いま、多くの自治体で、公共施設の「これから」の議論が進んでいます。人口がピークだった時代に建てられた施設、自治体が成り代わって運営してきた建物。(生産年齢人口が減少し、65歳以上の老年人口が増加する)人口オーナス期に入っている今、税収減少による施設維持費の負担増や施設の利用者減少などの課題を抱えているのです。自治体側も機能を集約・複合化する・民間に移譲する・用途変更して新たな活用を推進する…など、地域の事情を汲みながら計画を策定しています。その中で、やむを得ず廃止(集約)となる施設もある訳ですが、「建物を残してほしい」「取り壊さないで」という声も当然ながら出てきます。利用者の「思い」と将来にわたる運営の負担。どちらの“言い分”も、理解できますが、現実での最適解は何か?それを議論することも大切なのです。
神奈川県真鶴町にある旧土屋邸。「岩」という一文字の珍しい地名の場所にある旧宅で、土屋家や町民から寄贈された工芸品や旧民具などを展示する町営の民俗資料館でした。6年前に町の所有にとなり、土日祝日に無料で開館していましたが、収蔵品の適切な管理や施設の活性化を理由に昨年9月に閉館しました。町としては収蔵品や貴重な資料は別のきちんとした保管ができる場所へ移して展示をする方針を示しているのですが、それでは、この建物はどうするのか?「残したいけど今の形のままでは難しい」という課題に向き合うために、私たちエンジョイワークスは昨秋、町と協働で「官民連携まちなか公的不動産再生モデル」をスタートしました。
旧民俗資料館は石材業で財をなした土屋家の旧宅。地場産業の石材・漁業関係の資料も展示していた
なぜ、どうやって、官民連携するのか? 民間事業者がどのように関わるのか? 地元の意見や声は活かされるのか?(聞いてもらえるのか?)不安に思われた地域の方も少なくなかったようですが、それも当然のことかもしれません。廃止後の道筋が見えないとなおさら。そこで、私たちがいつも公的物件の再生で行ってきた「対話」の場づくりから始めています。
「民俗資料館として地域に愛された歴史を学び未来を考える会議」。11月と1月に続いて、2月1日が3回目の開催です。これは地域の方々、公共施設の活用に関心がある方々などとのディスカッションの場。今後のことを決めて議論するのではなく、「どのように守り継ぐことができるのか?」を、膝を突き合わせて考えよう…ということ。少し回り道にも思えますが、そこでの思いやアイデア、ひらめきを共有するスモールスタートも大切だったりするのです。
文字通り“膝を突き合わせて”、みんなで考える会議に。付箋でアイデアや想いを整理
2回目の場には、町長も「町民」として参加。「これからも真鶴の歴史を伝える場として機能させたい」「現実問題の老朽化に対して、維持させるためには今の形では稼げない」「多世代を巻き込みながら皆に使ってもらえる場にしていく必要がある」など、多様な声が飛び交いました。共通していたのは「旧土屋邸を良い形で守り継ぎたい」という思い。そこから、現実課題を乗り越えるための原動力をどのように醸成していくか。私たちの役割は、「これから」に向けてのボトムアップとバックアップ。地域に併走しながら、まちづくりの原点を忘れないよう、実践を積み重ねていきます。
【旧土屋邸の未来を考える】
民俗資料館として地域に愛された歴史を学び未来を考える会議vol.3
日時:2025/2/1(土)10:30〜12:30
場所:真鶴町民俗資料館(〒259-0202 神奈川県足柄下郡真鶴町岩596)
参加費:無料
https://ewform.enjoyworks.jp/index.php?id=1685
真鶴町とエンジョイワークスによる「スモールコンセッション」の取り組み経緯についてはこちら
https://enjoyworks.jp/times/104/