「天空の○○」と言うと、何が当てはまるでしょうか? ラピュタではなく、住居群や廃墟(!?)、集落…というキャッチコピーで今、注目されているのが、横須賀市にある旧田浦月見台住宅。谷戸の小高い丘の上に位置していて、周りの眺望も遮るものがなく、市営住宅としては4年前に廃止。住み人がおらず時が止まったような昭和の平屋(長屋)が70戸近く連なっていることから、そう表現されているようです。所管する横須賀市の方針は、「谷戸地域の再生、地域コミュニティの活性化を図るため、民間事業者と連携して事業を展開する」というもの。エンジョイワークスは今年はじめ、同市の活用事業者候補選考公募で採択され、施設の改修や管理・運営などについて市と協議を進めてきました。
私たちが展開する現地の再生活用コンセプトは、職住兼用の「なりわい住居」。ヴィンテージ&クリエイティブをテーマに、小さな店舗や作業場×暮らしの場として機能させようという計画です。木造・コンクリート造の家屋はそのままに、内部をリノベーション。ものづくりの発信基地、人が寄り合い刺激し合う場、特別な空間を目指して市内外から多種多様な人たちが訪れるまち…そんなイメージです。7月と9月に実施した現地見学会には、それぞれ100名近くの参加があり、関心の高さにこちらが驚くほど。現状は、入居希望者との調整を進めている段階で、12月13日には横須賀市と活用に関する実施協定などに関する協定を締結しました。
横須賀市によるプレスリリース(12月13日付)
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/4821/nagekomi/20241213tsukimidai.html
この事業のポイントは、立地以外にもいくつかあります。それは、市と民間の連携(いわゆる官民連携)。いま、自治体と民間事業者の協働事例が増えていますが、住宅施策で言うと、建て替えや再配置、複合化、用途変更のうえでの再開発などの例が多いのが現状。一方で、横須賀市の事業は「そのまま再生する」という希少なケースかもしれません。昭和~平成にかけて約60年間、住民たちが各々の暮らしを営んでいた「月見台住宅」。住宅ストックの価値を変えて再構築し、エリアリノベーションを図るプロジェクトなのです。さらに資金調達には、私たちが手掛ける不動産投資ファンド(「ハロー! RENOVATION」)を活用。プロジェクトの「応援」や「期待」に、出資を通して輪を広げていく。さまざまな角度での「持続的なまちづくり」。そんな挑戦でもあるのです。
会見では、上地克明市長が「谷戸は、私自身が生まれ育った環境であり、思い入れのある場所。この自分の原点である谷戸で新たなコミュニティを作り、まちづくりに活かしたいと思い、市長就任当初から取り組んできた」とあいさつ。「谷戸の活性化」は市長の公約でもあり、民官での取り組みへの期待感があふれていました。近くには同じく市営住宅を転用した(市が運営する)「アーティスト村」があり、月見台とは「谷戸×ヴィンテージ×クリエイティブ」の共通項もあります。記者からは市外からの入居者に関する質問なども飛び交いました。
翌日の12月14日には、現地で「クリスマスマーケット」と題したイベントと見学会を開催。入居を予定している方のポップアップストアやワークショップなどで賑わいました。こうした「場」に関心のある方だけでなく、地域の方々にも楽しんでいただけたようです。注目度が日に日に高まっている田浦月見台。リノベーション後の「まちびらき」は来年夏。月見台の丘の上に「ワクワク」を持って、多くの方が訪れる日を楽しみにしています。