「AKAMA富山」
