不動産サイトで「中古団地 売買」と検索すると、築30年とか40年、いや50年超の物件がずらりとでてきます。いわゆる高度経済成長期の住宅施策により、全国に広がった団地。内風呂・水洗トイレがある当時の最新設備で、‟憧れ”の住まいでした。余裕のある共用部に広い公園や生活に関連する施設も充実している、という特徴・好条件もありました。それが時を経て、生活習慣や間取り等のニーズの変化から、いわば「時代遅れ」と言われるようになったのです。確かに、当時の“流行り”だった間取りは2DKや3DKで、「押し入れ」が使いにくかったり、リビングがなかったり、現代の生活と馴染まない部分も。こうした条件もあって、比較的安く売買されているという現状があります。それならば、これを購入して、自分好みに間取りを変えてリノベーションする。いま、「中古団地物件」の流通にはそんな需要があります。
一方で、中古物件の市場で注目されているのが、買取再販。不動産事業者自らが物件を取得して、水回りなどをしっかりとリノベーション・リフォームして、売り出すという方式です。これに‟団地物件”を掛け合わせたのが、私たちが手掛ける「愛ある団地ファンド1号神戸市垂水区」。隣接する明石市にまたがる約197haの大規模団地「明舞団地」にある狩口台住宅25号棟の一室をリノベーションして再販をするプロジェクトです。再生に掛かる費用を投資で募り、物件の販売を通して得た収入を投資家に配当する「キャピタル型」のファンド(エンジョイワークスが運営する不動産クラウドファンディング「ハロー! RENOVATION」)で資金を調達。物件を取得し、現在はリノベーションの佳境で、今秋、販売を始めるところです。
このプロジェクトは、もう一つ大きな意義があります。それが、「リノベ」の中身。建物の性能を上げて長く使うことにも重点を置き、デザイン面に加えて、省エネ性能の向上、“エコの見える化”も大切にしています。この秋に始まる既存住宅省エネ性能表示の新制度、「改修等部位ラベル」にも対応しており、改正建築物省エネ法で義務付けられた断熱等級4を取得予定です。さらに、断熱や遮音に対応する内窓を付けるなど、「新築並み」の機能を施しています。
いわゆる団地のリノベやリフォームというと、コストを抑えた改装も少なくないのですが、実はそれを事業として展開するのは難しい。なぜなら、性能(スペック)という点では他の物件より劣ってしまい、価格以外の優位性が無くなってしまうから。実際に、横展開の成功事例があまりないそうです。そんな現状課題から私たちは、リノベで価値を新たに作り出し、さらにそれを維持することができれば、何年も何十年も“住み継ぐ”ことも可能だと考えました。現地で事業に関わるENJOYWORKS OSAKAの萩原龍介は「団地という“ハコ”を持続可能なものにできれば、空き家などの社会問題も変わっていくのでは」と話します。
リノベーション前の団地室内。できるだけ予算を掛けずに…となると壁紙や水回りを変える…といったところに留まっているケースが大半。それでは資産価値は上がりにくいとか
今回の物件は、団地リノベのスペシャリストのフロッグハウス(兵庫県明石市)が設計・施工を担当しています。この明舞団地で生まれ育ち、神戸市垂水区と明石市で約13年、リノベーション工事の設計・施工に携わっている同社。誰よりも地元を知り尽くしたプロフェッショナルとタッグを組んで、“愛ある団地リノベーション”を手掛けています。ターゲットは、「おひとり様の憧れ団地暮らし」「新婚夫婦・DINKsのスローライフ」「多拠点・セカンドハウス」。実際のユーザーを思い浮かべながら、現代のライフスタイルにマッチした「エコ&デザイン団地」を作り出す。これが、私たちの掲げる「団地を愛する人を増やす。愛される団地を増やす」――というミッションにつながるのです。
当物件のリノベーションの様子。壁をはがして躯体の状況を把握して断熱などの性能をアップ(リフォームの履歴など、念入りな点検をすることで、丁寧なケアができます)。完成が楽しみ!*写真はENJOYWORKS OSAKAウェブサイトより
こうした取り組みに携わる中で、萩原は「団地再生にはまだまだニーズがあるし、(省エネ性能の高いリノベで)持続可能な物件に成長させることができる。団地の存在自体、広大な敷地や、広い共用部とか、これからこういう環境を新たに作るのは難しい。だから、間取りなどの古さがあっても、(質の良いリノベーションを施せば)いわゆる“ハンデ”を凌駕するだけの快適な暮らしがあると思う」と話します。そうなんです。今、団地のコミュニティ機能が見直されていて、多世代の交流や生活サービスの強化、併設店舗の再生など「リブランディング」に乗り出している地域も少なくありません。その中で、個々の団地物件に付加価値をつけて再生していく。そんな両輪が循環すれば、「新しい団地ライフ」に人を呼び込み、活性化していくのではないでしょうか。私たちの「買取再販×団地物件再生」は始まったばかり。10月下旬にはオープンハウスの予定だとか。『愛ある団地ファンド1号』の当物件でどんな方が、「ポテンシャル」を感じ取ってくれるのか。その出会いを楽しみにしています。
今回の物件…明舞団地内の「狩口台住宅」。この庭も一区画を提供。余裕のある空間を持った団地暮らしが今、見直されています
団地リノベレポート記事(ENJOYWORKS OSAKAウェブサイト)
https://osaka.enjoyworks.jp/properties/316
リノベーションを手掛けるフロッグハウスのウェブサイト
https://froghouse.top/
当物件の資金調達を行った、「ハロー! RENOVATION」ウェブサイト
https://hello-renovation.jp/