時代を遡ると、貴族や武士の貴重な文書・書籍を格納する文倉として用いられ、一方で農作物や発酵食品の貯蔵庫として活用されてきた蔵。「代々のお宝が眠っている場所」というイメージもあるのではないでしょうか?
30cm近くの厚い壁に漆喰を用いた蔵は、調湿機能・防火性が高く、「大切なもの」を保管するための日本独自の建物文化。とはいえ、現代では「倉庫」としての役割を終えて使い道がなく、解体される蔵も少なくないと言われます。そんな蔵を再生して「泊まれる蔵」にする全国展開プロジェクトが「The Bath&Bed Team(BBT)」。第1号は私たち、エンジョイワークスの本拠地、鎌倉のお隣、葉山町(神奈川県)の「The Bath&Bed Hayama」。2018年に「泊まれる蔵プロジェクト」としてスタートし、投資型クラウドファンディングで改装資金を募りました。これと並行して、地域の人と「地域のリソースを活かした宿づくり」を考えるイベントを実施。地元のクリエイターや「泊まれる蔵」に関心のある人が集うワークショップを重ねて、「日常にあったはずの小さな”非日常” を取り戻す場所」というコンセプトが完成。一日一組限定の一棟貸し&バス・ベッドのみの空間が誕生しました。
葉山での開業から約5年。稼働率90%を超え、都心から近い「葉山旅」の特別な体験ができる場所に生まれ変わりました。この手法にはまだまだ可能性があります。蔵が守ってきた人や物、そして地域の歴史や風土、まちのつながりを想像しながら佇む。時代を経て「守られている空間」で過ごす。蔵ステイは、旅の体験をさらに深めてくれるのではないでしょうか。
そしてこの秋、富山県の立山、長野県の小布施の2カ所で、築100年超の米の蔵を改装した「蔵ステイ」が始まりました。信州の山々に囲まれた、その土地ならではの「蔵」。空間を活かした内装は、葉山の蔵と同様、インテリアデザイナーの石井佳苗さんが手掛けています。室内には地元産の木材を使用。家具や調度品など、ディテールの細部へのこだわりも見つけてみてください。
小布施のこの施設の近くには、酒蔵を活用したレストランも。味噌蔵や酒蔵を見学して、自分も蔵に泊まる…そんな日本各地の「蔵めぐり旅」もいいですね。全国の「可能性のある蔵」を宿泊施設に再生するBBTの挑戦は、いま始まったばかり。あなたのまちにも、「BBT」が生まれるかもしれません。
The Bath&Bed Team紹介サイト https://bathandbed.team/