エンジョイワークスが拠点にしている鎌倉市は神奈川県にあります。その神奈川県。自治体としてはとても複雑な構成で、「国内でいちばん人口の多い市」である横浜(約377万人)と川崎(約153万人)、相模原(約72万人)の3つが政令指定都市。その一方で「小さな自治体」は県内唯一の村、北東部にある清川村は約2800人。「町」は13あるのですが、その中でいちばん人口が少ないのが真鶴町(約6200人)です。人口ひとつとっても、370万人と6000人の自治体があるということ。同じ県内と言っても、人口や面積規模だけでなく、税収や住民サービスや自治体が抱える喫緊の課題も少しずつ異なっているのです。
さて、話は真鶴町。民間の有識者らで構成する「人口戦略会議」が今年の4月に公表した「消滅可能性自治体」の対象にも上がっています。これは、若年女性(20〜30代)人口が2050年までに半数以下になるという推測から。2017年には県内唯一の「過疎地域」に指定されました。ただ、町に魅力がないのではなく、雇用の場が少ないという要因も。町もこれに対する施策を進めていて、試住体験の推進、サテライトオフィスの誘致など、もともと町に縁のなかった人を呼び込んでいます。
町には、三方を海に囲まれた穏やかな自然や、これを守り継ぎながら住環境を守る「美の基準」と呼ばれる珍しい『まちづくり条例』があり、こうした動きから見ても住民が町を誇りに思う一面がうかがいしれます。町の歴史ある建物や公的遊休不動産もできる限り維持していきたい――。そんな思いも持っています。
真鶴町まちづくり条例「美の基準」普及啓発映像(令和5年度作成)
そこで、エンジョイワークスが町と連携して取り組みを始めるのが、「スモールコンセッション」。地方自治体が所有している小規模な遊休不動産を、その所有権を自治体が有したまま、施設の運営権などを民間事業者に設定する方式で、「スモール」というところが肝。町所有遊休不動産の維持管理コスト増大や持続可能な資金調達といった課題を、官民連携で取り組んでいこうというもの。今年度、国土交通省の「民間提案型官民連携モデリング事業」で、この取り組みの提案が採択されました。近年の町の施策によって、移住希望者が増加傾向にあり、実際に移住者による事業創出も生まれている中で、遊休不動産と事業者のマッチングやまちづくりの中間組織の形成などの「ポテンシャル」がある町ということも後押ししています。具体的には、町所有の古民家の活用法やその資金調達など、エンジョイワークスがこれまで、他の自治体で取り組んできたノウハウを、「町民が事業者となる持続可能なまちなか公的不動産再生モデルの構築」として実践していく計画です。
*【福井県池田町】自治体所有の遊休物件で事業を行う事業者を公募しながら育成するプログラム「事業者育成型公募」の例
https://enjoyworks.jp/times/084/
*【三重県南伊勢町】空き家バンクに従事する地域関係者の育成と不動産仲介・建築設計・ファンド事業者が連携した中間支援組織の構築例
https://enjoyworks.jp/times/022/
*【鎌倉市】市所有の古民家(旧村上邸)を企業向け研修施設と地域コミュニティ施設にリノベーションし運営している例
https://enjoyworks.jp/times/012/
9月28日には、真鶴町と「包括連携協定」を締結。私たちの持つ経験やノウハウを共有しながら取り組んでいきます。これまで、自治体との連携は各地でさまざまな事例があるのですが、「包括連携」という形は初めて。相模湾沿いの東端にある鎌倉を拠点にする私たち、西の端にある真鶴で始める「スモールコンセッション」。まずは、町の人の思いを聞き取る対話から。小さな取り組みの積み重ねが、地域に大きく還元されていくことを期待しています。
令和6年度「民間提案型官民連携モデリング事業」採択のリリース(国土交通省、7/12付)
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo21_hh_000250.html
真鶴町ホームページ
https://www.town.manazuru.kanagawa.jp/
スモールコンセッションに関する記事
https://enjoyworks.jp/times/086/