何もないところ…つまりは「ゼロ」から町をつくる。例えば、新しく開発されたマンションや分譲の大規模プロジェクト。建物や施設・道路・歩道の配置やランドスケープなどを一体的に考える――そんなまちづくりがあります。まさに“ゼロスタート”なのですが、これはどちらかというと、動線などハードを中心にした「人の動き」に重点が置かれています。一方で、どんな町にしたいか？共通のイメージは？といった「ソフト」の部分を作りこみながら住民ゼロ人から町をつくる、共通理解をすり合わせる……というのは、なかなか難しいもの。エリア（ハコ）の特徴も大きな要素かもしれませんが、偶発的にかつ必然的に集まってきた人が、どのように「コミュニティ」を作っていくのか？（そもそもコミュニティという概念が必要か？）これは、「現代の暮らし方」への問いかけかもしれません。
横須賀市内で現在進行中のプロジェクト、旧市営田浦月見台住宅での取り組みは、まっさらなところから始まる「町の再生」。月見台という名称の高台平地に立ち並ぶ築60年超の平屋住宅を “なりわい住宅（職住兼用住宅）”にリノベーションする計画です。横須賀市が市営住宅としての運用を廃止したのが2020年のこと。最後の住人が2022年に去ってから、この住宅群には誰一人住んでいません。
緩やかな坂道、通称「のの字坂」（写真左）を上っていくと、これから再生する町「田浦月見台住宅」にたどり着きます
まさに、町としては「ゼロ」の状態に戻ったということ。建物自体は、店舗や作業場兼住宅としてリノベーションし、現在は、全50戸の大半に「仮入居」が決まっている状態。来年夏に全面オープン（まち開き）となる予定なのですが、見学者や入居予定者さんには、こんなことを伝えています。それが、まちづくりの“想い”のルールブック…フィロソフィーを共有しましょう、と。「フィロソフィー」というと、ちょっと堅苦しく（小難しく）聞こえてしまうかもしれませんが、平たく言うと「月見台のポテンシャルを再確認して、なぜこの場所なのか？どういうまちにしていきたいかを、共有の認識として持っておこうよ！」というもの。担当チームがあれこれイメージしながら26個のAtoZを作成しました。
この町「らしさ」を象徴するもの、「暮らし」について考えさせられるワードまで多種多様なAtoZ
例えば「U」はUpcycle（アップサイクル）。「老朽化した旧市営住宅を建て直すのではなく、元々の建物を活かし、手を入れて再生する。アップサイクルやリサイクルの精神を大事にしながら持続可能な取り組みを行っていく」というコンセプトです。また、「N」Neighborhood（ご近所さん）は「江戸長屋スタイルの街並みと共通の興味や価値観を持つ方々の入居により、通常のご近所付き合いを越えて相互に扶助し合う『仲間』となることを目指しています」――と言った風。さらに「C」はChallenge（チャレンジ）、「J」はJunction（ジャンクション）、「H」はHospitality（ホスピタリティ）などなど、入居者のマインドや“頭に入れてほしいこと”のキーワードが並んでいます。
これは「ねばならない」決まり事ではなくて、「こんな方向のまちにしたいと思っている」という一つの道しるべ。AからZまで読んでいくと、それぞれの入居者さんが頭に浮べる「月見台で暮らすイメージ」が、すり合わさっていくのではないでしょうか。
ちなみに、「E」はEnjoy。まさにエンジョイワークスが企業理念として掲げるValue 「3C+E」にもつながります。Challengeまずはやってみる！／Creation既存の枠にとらわれない！／Communication気持ちよいコミュニケーション！＋ENJOY――田浦月見台のプロジェクトはここにつながっているという訳。そんなエンジョイを体現できる町が生まれるのは来年夏。住まう人が、このAtoZを体現していることを想像しながら、来ていただけると嬉しいです。
【旧市営田浦月見台住宅クリスマスマーケット開催！】
12月14日（土）11:00〜15:30
開催会場：旧市営田浦月見台住宅（神奈川県横須賀市田浦町1丁目54）
アクセス：JR横須賀線「田浦」駅 徒歩10分
注意：駐車場がございませんので公共交通機関をご利用ください（二輪車は可）
参加費：無料
＊雨天決行/荒天時中止、子どもやペット同伴OK
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【横須賀／田浦月見台住宅についての過去記事はこちら】
＊昭和平屋の大規模リノベ――DIYにゼロから挑戦も!? 「田浦月見台＠横須賀」で始まる自分仕様の城作り！
https://enjoyworks.jp/times/109/
＊あるのはポテンシャルだけ？ 田浦月見台（横須賀市）のプロジェクトが注目される理由
https://enjoyworks.jp/times/105/
＊谷戸から生まれるクリエイティブ、田浦に人が集まる・人を集める理由
https://enjoyworks.jp/times/085/
上記写真はいずれも9月の現地マルシェイベントで。来訪者と住民がこんな笑顔で混じり合うことを妄想…
