「地方創生」 「地域活性」―このワードを聞かない日はありません。そのために、誰が何をやるのか。自治体は町が抱える課題の整理や「自治体ができること」を模索しているかと思いますが、体系的な視点が生まれづらかったり、そもそも「まち」再生・活性のノウハウを持っていなかったり。その自治体に合った施策や戦略とはなにか?行政の枠内で挑戦するのは難しいようです。そこで総務省は、人口減少や市街地の空洞化などの地域が抱える課題に対応するため、民間事業者や団体など外部の専門家を配置する「地域力創造アドバイザー制度」を2015年から始めました。通称、地域人材ネット。地域資源の活用や活性化に関する専門的な支援を行う「アドバイザー」は現在、全国で約600人。エンジョイワークスではすでに、事業企画部の松島孝夫が認定を受けて活動していますが、この春、もうひとり同部の彼末茂樹もアドバイザーのリストに仲間入り。ひとつの事業者で2人の登録というのは珍しいようです。全国の事業者や自治体の課題解決に日々飛び回っている彼末に、地方の「まち」で民間事業者としての「風の吹かせ方」についてインタビューしました。(聞き手:ENJOYWORKS TIMES 佐藤朋子)
――アドバイザーに認定登録されるには、自治体からの推薦が必要です。今回の経緯を簡単に教えてください
この制度自体、申請のハードルは少し高くて、地域活性化に関する知見やノウハウを有しているという以外に、これまでの自治体との連携実績も重要です。「事業者育成型公募」やエリアリノベーションなど、これまで約20の自治体と関わらせていただいていて、現在も複数の事業が進行しています。そのひとつ、群馬県と館林市に推薦いただいて、この4月に登録されました。
地域力創造アドバイザー制度についてはこちら(総務省ウェブサイト)
https://www.soumu.go.jp/ganbaru/jinzai/index.html
自分自身、自治体の職員と直接、ざっくばらんに話す機会も多いのですが、地域活性のノウハウに加えて、外部人材確保の予算にも頭を悩ませているようです。民間事業者と組みたいけれど、「誰が」 「何を」 「どうやって」を整理する手段が乏しく、さらには財政面も考えると、“トップダウン”とはいかず、スピード感が落ちてしまう。地域力創造アドバイザーは、その「頭脳」として活用できる外部の専門家。登用に関しては、総務省から経費の交付があるので、自治体は立て替えの予算承認のみでスムーズに進められるというメリットもあると思います。
アドバイザーの取り組み内容にはいくつか分類があって、①「まち」の魅力の維持・向上 ②「ひと」の流れの創出・「ひと」を育てる ③共通基盤、横串の手法・取組の3つ。これをさらに分けると12の項目。私は「まちなか再生」の中心市街地活性化、空地・空家・空きビル・空き店舗等対策、商店街活性化や「観光振興」の民泊・農泊、「地域づくり人材の育成・教育」では人材育成、「自治体経営イノベーション」の官民連携(PPP/PFI)、住民参加を専門分野として登録しています。
――地域再生や不動産領域を「仕事」として手掛けるようになったきっかけは?
大学で建築を専攻したのですが、これはちょっとミーハーで、設計士が主役のドラマを見て。それと、ポストモダン建築を代表する建築物の一つとして国際的に知られている、表参道のスパイラルビルに行った際、公共の空間の構造に感動して意匠を学びたいなと思ったんです。ただ、当時から新築にはあまり興味がなく、「今あるものを再生するには?」という視点のほうが大きくて、その次に専門学校で学んだのがインテリア。卒業後は不動産業界に長く居たのですが、マーケットシェアの奪い合いのビジネスとは違う場所で経験を活かしたいなと思って出会ったのが、エンジョイワークスでした。地元の湘南で建物やエリアの価値を再構築している「おもしろい会社」だなと言う印象で、可能性を感じました。
入社して約4年になるのですが、最初に手掛けたのがUR都市機構との事業(日本橋横山町・馬喰町エリアの遊休不動産を活用し、アイデアのある事業者を募集し、チャレンジを支援する「さんかくプログラム」 )でした。このほかに思い入れがある自治体での事業は、三重県南伊勢町の空き家対策事業。町の空き家バンクを機能させるため、担い手(空き家再生プロデューサー)を育成し、行政との連携や発信、物件再生と活用の体制を構築しました。いまは、地元のプレイヤーが運営の主体となっていて、私たちから「卒業」して育っています。数カ年伴走していると、そういう部分も感慨深いですよね。民間企業との事業も「エリア」の活性に紐づくことが多く、宮古島での古民家再生や空き地利用のプロジェクトでは、出資を機会として地域課題を整理して「共感投資」を連続的に作っているところです。
空き家視察ツアーやワークショップ、自治体向けのイベント登壇など、現場のリアルやノウハウを伝えるべく奔走
――では、事業企画部のプロデューサーとして、意識していることを教えてください
日々の業務は、企業や自治体の課題を聞き取って、自分たちが持っているソリューションで何ができるかを整理することがメイン。1年の1/3くらいは出張で飛び回っています。各地で話を聞いていて分かったのは、地域ごとに課題感が違うし、人口や土地の文化・歴史、メインとなる産業なども異なるということ。これらを吸い上げていく難しさはありますが、聞き取りの中で大切にしているのは、エリアに対するプライドをどう引っ張るか? という点。「昔は良かった」という回顧ではなくて、地元に対する誇りからモチベーションを引き上げていくための「会話」も意識しています。その前に、webだけでなく自分でも現地の資料館に足を伸ばしてみたり、歴史や土地の成り立ちに詳しい方などに話を聞いたりしているのですが、「まちの現状を知る」ということに貪欲でいようと思っています。
エンジョイワークスの強みは、社会課題に対するソリューションを地域ごとにカスタマイズして提供できるということ。「中の人」から一歩引いて整理することも大切で、客観的な立場で在りつつ、入り込みながら、地元のプレイヤーや自治体の役割を整理していく。そんな人材として、これからも全国を駆け巡っていきます。
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「地域プレイヤーの育成、エリアや一つのまちを再生していくプロセスに携わる中で、仕事の幅が広がった。現場に行くワクワク感がモチベーションかな」と語る彼末。取材中もある県の担当者からの相談の電話が。「(自治体職員を含めて)現地の人と関わる中で、人間関係を築くことが大事だなと感じています。ポロっと向こうの本音が出たり、その会話から自分がつなげられるソリューションが思い浮かんだりすることもある」とのこと。私たちも、地域課題に併走する人材(アドバイザー)を有する企業として、地域・人との関係性を育てながら、地方の未来を一緒に描いていきたいと思います。
■地域力創造アドバイザー、松島孝夫の取材記事
地域力を高める「人材」が、課題解決に併走する!
https://enjoyworks.jp/times/030/