鎌倉市由比ガ浜。私たちエンジョイワークスの本社がある町です。私たちのオフィスは、ビルの一室などではなくて、店舗などをリノベーションしたもの。現在の本社は布団屋さんの2階にあった倉庫スペース、そしてもう一カ所、社員がワーキングスペースとして使っている「HOUSE YUIGAHAMA(通称:HOUSE)」は元・魚屋さんの建物。オープンしたのは約10年前。それにはこんな経緯がありました。
当時のこの場所(由比ヶ浜大通り)は、インバウンドの観光客などが行き交う今よりも少し静かで、シャッターの閉まった商店街。空き店舗も点在していました。ただ、商売を畳んでも店主が住居として暮らしているケースも少なくなかったのです。通りの賑わいを取り戻すには、シャッターを開けていかなければいけないけれど、そう簡単にはいかないもの。そんな中、私たちが初めてこの町に根を下ろしてから、長く付き合っていた米屋の店主から相談されたのが、この場所でした。家主(オーナーさん)が高齢になったため廃業して建物の2階に居住しており、1階部分を借り受けることになったのです。
リノベーションしてどのように使うか。最初に思ったのは「何かに挑戦できる(そのきっかけの種が見つけられる)場所にしたい」と代表の福田も振り返ります。そうして2014年に開業したのがカフェ「HOUSE YUIGAHAMA」でした。HOUSEの名の通り、家づくりのヒントになる書籍や写真集がずらり。壁紙やタイル、ドアノブ…そのものも参考にしてもらうべく、設備にはプライスの表示も。設計や不動産営業の打ち合わせもここで。施主さんと一緒にスケルトンハウスの模型を作ったり、商談したり。そんな「場」の象徴的な取り組みが、「SUNSET MEETING」でしょうか。
魚屋さんから住まい&暮らしのモデルルーム&混ざりあいの場に…!(写真右は店内にあちこちに貼ってある壁紙やタイルのプライス)
エンジョイワークスが事業を進めるうえでの特徴…とも言えるのが、「とりあえずブレストみたいな会議をしようよ」というマインド。それが「SUNSET MEETING」というワケ。例えば「そんな物件ねーよ!をつくる会議」では、古い工場をどのように使う?使いたい?というブレストから始まり、実際にシェアアトリエのSAQLABが生まれました。「民泊ネットワークがあるまちを考える会議」 「鎌倉市有・旧村上邸の活用を考える会議」 「まち・ひと・お金の新しいデザインを考える会議」 「楽しいサテライトオフィスをつくろう会議 」 「HOUSEから始める、を考えるイベント」 「地方空き家のポテンシャルを探る会議」 「鎌倉の『観光しない旅』のレシピを考える会議」 「小屋のオモシロイ可能性を考える会議」 「由比ケ浜通りを盛り上げよう会議」 「そんなお金ねーよ!会議」などなど、数え上げたらきりがないほど。とにかく集まって(会議をして)アイデアを交じり合わせていく。そしてさらに、事業化にもつなげていく。
終業後の店内での「会議」だからSUNSET MEETINGと言うワケ
湘南が好きな人、まちづくりに関心がある人、そのトピックが気になる人…そんな方たちがざっくばらんに交じり合って会議をする。ちょうど、小さなエリアでの顔の見えるつながり…Facebookでのイベント集客の全盛期とあって、「何か集まって話し合おうぜ」と言うリアルな場がHOUSEだったのです。ほかには、店舗の軒下を「お試し出店」として使ってもらうことも。ここで街の人たちとの繋がりが生まれて、マルシェに呼ばれるようになり…実店舗は今や人気店にといった事例も。「“きっかけ”を後押しする」。文字通り、そんな場所に成長していました。
軒下のお試し出店やLAB(ラボ)での講座など、本来の“カフェ”の機能を最大限に活かしたスポットに成長
ただ、コロナ禍もあって、「集まる」場も変化。HOUSEのカフェ営業を縮小したこともあり、ここ数年は「エンジョイLAB」としてワークショップ、ものづくり、委託販売など鎌倉を拠点として活動したい方、コミュニティを広げたい方を応援するスペースの活用に移行していました。スパイス店の店主によるカレー講座、和菓子教室、クラフトマルシェ、コンブチャの資格講座…など、「交流発信の場」 「何かに挑戦できる場」という思いは形を変えて引き継がれていきました。
開業から10年を超えて、一区切り。このほど、カフェ部分を閉店することになりました。このお店は、開業当時からエンジョイワークスのサブオフィスでもあり、今も常時10人前後の社員が部署横断で勤務しています。通りを行き交う人を見ながら、「まちの中で働く」。これは、これからも続きます。さらに「会議」のマインドは、場所や仕組みを変えながら新たな形を模索中。HOUSEも次のステージへ。今の時代における「まちや人」との関わり方を考える場になっていくといいなと思っています。