「商店街」ってどんな存在ですか? 年代によっても異なるかもしれません。どの街にも駅前や駅から住宅街への動線にあって、商店街に行けば、衣食何でも揃うことから、かつて「横の百貨店」と表現された時代もありました。生活圏に欠かせないものだったのですが、駅直結や郊外のショッピングモール、ロードサイドの大型店が増えて、その存在が小さくなっていったのは1980年ごろと言われています。いわゆる「シャッター商店街」という言葉が出てきたのがそのころ。商店街全体の利用人口が減ると、さらに人の足が遠のき、新規出店のハードルも上がってしまう。そんな悪循環に頭を抱える商店街…。
理由は、商業施設や大型店だけではありません。中小企業庁の調査では、経営者の高齢化による後継問題や店舗棟の老朽化、人を集める話題性を持った店舗がない(少ない)というものから、商圏人口の減少…様々な要因を挙げています。また古い商店街では、店舗兼住宅も多く、店を閉めても住居として使っているため、面的な再開発が難しいケースも少なくないと言われています。それなら、「商店街はなくてもいい?」――そんなことはないはず。お客さんとお店、お店とお店の距離が近くて人のぬくもりが残っています。揚げたてがその場で食べられる総菜屋、昔からの味のある喫茶店、お茶屋さん、金物屋さん、和菓子屋さん…いわゆる「専門店」の集まりなので、店主はみなその道のプロ。商店街という空間には、まだ可能性があるのです。
ちょっと前置きが長くなりましたが、商店街の空き店舗と既存店舗を活かす、おもしろい取り組みがあります。クジラ株式会社(矢野浩一代表取締役)が手掛ける「SEKAI HOTEL(セカイホテル)」。商店街や周辺の空き店舗をリノベーションして客室にし、食事は商店街の店舗、浴室は銭湯へ。町全体を一つのホテルとして楽しんでもらう仕掛けです。現在稼働しているのは、東大阪市の布施。元洋装店の店舗がフロントとラウンジになっていて、チェックイン時に渡される「SEKAI PASS」が商店街巡りのキーアイテム。商店街の指定店舗の商品が特別価格で購入できるほか、「SEKAI PASS」専用の体験プログラムや特別メニューもあります。「食べ歩きプラン」なる宿泊セットもあって、「旅先の日常に飛び込む」体験ができる、ユニークなホテルです。旅人という「よそ者」にとっても、その町の日常を楽しむステージとして商店街が機能するわけです。
東大阪・布施では2018年の開業以来、「まちを歩く・滞在する仕掛け」を作ることで、新たな人を呼び込んでいます。商店街の再生というと、エリアの全体リノベーションをイメージしやすいですが、各店舗をホテルの食事処やレクリエーションの場と捉えて、既存店舗の価値を再構築・コンテンツ化した好事例と言えるでしょう。SEKAI HOTELの名称は、「『NoBorder なセカイ』を作り出すホテル」というビジョンから、とのこと。商店街やそれぞれの商店、地域と「ゲスト」が、混ざりこんで、心地よいコミュニティが生まれているのです。空き家や空き店舗の活用と言うと、その物件や場所に焦点が当たることが多いのですが、「商店街全体で(再生したものを)どう使うか・使えるか」という視点は、まだまだ少ないかもしれません。長年、空き家の課題に取り組んできた私たちにとっても、新鮮かつ、可能性のある取り組みだと思っています。
「地域課題を解決するヒントは地域にある」。SEKAI HOTEL代表の矢野浩一さん(クジラ株式会社)とエンジョイワークス代表、福田和則が登壇するトークイベントを4月20日(土)に開催します。矢野さんには、創業時の想いや「これまで」について、後半は福田を交えて「これから」「みんな」のSEKAI HOTELついて語り合います。「空き店舗×商店街×旅」の新しいカルチャーをのぞいてみませんか?
オンラインイベント
みんなでつくる「これからの商店街のかたち」
■概要
日程:2024年4月20日(土)
時間:19:00〜20:30
開催形態:オンライン、参加無料
■当日のプログラム
①「これまでのSEKAI HOTEL」 (SEKAI HOTEL代表、矢野さん)
②「これからのSEKAI HOTELについてトークイベント (矢野さん×福田)
③ みんなで考えるこれからのSEKAI HOTEL
■こんな方におすすめ
✓商店街活性にお悩みの方
✓大阪布施に空き家をお持ちの方
✓空き家活用に悩まれている方
✓SEKAI HOTELの取り組みに興味のある方
※当日の進行は予告なく変更することがあります
参加申し込みはこちら
https://ewform.enjoyworks.jp/index.php?id=1390
セカイホテルホームページ
https://www.sekaihotel.jp/