現在は住民がおらず、あるのは昭和の長屋。駅からは細い坂道…そんな場所に人が集まるのか? 立地や条件「だけ」を見るとちょっと不安になりそうですが、蓋を開けてみると――。これは、私たちが手掛けている横須賀市の旧市営田浦月見台住宅のプロジェクトのことです。1960(昭和35)年に市営住宅団地として造成。市は人口減や老朽化もあり計画的に入居募集を停止したものの、“その後”の活用に頭を悩ませており、不動産的には「塩漬け」の状態でした。その再生に手を挙げたのがエンジョイワークス。ヴィンテージ&クリエイティブというコンセプトのもと、建物をリノベーションしながら「なりわい住宅」として入居者を募り始めたのが昨年7月。店舗や作業場、活動拠点+住まいとしての活用に共感してくれる方々が現れ、52戸のうち、この4月で約7割の入居が決まっています。
「月見台で何か始めようとしている」ということは、市内外に少しずつ知られているようですが、どんな町になるのか…もう少し(事業の)顔を見せることも必要で、かつ入居者さんにも現地での「なりわい」の解像度を深めてもらうために企画したのが、「月見台スプリングマーケット」。これから「月見台住民」となる方々が中心となって出店するマルシェを、桜が満開になった4月6日に開催しました。
二つとして同じお店がないというのも特徴。「月見台だから」のチャレンジジャーたちの笑顔も印象的
当日は、コーヒー焙煎所&カフェ、焼菓子店、トルティーヤ店、ローフードカフェ、地元食材のおにぎり屋、セレクトショップ、アンティークショップ、工芸品ギャラリーショップ、古着屋、インテリアDIYショップなどなど、約30店が入居住居のスペースを使って出店。小雨で花冷えの天候ではあったのですが、近隣の住民や出店者のご友人、これから入居を考えている方など約250人が訪れました。ECサイトの「お取り寄せ人気店」の商品はオープン1時間程度で売り切れ。コーヒー店は行列も。来場者のみなさんはお店を“はしご”しながら楽しんでいたようです。
*「小商い」に関するメールマガジン記事はこちら
https://enjoyworks.jp/times/160/
*特徴的な賃貸物件を集めたウェブサイトでも取材していただいています
( 「ワクワク賃貸」小商い賃貸推進プロジェクト )
https://www.wakuwakuchintai.com/koakinai/kakn_012/
月見台を知ってもらうことももちろんですが、もう一つ、別の目的も。それは、入居者さんたちのコミュニティ醸成です。住民ゼロから新たに町を作る中で、当然ながらみなさん「はじめまして」の関係。なりわい住居の入居者という共通項のお隣さん同士、一緒に町を作っていく仲間でもあるのです。特に1期はその下地作りが大事。入居希望者による交流イベント(昨年11月実施)を機に、SNSなどでの交流が生まれているようです。そしてこのマーケット企画が、リアルなコミュニケーションの場に。片付けを手伝いあったり、お互いのお店を行き来したり、気付けば入居者さんたちの笑い声も。自然と楽しい輪ができていました。
昭和にタイムトリップしたかのような雰囲気。まち再生の息遣いが聞こえてきます
スモールチャレンジの場。月見台のプロジェクトで念願のお店を立ち上げたり、事業を拡大したり、副業を専業にしたり。ジャンルやきっかけは違っても、挑戦する仲間がいるのは心強いもの。自分だけでなく他の入居者さん・地域の方々・お客さん・自治体の「ワクワク」を乗せて、田浦月見台の「まち再生」がいよいよ始まります。
*1期入居者の開業は7月ごろから順次、全体オープンのイベントは月がきれいに見える10月ごろを予定しています。