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“つながり”を育むプレイスメイキング。マルシェ運営から見えてきたエリアリノベーションのカタチ

Column 公開日:2025/03/25

人ってどうすれば集まるのか? これは、まちづくりやまちの活性における「悩みの種」ではないでしょうか? 一時は賑わいのあった商店街や目抜き通りが廃れてしまった、観光スポットがあっても通過されている、市外町外への人口が流出している…などなど、人の流れが変わったことには何かしら理由が。これに有効な打開策があるのか? 国内のどの地域も抱える課題でしょう。

人通りが少なくなり、衰退したまちでも、工夫次第で新しい価値を生み出し、活性化できる可能性があるのではないか? それには、まちを再評価して、適切なコンセプトを作ることが重要になっています。そんな事例の一つになりそうなのが、私たちが根を下ろして取り組んでいる和歌山県紀の川市での「エリアリノベーション」。特定のエリアで空き家や空き店舗などを活用して、まちの価値を高める取り組みです。私たちがこの町に関わり始めたのは3年近く前から。まずは、空き家をシェアハウスにリノベーションするところからスタートし、その次に手掛けたのは、大正期創業の元旅館(三笠館)の再生。昨年6月、地域拠点・カフェ・宿泊施設・サウナ…などにリノベーションして「MIKASAKAN(https://mikasakan.com/ja/)」の運営がスタートしました。インバウンドを含めた旅行客の滞在拠点として、地域の方が寄り合えるコミュニティスペースとして、若い世代も気軽に立ち寄れるカフェやワーキングスペースとして…ちょっと盛りだくさんのターゲットですが、この町に今までなかった場を、「あるもの(空き物件)を活用して創出していこう」。そんな第一歩を踏み出しました。

増築などで4棟あった建物を減築、宿泊棟と地域拠点(カフェ)+サウナ施設に。その間のスペースはマルシェなどで活用できるフリースペース。MIKASAKANスタッフは(右写真の左から)小川・三宅・和田の20代の若者たち

何と何を、誰と「つなぐ」?

場所を作れば(使いやすく再生すれば)完了…と言う訳ではないというのは、私たちも十分に承知しています。その次のWORKS(仕掛け)が「人をつなぐ場づくり」。昨年10月に市ともタッグを組んで、空き家・空き店舗を活用した事業化をサポートするプログラム「ローカルビジネススクール」をスタートしました。地元で事業を展開する「地域プレイヤー」の候補者を集めてボトムアップしていくプログラムです。

昨年10月から市と共催で進めている「ローカルビジネススクール」。“地域でやりたいこと”の実現に向けて座学も。講師はエンジョイワークスのプロデューサー、彼末茂樹

その「実践」の場が、マルシェ。地域の方々が主役となり、自分らしい商品づくりや出店に挑戦できる場所として、私たちがそのフィールドを用意しました。それが「こかわつなぐマルシェ」。かつて賑わいを見せた粉河のまちで、人を呼ぶ場にしたい――。初開催(昨年12月)は粉河駅のロータリーで。2回目以降、毎月第二日曜日にMIKASAKANのオープンデッキを会場に、ビジネススクールの参加者だけでなく、「マルシェ」の場を求めている市内外の人まで毎回、出店は20近く。来年度も3月まで開催が決まっていて、少しずつこの場が定着してきています。

参加者も出店者も笑顔に。1月のマルシェの様子(撮影:藤田智也)

「プレイスメイキング」。これは、人々が集まり、交流し、魅力を感じる「場所(プレイス)」をつくる手法のことです。単なるハード面(建物や広場の整備)だけでなく、地域住民や関係者が関わりながら、持続的に活気ある公共空間を生み出すことを目的としたもの。そんな空間を目指しているのが、MIKASAKANの「こかわつなぐマルシェ」なのです。人と人・人と場・人と町・人とモノ、町と町をつなぐ…そんな拠点となることが理想。その先に、小さな地域活性がポツポツと生まれていく。これが「エリアリノベーション」で生み出される「つながり」なのです。

例えば、シャッター街と言われる商店街も、空き店舗にお店が入れば課題が無くなる…のではなく、その次の「つながり」がないと、テナントの出入りだけで終わってしまい、エリア(面)に人やモノが行き来する好循環は生まれません。この事業は自治体(紀の川市役所)ともタッグを組んだ民間主導+行政の後押しとスモールスタートでの成功事例を創出、エリア全体を点ではなく面で考えて価値を上げる視点…と目的は盛りだくさん。それだけに「マルシェ」の場に可能性が詰まっているということ。回を重ねるにつれて、市内外の方にこの場所を知っていただく機会も増え、MIKASAKANに立ち寄るお客さんの年齢層も幅広くなっています。「つながりの場を育てる」。地域の可能性を今後もここから発信していきたいと思っています。近くにお寄りの際は、のぞいてみていただけると嬉しいです。

*「粉河まちづくりプロジェクト」Instagram
https://www.instagram.com/kokawa_renovation/
*「MIKASAKAN」Instagram
https://www.instagram.com/mikasakan.kokawa/

マルシェ会場には、DIY担当の三宅によるテーブルも。古材の活用も「つなぐ」取り組みのひとつ

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