南伊勢町移住定住コーディネーターで「むすび目Co-working」の一員として活動している西川百栄さん。南伊勢町とエンジョイワークスの「自治体共創」、さまざまな「空き家課題」のモデル事業に参加されています。(聞き手:ENJOYWORKS TIMES 佐藤朋子)
――この町に関わるきっかけは?
私は南伊勢町(旧南島町)の出身で、学生時代に一旦町を出たのですが、30代になって「三重に戻ろう」と京都からUターンしました。街に関わることをしたい、といったような大きな目的があった訳ではなく、(故郷のような)田舎で暮らしたい、と漠然とした思いでした。でも、外に出て気付いたんです。若いころ「何もない」と思っていたけど、自然も豊かだし、漁師町ならではの賑わいもあった。視点を変えると魅力があるな、と。
三重に戻って、携わった仕事が地域のタウン誌。自分の知っている町ではあるけれど、取材で関わっていくうちに視点が広がりました。動いているうちに関わりができたのが、町役場のまちづくり推進課。「町の移住定住コーディネーターをやらないか?」と声をかけてもらい、最初の年は週2~3日ほどで、以降、日数を増やして「専任」となったのです。
――行政との「つなぎ役」として、白羽の矢が立ったのですね
ほかの仲間は、名古屋から南伊勢町に移住してきた西岡奈保子さん、地域おこし協力隊で神奈川県からやってきた伊澤峻希さん(現在は県外在住)。町が「空き家バンク」の事業をしていることは知っていましたし、問題意識もありました。何かできたら、というタイミングでもあったと思います。
当時、私は自宅でリモートワークをしていたのですが、この町にはいわゆる「コワーキングスペース」のようなものがなく、気軽に立ち寄って仕事ができる場所があったらな、とみんなで話し合っていました。「自分たちのためにも、町に足を伸ばしてくれた人にも活用してもらいたい」と『しごとば 油屋Ⅱ』というコワーキングスペースをオープンしました。隣はみかん畑、窓からは海。この町ならではの「居場所」になっています。今は、ここを拠点に、空き家バンク運営や移住定住サポートなどを行う『むすび目Co-working』というグループで活動しています。
――エンジョイワークスとの関わりは、国土交通省のモデル事業ですね。2回採択されています
最初の事業では、人材育成としてエンジョイワークスの「空き家再生プロデューサー®」の集中講座を受けさせていただきました。フィールドワークと座学、プレゼンテーションでみっちり2日間。全国の事例を知ることもできて濃密な講義でした。そこから空き家を再生する新たな事業も生まれています。
2022年の事業では、空き家バンクで不動産仲介が実施できる体制を整備しました。南伊勢町は、空き家バンクの物件を扱う不動産業者がおらず、特に賃貸契約のやりとりのハードルが高いというのが大きな課題でした。オンラインでの重要事項説明の導入のほか、不動産実務面や資金調達などの事業に欠かせない部分をサポートして地域内業を具体的に進めていく「中間支援組織」を整えました。エンジョイワークスのサポートを受けて、移住定住希望者への空き家活用情報をまとめたWebサイト(「空き家から始める南伊勢」 https://minamiise.hello-renovation.jp/)も運営しています。「困ったときにまず相談できる人・場所」として機能しつつあるかなと思います。
――「移住定住コーディネーター」の仕事が、少しずつバージョンアップしてきているようですね!
町内にはいわゆる「アパート」物件がなく、移住するにしても戸建てしかない、となると二の足を踏んでしまうかもしれません。移住のお試し住宅をみんなでDIYして作ったり、「コミュニティの場」を少しずつ増やしていったり。「定住」も支援する立場なので、住んでいる人のサポートなど「できること・やるべきこと」は広がっています。空き家バンクの登録も、問い合わせも増えていて、町外の不動産事業者が物件に関わってくれるようになってきました。物件や人材が活性化しつつあるなと感じています。
私たち「むすび目Co-working」のメンバーは、それぞれ得意分野があります。西岡さんは「うみべのいえ」というプロジェクトで、シェアキッチンやフリーリビングを手掛けています。私は日本酒好きが高じて、「道行竈日本酒造りプロジェクト」など地域活動も行っています。2018年にスタートした事業で、道行竈は平家の子孫が暮らす小さな農村集落。耕作放棄地での日本酒造りを通した地域の再生が始まっています。
私たちの「南伊勢町のむすび目になりたい!」という思いが、少しずつ実を結んでいます。
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