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秋谷テラスという「場」が教えてくれたこと。DIY実験場から次の持ち主へ

Column 公開日:2025/05/20

それは2019年ごろのある日のこと。親交のある地元の不動産事業者から紹介された物件がありました。エンジョイワークス代表の福田が実際に足を運んで、その場で即決。場所は横須賀市西側に位置する秋谷。のちに“秋谷テラス”と名付けられた場所です。「海と空、山と緑に囲まれた特別なロケーションで、そこだけ時間が緩やかに流れているような感覚だった」と言います。当初から商売として“商品化”するつもりはなく、即決というのも珍しかったそう。スペックや利便性といった不動産の常識では測れない、時間と人を育てる力を感じたのです。

次のアクションは、社員総出のDIY。ともに手を動かし、汗をかきながら場をつくる——そんなプロセスそのものに価値があると考えていました。実際、多くの社員が関わり、床を張り、塗装をし、ひとつひとつの空間をつくり上げていったのです。DIYの実験場として、試行錯誤を重ねながら、自分たちが場を育てていく。コロナ禍というタイミングでもあったのですが、そのプロセス自体が貴重な体験でした。DIYそのものが目的ではなく、本質は「場の作り方」と言う学び。ちょうど、社員が少し増えた時期で、「みんなで作業する」ことが、いわゆるチームビルディングのような役割も果たしていました。

数部屋の和室をワンフロアに。慣れない作業も教え合いながら、コミュニケーション

DIYの様子はYouTubeの「ENJOYWORKS CHANNEL」で公開中
動画ではまず草刈りから始める社員の姿が…

DIYと言っても、和室の畳をはがし、スケルトンの状態にして基礎を補強し、ウッドデッキを作り…と大がかりなリノベーションの領域。社内に建築設計部がある強みを活かせる自社プロジェクトでもあったのです。事業企画部や施設運営など「家づくり」の現場からちょっと遠い部署のスタッフにとっても面白い体験だったようです。完成後の「秋谷テラス」をどのように使ったか?と言うと、エンジョイワークス流の“迎賓館”のような場所に。大切なゲストを迎え入れ、社員とともに夕陽を眺め、木々の音に耳を澄ませ、時にはサウナを楽しみながら語らう。深く濃密なコミュニケーションの場となっていったのです。新しくジョインしたメンバーにとっては、秋谷テラスは「エンジョイワークスらしさ」を体現する空間でもあったのです。

建物の価値を再構築する。まさにその実験場として機能していた秋谷テラス。社員たちの物件再生の解像度も上がった取り組みでした

不動産の価値は、築年数や広さ、設備のスペックで語られがちなのですが、秋谷テラスは“住まい”であると同時に、「数字では測れない価値」のある場所。一緒に時間を過ごした人たちの記憶、DIYの過程で積み重ねた手仕事の温もり、自然と対話する中で生まれる創造力。そういったものが、秋谷テラスの価値を形作っていたのです。時に、代表の福田が料理をふるまうことも。「社員やゲストと過ごした時間が特別でした。場の力ってこういうことなんだな」と振り返ります。

物件を取り囲むように作ったウッドデッキ。ここからの相模湾の眺めは特別!(ドローンで見ると、まさに山中の「ポツンと一軒家」の様相)

そして今、この場所は次の持ち主のもとへ旅立とうとしています。手放すことに迷いがなかったわけではないのですが、単にロケーションだけでなく、場の力を理解し、大切にしてくれる人に出会え、バトンタッチすることになりました。ここを育てた時間、そして受け継がれていくこと。そのすべてが、私たちエンジョイワークスにとってかけがえのない財産となりました。不動産は、ただのハコではない。そこで過ごす時間、人とのつながり、何をするかという想像力──そうした目に見えない価値こそが、住まいであり、場づくりの本質なのかもしれません。建物のスペック以上に「生まれるもの」に目を向けてくれた次の持ち主にとっても、「かけがえのない場所」になること、そしてまた新たな物語が育まれていくことを、心から願っています。

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