和歌山県の北部にある紀の川市で、私たちエンジョイワークスが今年6月に開業したMIKASAKAN。閉業して10年ほど経った旅館を、カフェ・宿泊施設・サウナの複合施設にリノベーションしました。なぜ鎌倉に拠点のあるエンジョイが紀の川?というと、「市内にある空き家や空き店舗をどうにかしたい!」という紀の川市からの相談を発端に、エリアリノベーションの事業に展開したという訳。その6月には市から「地域再生推進法人」に指定されていて、遊休不動産の利活用や関係人口の創出と拡大、これに関わる人材育成に取り組んでいます。
鎌倉から紀の川市に社員を派遣し、施設運営とエリア全体の事業について着手しているのですが、紀の川チームを統括する千葉県出身の和田拓将は26歳。そして地域おこし協力隊の大阪府出身の三宅慧(22歳)と愛知県出身の小川凛子(23歳)、この3人の平均年齢は23歳ちょっと。「いわゆるヨソモノ・ワカモノ」によるチームです。それぞれ、MIKASAKANを拠点に市と連携したまちづくり事業への展開、施設DIY、カフェ運営…と役割があり、現場で汗をかきながら地元に溶け込もうとしています。
紀の川市粉河まちづくりプロジェクトインスタグラム
https://www.instagram.com/kokawa_renovation/
開業から3カ月、実際に運営をしていて気付きもたくさんあったとか。「地域交流とか多世代が混ざりあう拠点…という役割は、正直まだまだ。こちらから“仕掛け”を作っていく必要がある」と和田。そこで先月末から始めたのが「三笠チケット(別称:子どもチケット)」。カフェドリンクのチケットを大人が100円で買って、それを高校生以下の子どもに提供することで、MIKASAKANに来るきっかけを作ってもらう仕組み。地域の子どもの憩いの場になってほしいし、大人には次世代への関心を循環させてほしい。そんなアイデアから生まれたとか。今後のイメージとしては「人と関わる(関われる)場、さらにチャレンジできる場にしたい」という構想が。カフェスペースや個室、ウッドデッキの予約利用サービスは既にあるのですが、例えば「シェアキッチンのようなニーズが合致したらいいな」…と、さまざまな利用法を思い描いているところです。
カフェ運営に関しては、鎌倉での実績がある私たちですが、現地とコミュニケーションをとりながら、メニューづくりもあれこれ知恵を巡らせています。「フルーツ王国」と言われる紀の川市の果物を活用していくというミッションもあって、地元の方に頂いた桃を使った「桃ソーダ」(限定)、直近では、生産量1位のいちじくを使った「いちじくソーダ」の提供を開始しています。ランチメニューも考案中で、もっともっと、地元の農家さんと連携、協力して、MIKASAKANの個性を引き上げていこうと考えているところです。
町を歩く人はひとり、ふたり…!?
ヨソモノの3人がちょっと驚いたのが、人の流れ。ここは西国第3番札所の粉河寺の門前町なのですが、観光客はバスや車でお参りに来て、そのまま帰っていくパターンが大半。MIKASAKANは山門から目と鼻の先なのに、人の姿はまばら。コミュニティはあるようだけど、表には見えない…。一方、地元の人が行くのはここから南の方(寺とは反対側)に10分ちょっと歩いた、JR粉河駅の先にあるスーパーやファストフード。つまり。まちの回遊性がないという課題も感じています。そんな現状もあり、市とタッグを組んだ「紀の川ローカルビジネススクール」を10月からスタートさせます。市内の空き物件を活用する事業アイデアを持った人を育てるプログラム。いわゆる「事業者育成型公募」です。
■紀の川ローカルビジネススクール
https://hello-renovation.jp/topics/detail/24265
いま、この町にないもの…BARや学生の活動拠点を作りたい――そんなアイデアが集まっているとか。来年3月まで半年のプログラムでは、事業収支計画やマーケティング戦略などの座学のほか、マルシェ出店など実践も用意。定員(20人)をオーバーする応募があり、「地元でなにか始めたい!」という熱量を感じています。かつては店舗が立ち並び、賑わっていたMIKASAKAN前の「とんまか通り」に再び灯をともす――。つまり「エリア」をどのように「リノベーション」するか? 市と協力しながら進めていきます。
その中心の場所になるのが、MIKASAKAN。地方活性化、まちづくりの起爆剤になるのは「ヨソモノ・バカモノ・ワカモノ」と言われています。バカモノとは、馬力や機動力がある人という意味。この要素がある人=彼ら3人が、地元の人と「混ざりあいながら」土地に浸透していくことが大きなミッションかもしれません。地域おこしの人材としての成長も期待しながら、紀の川での取り組みに、叱咤激励と応援をいただけると嬉しいです。