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生まれ故郷に新たな観光資源を作る!―「事業者育成型公募」でバケーションステイ施設を開業@福井県池田町

Column自治体共創 公開日:2024.07.30

エンジョイワークスが全国各地の自治体とタッグを組んで実施している「事業者育成型公募(空き家再生プロデューサー育成プログラム)」。空き家や遊休不動産を利活用してほしい自治体と、それらの物件を使って事業を始めたい人をつなげる仕組みです。ただ人と場所を「つなぐ」だけではありません。事業の実現性や将来性、継続性などをアドバイスしながら事業者を「育成」していくというところがポイント。「空き家(物件)再生」のノウハウを得て、プレイヤーとしてその地域で汎用させていくことで、場所や人材の好循環を生む…という狙いもあります。
*事業者育成型公募とは…https://enjoyworks.jp/times/041/

2021年に福井県の豪雪地帯、池田町で実施した事業者育成型公募。これに参加して事業案が採択されたのが、同県の坂井市で通所や訪問の介護や居宅支援サービスを行うトゥモローズリハビリテーショングループ(見目隼人代表)。エンジョイワークスが実施したプログラムを経て、2023年6月、町有の築120年の古民家をリノベーションした一棟貸しバケーションステイ「悠久の宿 ふらふ」を開業しました。

介護事業と宿泊施設開業は、一見、つながりがないように見えますが、この町で生まれ育った見目沙佳さんには、こんな思いがありました。「忙しい現代社会で、自分の生き方というものを、立ち止まって考えてみる機会は少ないかもしれない。もっと、自分の身体が喜ぶ生活、もっと生きやすい方法を、里山への旅行を通して、現代の都会で生活する人に考えてもらいたい」と。脳機能や言語聴覚などの分野を学び、リハビリや介護の事業を展開していた同社。生活習慣病やストレスなどで身体を壊してしまった人に関わることが多い一方、故郷の池田に帰ると、農作業や町内活動にいきいきと励む人たちがいて、おおらかな暮らしが、そこにはある。「大人の休息」の場所…古民家を活用した「バケーションレンタル」という宿泊スタイルが、医療福祉の世界での経験の中で感じていたことへの一つの解決策になるのではないか―と。

そのような思いを抱いて、公募に手を挙げ、私たちの研修を受けた見目さん。その過程で「地元の方の想いに寄り添うことへの必要性と、その地域の“鼓動”で事業を進めていくことへの大切さを学んだ」と話します。他の地域での空き家再生の先行事例も共有する中で、「地域の歴史も気候も違い、どれもが個性的で面白いプロセスを経ているもので勉強になった」と振り返ってくれました。再生への熱い「思い」も必要ですが、一つひとつ丁寧に階段を上って継続性のある事業に成長させていくことも大切です。そんな「マインド」を伝えていくのも私たちの役割だと思っています。

建物へのエモーショナルな「思い」とリスペクトへの気付き

研修と選考会を経て、改修工事を始めたのが2022年春。築120年の頑丈な古民家をリノベーションする際に気をつかったのは、心地よい空間とともに、建物の魅力や奥深い風土を認識してもらえるようなバランス。大きく曲がった地松の梁、貴重な欅の大柱、煤で真っ黒になった大きな囲炉裏は極力当時のまま残し、その良さが引き立つように現代的な素材と組み合わせて「空間の調和」を創出しています。里山の原風景をキャンバスに切り抜いたような雄大な池田の風景は、宿泊施設のメインテーマであり財産。宿の名称の「ふらふ」は、feel(フィール)、luxury(ラグジュアリー)、field(フィールド)の3つの言葉から連想したもので、介護事業とは別に、これを運営する事業会社(株式会社ふらふ)を立ち上げました。「宿泊されるお客様には、この古民家のルーツを必ず伝えています。控えめだけれども荘厳な美しさに気づかされると思うから。そして、その美しさを生かすのは、一にも二にも人なのだと思いました」―そう話してくれました。建物への「リスペクト」は、古民家再生における大きな「柱」となります。

築120年超という町所有古民家。リノベーション後も佇まいと存在感はそのまま

開業から約1年が経過し、北陸新幹線の延伸などもあって、首都圏などからの来訪が増えていると言います。県や市町村関係とも連携し、新たな観光資源としてPRしているところだそう。「事業者育成型公募」の目的のひとつ、「関係人口の増加」に寄与し始めています。「今後は、さらに地元の方との結びつきを強くして、旅行者と地元の方の交流が、生活の延長上の『食』や『遊』を通して体験できるようなオプションを考えています」とのこと。

そして、見目さんはこう語ります。「この里山で出会う地元の人たちとのふれあいは、都会にはない穏やかで優しい時間をくれます。心を潤して、幸福感に包まれる時間が訪れた人の‟ご褒美“になれば」

食事やインテリアも細やかな心遣い。里山のゆるやかな時間を楽しめる

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事業者育成型公募の意義は、このような「地域プレイヤー」のマインドを引き上げ、思いを形に(事業化)することに併走し、文字通り「育成」していくこと。その過程で、再生のノウハウを学ぶだけでなく地域のさまざまな人と関わることは、街への視点をブラッシュアップする機会にもなります。地域のあちこちに、物件再生の「プレイヤー」がいて、街を思い、元気に活動している。――私たちは、そんな将来像を描いています。

悠久の宿 ふらふ
https://furafu.com/
福井県池田町「町有空き家活用プロジェクト」
https://town.ikeda.fukui.jp/kurashi/sumai/1471/p002689.html
池田町観光サイト「いい池田.jp」
https://www.e-ikeda.jp/index.html

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