一時期、「廃墟」がブームになっていました。1980年代は戦前から昭和初期の廃れてしまった建物や遺構を歩く「愛好家」が増え、各地の廃墟を訪ねる動画を配信する人が出てきたのが2000年代初め。都市計画により区画整理された「まちづくり」が各地で広がる中で、開発から取り残された場所、時代の変化で役目を終えた建物…など、その対比として廃墟自体が興味を引く“コンテンツ”となっていったようです。
「天空の廃墟」。メディアでこのように称されている、横須賀市の旧市営田浦月見台住宅。高度経済成長期の1960(昭和35)年に市が設置した平屋の立ち並ぶ市営住宅です。人口減に伴う市の公共施設「縮減」の一環による廃止*と建物の老朽化により、2022年に最後の住人が退去して、全戸空き家の状態でした。標高約50m、高台にあって空が広がる“天空”感のある場所かつ、住み人がいない昭和の古い長屋。確かにこのネーミングは言い得ています。とはいえ、雑草が生い茂る箇所もあったものの、そこまで朽ち寂れてはおらず、実際にここに来た方にとっては少しギャップが。むしろ、昭和の風情が残る空間を前に、「タイムトリップで時代を遡った」ような、ノスタルジックな感情を覚えるかもしれません。
*適正な管理戸数の集約と再編を進める市の施策によって、同時期に同市内の市営住宅がいくつか廃止になっています
昭和の風情漂う平屋が並ぶ現地(写真左)。年末に放映されたドラマのロケ地にも。写真右は解体前の内部の様子
私たち、エンジョイワークスが昨年から手掛けているのが、この場所「田浦月見台住宅」の再生。平屋長屋を職住一体の「なりわい住宅」にリノベーションするプロジェクトです。高台に広がる平屋群は空から見ても、唯一無二の存在感。この場所に市営住宅が設けられたのは、平地が少ない三浦半島で住宅施策が急がれた当時の時代背景があり、60年の時を超え、先の住人たちが暮らしを紡いできた場所と建物の付加価値を新たに構築する。そんな挑戦でもあるのです。
昨年夏から、この「なりわい住宅」に関心のある方、入居を希望する方の見学会やマルシェを数回実施しており、整備を進める58戸のうち、現時点(第一期)で25戸(21組)の入居が決まっています。廃墟と言うワードが少しひとり歩きしていますが、入居される方々はここでの事業の可能性や(入居者間での)コミュニティ・カルチャーの広がりへの期待が大きく、「月見台だから」と選んで来られる方が多いようです。
昨年12月のイベント風景。入居予定者によるマルシェも活況で「ヴィンテージ&クリエイティブ」のコンセプトを体現
私たちがもっと注目してもらいたいのは、市営住宅の再生というミッションであること。この場所を更地にして新しいものを建てることは立地上難しく、解体にも費用が掛かります。公園などに再整備をしたとしても、ここを目的に訪れる人がいるのか? 市有地を塩漬けにしたままでいいのか? そんなことを考えて、市は建物を活用した“再生”を提案した私たちと「官民連携(市側から言うと民官連携)」で事業をスタートすることにしたのです。
昨年12月、これに関する協定締結の会見で同市の上地克明市長はこう話しています。「自分の原点である谷戸で新たなコミュニティを作り、まちづくりに活かしたい。民間事業者と連携して、月見台住宅を活用することにより、エリア一帯の活性化につなげたい」と。その言葉には、並々ならぬ期待にあふれていました。公営住宅における官民連携と言うと、PFI(自治体が民間の資金や経営力、技術を活用して行う事業)による建て替えや再整備、複合施設化が大半ですが、この事業はそれと一線を画すもの。エンジョイワークス代表の福田も「平屋でかつ空き家になった住居群(市営住宅)をまとめて再生するという例は国内でも稀なケースだろう」と話します。
昨年12月に横須賀市役所で行った市との会見の様子(写真左)。現地イベントには同市長も来場、賑わいの再興に期待の笑顔(写真右、右から4人目)
さらにこの事業は、不動産投資クラウドファンディングの(弊社が運営する)「ハロー! RENOVATION」を使って資金調達する仕組みを用いているのも特徴です。入居者や私たち、そして自治体だけでなく「(投資家を含めて)みんなが参加する団地再生のロールモデル」なのです。そんな先駆的な事例に参加する「みんな」が大きく、広がることを期待しています
■月見台住宅再生ファンド
入居申込み殺到中!横須賀市とタッグで団地の再生
リスク含むファンドの詳細はこちら
https://hello-renovation.jp/renovations/25247
出資金から、年額最大3.3%(税込)の管理報酬、ファンドによりアップフロントフィー(初年度定額)、その他銀行手数料等をご負担頂きます。
※事業の状況により、利益の分配が行われない可能性及び返還される出資金が元本を割る可能性があります。リスクの内容や性質はファンドごとに異なります。詳しくはハロー!RENOVATION の「ファンド情報」から内容をご確認頂き、当該ファンドの匿名組合契約書、契約前交付書面、契約時交付書面等をよくお読みください。
※ファンド持分の譲渡は制限されています。
株式会社エンジョイワークス
不動産特定共同事業者[金融庁長官・国士交通大臣 第114 号]
※不動産特定共同事業のファンドにおいて、株式会社エンジョイワークスは、当事者として不動産特定共同事業法第2 条第3 項第2 号の匿名組合型契約を出資者と締結、又は取扱者として契約締結の媒介を行います。
解体作業の様子。土間打ちを行い、躯体の状況を確認しながら入居者の希望に応じたDIY(リノベーション工事)に着手