瀬戸内海に面した、香川県西部にある三豊市。美しい海岸線のロケーションと自然の恵み、歴史・文化を生かしながら、新しい技術や取り組みを積極的に取り入れて持続可能なまちづくりを進めている町です。唯一無二の自然環境と起業支援制度、地域とのつながりの強さが魅力となり、都市部からの起業家やスタートアップが集まる流れができています。特に、ライフスタイルを重視するクリエイティブ・観光系のスタートアップが多いのが特徴で、そのひとつが、地元企業な11社が集まって開業した「URASHIMA VILLAGE」。荘内半島に位置する一棟貸しの宿泊施設です。「大型の外資系ホテルがこの地に来るかも…」という噂があった際、三豊で長く事業をやっている熱いパッションを持った経営者たちが「自分たちで魅力ある宿を作ろう」と結集し、瀬戸内ビレッジ株式会社を設立。施設は、浦島太郎が亀を助けた島…という伝説から「URASHIMA」と名付けられた特別な場所にあります。
この眺望をひとり占め。国内でもまだまだこのように素晴らしい場所はたくさんあるのです
2021年のオープンから年間稼働率は60%を超え、観光客の増加と共に順調に運営されている中で、瀬戸内ビレッジでは「その次」を考えました。事業の展開を考えた際、施設に多くの人を呼ぶことだけに注力すればいいのでしょうか? そこで、次なるプロジェクトを踏み出すために、これまでの実績を担保に、不動産をオフバランス化する手法にチャレンジしたのです。簡単に言うと、瀬戸内ビレッジは「URASHIMA VILLAGE」の施設を不動産投資ファンドに売却し、ファンド側(合同会社三豊地域活性化ファンド)はサブリース契約により家賃収入を得て、投資家に分配する。オーナーが「個人や企業の出資者」に代わっただけで、施設はこれまで安定稼働してきた瀬戸内ビレッジが運営するため、外向きに変わるところはありません。内側ではファンドで得た資金で、次なる地域のプロジェクトに着手できる。これが「不動産のオフバランス化」というもの。不動産を持たずに活用する方法で、特に企業や自治体が資金を確保しつつ、経営の負担を減らすことができるとして注目されています。
事業者とファンドの構図。「投資家」の種類もさまざまだ
三豊での事業「香川県三豊市・ソーシャルPJファンド1号」は、そのスキームを活用したもの。私たちの不動産投資プラットフォーム「ハロー! RENOVATION」を使って、昨年9月にスタートしました。「地域が主体であり続けるための選択」―プロジェクトリーダーの古田秘馬さんは、ファンド開始時「この建物(URASHIMA VILLAGE)は、地域の人々がずっと守ってきた景色の中にあります。この情景を見続けられるよう、地域の皆さんや、ここが好きで何度も来ていただける皆さんに『株主』になってもらえたら」と話していました。
「URASHIMA VILLAGE」外観(写真左・中)、写真右は瀬戸内ビレッジを構成するメンバー(左から6番目が古田さん)
ファンド公開時リリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000061795.html
地域プレイヤーは、資金を得て、これまで同様に事業を継続しながら次なるプロジェクトを生み出すことができ、結果的に地域の持続的な活性化につなげることができる。メリットはそこだけではありません。投資家の目線で見るとどうでしょうか? 今回の場合は運用期間が10年。長期間にわたり地域に関わる仕組みなので投機には向いていませんが、「出資プロジェクトの状況はどうなっているのか?」と自分ごととして見守り、投資家特典として宿泊を楽しむことができます。三豊の観光をシンプルに楽しんでもらうもよし、新しいビジネスが生まれているこの町の人や物へのコミットの機会にするもよし。ユーザー(投資家)としての関係性を超えて、自分もプロジェクトの一員として三豊の地域に関わっていく…つまり、それが「株主人口を増やす」という意味なのです。
ファンドの募集は1月に終了しましたが、「どんな投資家がいたか?」というのも興味深いのではないでしょうか? プロジェクトに関心を持ってくれた全国の投資家の方々、この地にゆかりのある個人や企業、さらには、“まちづくり”や“地方創生”に取り組む大手企業など、蓋を開けてみると、多様な立場の方々に投資いただきました。これは、さまざまなステークホルダーが参加する「地域活性ローカルファンド」のモデルケースとなりそうです。
近年、地方創生や地域活性という言葉を耳にすることも多く、全国各地で、地域に根を張ってさまざまな手法で取り組んでいるプレイヤーも増えています。ただ、走り出しても「次の一手」の資金や仲間・共感者を増やす手段がなく、足踏みするケースも少なくありません。地方で生まれた芽を育てていく。今回の三豊の事例は、持続的な地域経済の発展に可能性を秘めた挑戦とも言えます。この仕組みを活用して、全国に「株主人口」が増えていくことで、地方創生がもっともっと楽しく・面白くなるのではないのでしょうか。
【エンジョイワークス代表・福田のインタビュー記事】
「ポットラックヤエス マガジン」地域を“株主”が支える時代へ。三豊市発・ソーシャルプロジェクトファンドの挑戦
https://www.potluck-yaesu.com/magazine/20241111/2706/
【エンジョイワークス・メールマガジン記事(2024年9月3日付)】
海・山・田園…の「豊かな」街、香川県・三豊。地方が元気になるモデルケースがここにあった!
https://enjoyworks.jp/times/094/