「まちづくり」に、自治体はどのような立場で携わるべきか――? 今や、「行政トップダウンのまちづくり」は時代にそぐわなくなっています。それならば、誰と・どのように進めればいいのか…などの課題もあり、なかなかノウハウを自分たち(行政側)で積み重ねるのは難しいようです。
そこで、国土交通省が推進しているのが「エリアプラットフォーム」という手法。官民問わず、エリアに関わるさまざまな立場の人を集めて、まちの将来を「ビジョン」として描き、実現に向けた課題や解決策を話し合う場を作ろうというもの。つまり、「地域(エリア)のことを議論する、共通の土台・場(プラットフォーム)」ということ。これを構成するのは、行政に加えて自治会町内会・住民・企業・まちづくり団体・地域団体・商店街や商工会議所、交通事業者・交通管理者など地域によって多種多様。そこには、まちづくりの専門人材や大学が参画することもあります。最近では、全国でさまざまな「エリアプラットフォーム」が生まれていて、重点を置く部分は異なりますが、賑わいの創出や住民のネットワーク形成、担い手の拡大から町並みや景観の形成、遊休不動産の活用などの成果が生まれています。
国土交通省による「エリアプラットフォーム」紹介ページ
https://www.mlit.go.jp/toshi/file/useful/⑤2023_エリアプラットフォーム.pdf
その「エリアプラットフォーム構築」の取り組みを新たに始めたのが、群馬県の南東部にある館林市。人口は約7.3万人、1954(昭和29)年に旧邑楽郡の1町7村が合併して生まれた自治体です。 このまちの課題のひとつが、市街地の空洞化。市の中心部にある館林駅東側の一帯は、近世城下町の伝統を引き継ぐ古くからの商店街もありますが、「商業機能の低下」「未利用地の増加」「居住人口の減少」などの深刻な問題を抱えています*(*同市「都市計画マスタープラン」より)。ただ近年、市内では少しずつ「賑わい創出」の拠点も生まれており、これを点から線、線から面に広げるために「エリアプラットフォーム」を組み立てていこう――という事業を始めました。
エンジョイワークスが担当するのは、その‟構築”にかかる調整やリサーチのほか、活動発信、参加者コーディネート、「どんなエリアプラットフォームが、この町に必要か(合っているか)」といった“視点合わせ”など。さらに、まちの将来イメージを共有しながら、官民連携で取り組むための「未来ビジョン」を策定していきます。つまり、進行のまとめ役と言ったところでしょうか。
そのキックオフとして7月に市の市街地推進係と実施したのが、まち歩きワークショップ。「今後のまちづくりについて多くの方と意見交換をしよう!」と、市民センター周辺エリア/歴史的建造物集積エリア/館林駅東口周辺エリアを「まち歩き」した後に、市民センター(建築家・菊竹清訓の手掛けたメタボリズム建築!)で、グループに分かれて、「未来に向けてのアイデア」を考え、地図の上に張り付けしながら、大きな“マップ”を作成しました。
今回のまち歩きイベントには、高校生も参加。‟お堅い”座学で侃々諤々とまちのことを議論するよりも、まずは、まちを歩いたシンプルな印象をインプットして、気付きを整理していくことで、より目線を生活視点に合わせていくことができたのではないでしょうか? これはひとまず「入口」の段階。今後も、地域住民参加型のワークショップを実施する予定で、議論を深めながら、「未来ビジョン」を作成していく予定です。
「地域(住民)を置き去りにしない」。まちづくりにおいて、まずはこれを心に留めておかなければなりません。さまざまな立場の人の意見や思いを「一つ」にすることは難しいのですが、これらを下敷きにしているというプロセスが大切です。多くの人を「巻き込む」手法のメニューにおいては、各地域でさまざまな実績のある、エンジョイワークスの出番かもしれません。館林市で私たちが併走している「エリアプラットフォーム構築」事業はここからが本題。新たな挑戦にご注目ください。
館林市官民連携まちなか再生推進事業について(館林市ウェブサイト)
https://www.city.tatebayashi.gunma.jp/s109/jigyousya/060/080/050/20240612183410.html