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元・工場をシェアする事で生まれる、利用者の主体性とコミュニティ

Column 公開日:2024.01.16

コワーキングスペースやシェアオフィスが増えている昨今。場所をシェアする――。それが「工場」のスペースだったら、どう使う? そんな参考になるのが、藤沢市にあるKIKI BASE FUJISAWA。「KIKI」というのは、かつての名称。藤沢機器という会社の機械加工工場として50年近く稼働していたことから。ものづくりのスピリッツ…みたいなものも込めているのです。ここの謳い文句は「工具使用&音出しOKのシェアスペース」。何かを生み出す「秘密基地」みたいなイメージでしょうか。

なぜシェアスペースだったのか。これには、前例があります。その物件は神奈川県逗子市にあった廃工場。エンジョイワークスが開いた妄想の場「そんな物件ねーよ!をつくる会議」と題したイベントで、利活用を議論したのがはじまり。中心となったのは、「工房やアトリエがほしい」という要望を持ったクリエイターやアーティストたち。住居とは別に音やスペースを気にせず、思いっきり創作活動に打ち込める場所を欲しがっていたのです。

一般的な不動産の流通は、居住用物件がほとんどで、「作業に適した物件を探すのが大変」という現状も。さらには、専用のアトリエが欲しいけど住居のほかに多くの賃料は払えない…という懐事情もありました。この「会議」には、おもしろくて意義のある案件に投資したい、と考える投資家さんも参加。「今までにない物件をみんなで作ろう」を実現すべく併走するのが、私たち。投資家自身が物件オーナーとなり、シェアスペースへとリノベーションして、誕生したのが逗子市桜山のシェアアトリエ「SAQLAB(サクラブ)」です。作業用のアトリエなので、利用者がそれぞれカスタマイズできるようにしたり、DIYをイベント化して内装をみんなで手掛けたり。まさにボトムアップでつくりあげたサクラブは、2018年の開業以降、15室のブースは大半が埋まっている状態です。

元・工場を転用して2023年春に開業した「KIKI BASE FUJISAWA」も、この取り組みがベースになっています。内部を解体する前の見学会のほか、3畳ほどの個室スペースをどう使うか?とシミュレーションするワークショップを開いたり、「元工場をフリーダムに妄想する会議。」なるものを開催したり。さまざまなアイデアや要望が、この場所に詰まっています。

リノベーション前のワークショップでは、実際に工場に3畳のスペースを描いて使い方を「妄想」したり(写真左)、アイデアを文字や絵に起こしたり

逗子の施設よりも規模が大きく、3.0〜16.2㎡のブースが43室。広い空間で作業したい人のために、フリースペースやラウンジも用意しています。趣味のクラフトの場、工具を使った作業、サスティナブルブランドの製作・販売拠点など利用方法は多種多様。スタートアップ企業で開発拠点としている人も。「シェアオフィスは増えているけどパソコン作業しかできない。自由に音を出してモノを作れる場所を探していた」「個室があって大きな機材を置ける」など、潜在的なニーズに応えています。

ここは、単なる「場所貸し」だけではありません。私たちが特に、力を入れているのが、まざりあいの「交流」。潜在ユーザーだけでなく、地域の方々にも「KIKI」を知ってもらおうと「小商いマーケット」と題したマルシェも。利用者にも、ここで活動するメリットをたくさん感じてほしいし、地域の人にも「面白そうなコトやモノが集まっている」と注目してもらいたい。2024年の年明け、最初の日曜日には、利用者を中心とした餅つき大会も。ごく普通の「町工場」が、多世代で賑わう場所に醸成されつつあります。

「小商いマーケット」の様子(写真左)、餅つきはコミュニケーションのきっかけにも

「入居しているアーティスト同士でコラボした作品を手掛けてみたい」「アトリエを持ちたいという人には良い環境」「ものづくりのモチベーションを高く持った人が集まっているので刺激になる」「コミュニティとして面白い場所」――と、利用者の反応も上々。ジャンルの異なる人たちとのコミュニケーションやアイデアの混じり合いから、新たな創造、新しい分野のアーティスト、発明家が生まれるかもしれません。

「工場」の雰囲気を残しつつ、創作に集中できるセカンド・サードプレイスに

KIKI BASE FUJISAWA
https://kikibase-fujisawa.com/

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