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あるのはポテンシャルだけ? 田浦月見台(横須賀市)のプロジェクトが注目される理由

Feature Project 公開日:2024.10.01

1960年代、いわゆる「高度経済成長期」の人口増に伴い、何よりも急がれたもの――それが住宅の確保です。民間事業者の開発も一気に広がりましたが、自治体が手掛ける「公営団地」もそのひとつで、ニュータウンと呼ばれる大規模な団地群が日本各地に出現しました。寝食分離の間取りで、憧れの「住まい」だった時代です。そんな団地、公営住宅ですがいま、開発から50年前後を迎えて岐路を迎えています。建物そのものの老朽化と居住者の高齢化やライフスタイルの変化、さまざまな要因があります。「自治体として、(公営住宅を)存続させるか否か」という議論も。住宅施策として、一定数は確保していかなければいけないという大前提のもと、建物をどのように維持するのか?という問題が生まれています。建て替えや再整備、(更地にして)土地を売却するといったいくつかの選択肢がありますが、それは、財政状況や人口移動の推測など、その自治体ごとの事情もあるでしょう。

三浦半島で私たちが関わりの多い横須賀市も、公営住宅施策の課題に直面しています。人口減少や高齢化もあり、市内全体の公共施設における「総量の適正化」(ファシリティマネジメント)を進めていて、市営住宅もここ数年で数カ所が廃止されています。2022年に最後の住民が退去した市営田浦月見台住宅もそのひとつ。肝心なのはその後。廃止=空き家ですから、そのまま放置しておく訳にはいきません。ここは、三浦半島特有の「谷戸」と言われる崖が入り組んだ立地の「丘」にある平屋、約70戸。上空から見ると“箱”が均等にずらりと並んでいるちょっと不思議な場所です。竣工から60年と少し。建物の老朽化だけでなく、周辺の道路幅員が狭いため新たな開発行為ができず、用途地域の制限もあるこの場所をどうするのか? 市の判断は、「(建物を)有効活用して、リノベーションを行い、魅力的な新しい街をつくることによって地域コミュニティの活性化を図る」という利活用の道。それに手を挙げたのが、エンジョイワークスだったということです。

「団地」から臨むのは東京湾(長浦湾)、海見えかつ空が開けた平屋。確かに「可能性」を秘めている!

公共施設を縮減している同市にとって、その立地もあり、建て替えは現実ではありませんでした。だからといって、市が予算を捻出して、全戸をリノベーションするのも難しい。そこで、「新たな建物は建てられない」「事業者は自ら調達する資金で建物をリノベーションする」という大前提で事業展開することができる民間事業者を求めていたのです。私たちは、新たなコミュニティを創出する全体コンセプトの中で、ファンドを使った資金調達によるリノベーションを提案。これが採択され、既に今年初めから具体的に事業がスタートしています。

ヴィンテージ&クリエイティブの「新しいまち」

海を見渡す丘に広がる平屋群。なかなか探しても出てこない「物件」たちです。立地だけでなく、町をイチから作るワクワク感があります。私たちの進める事業コンセプトは「ヴィンテージ&クリエイティブ」。住みながらクリエイティブな作業や発信ができる――つまり「なりわい居住」の場所。7月に続いて9月29日には見学会・内覧会を実施しました。既に、入居の仮予約も入っており、「おもしろそうな場所」と感じていただけているようです。

ドローン画像で見ると、高台で平屋が立ち並ぶ「異空間」が分かります。谷戸の高低差も

事業企画部でこのプロジェクトを担当する髙才ゆきはこう話します。「横須賀にある特徴的な『谷戸』をいくつか見て回ったのですが、(月見台は)改めて潜在的な魅力に満ちた場所だなと思いました。そういった部分をしっかり捉えて、会社のプロジェクトとして携わることができるのは、個人的にも貴重な機会」。さらに、2回の見学会を通して「参加者の“熱量”がすごくて、自分が想像していた以上に、それぞれがここに魅力を感じていることが分かったので、担当としてはそれに応えていきたい」と話します。そして、この場の将来像についても。「発信力よりも吸引力のある場所になればいいな。入居者のコミュニティを醸成しながら、“楽しそう、何か面白いことをやっている、空気感がいいな”と思える、“持続可能な場”に育ってほしい」と期待を語ってくれました。

ゾーンニングなどを視覚化して見学者に。現地イベントで、入居希望者に対応する事業企画部・髙才(写真右)

自治体自らがリノベーションするのは予算的にも難しいし、土地を売却しても、新たな開発ができないとしたら、次はどんな手段があるのか。市側も「このような市営住宅の(立地の)再構築は全国的に例がないと思う」と話します。新しいことに挑戦する柔軟なマインドのある横須賀市と、人が混じり合った場づくりが得意なエンジョイワークス。髙才も「いままで私たちが積み上げてきた知見や経験、ノウハウを結集させたプロジェクト。市と一緒に良い場所にしていきたい」と意気込みます。この連携で生まれる「市営住宅物件の再生」は、単なる場の「ポテンシャルの引き上げ」だけではありません。自治体の遊休不動産を価値に変えていく“新しい”取り組みに注目ください。

9/29のイベントは、マルシェと見学会の二本立て。トータル150名以上の来場がありました

【エンジョイワークス不動産サイト(ENJOY STYLE)】田浦月見台住宅
https://enjoystyles.jp/index.php?c=detail&id=6867

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横須賀市民官連携推進WEBサイト
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