ペット・ドットコムの失敗に学ぶ。 リアルなビジネスモデルをWEBサービスに置き換えてもスケールしない理由。

ペット・ドットコムの失敗に学ぶ。 リアルなビジネスモデルをWEBサービスに置き換えてもスケールしない理由。

「インターネットでは、君が犬だってことは誰もしらない」

(重要なのは、あなたには売りたいものがあって、買いたいと思っている人がいることなのです。)  - 匿名

こんにちは、最近SF小説にハマっている、システム開発部のしゅんです。GoogleやAmazonを作ったアイディアって会議やビジネス書からではなくて、SF小説からの妄想がインスピレーションなんですね。

今日は歴史から学んでみようと思います。

ドットコム・バブルの頃(2000年)、ペット・ドットコム(1998年設立)という会社がありました。

インターネット上で、ペットフードやペット関連商品を売ることがビジネスモデルです。

ペット・ドットコムはドットコム・バブルの波に乗って、当時もっとも注目されている企業でした。多額のマーケティング費用をかけ、IPOも実施して、ナスダックに上場を果たし、多額の資金調達にも成功しました。

ところが2000年にペット・ドットコムは倒産してしまいます。

なぜでしょうか?

そのビジネスモデルが破綻していたのです。リアルなビジネスモデルに、インターネットをくっつけただけだったのです。

自分たちで仕入れたペットフードやペット関連商品を、固定費のかかる借り上げの倉庫で管理して、ライバルに負けないよう価格を抑えて、自分たちだけが発信するWEBサイト上で売っているだけだったのです。しかも、ペットフードは利幅が薄い商品になので、事実上、商品が売れる度に赤字を出していました。

要するに高コスト上、利幅ゼロのビジネスモデルだったのです。それ以上に問題があります。リアルなビジネスモデルをネットに展開しただけで、インターネットの本来の力を理解していなかったのです。他のドットコム・バブルに乗った企業も同じようなものでした。

一方でドットコム・バブル崩壊から生き残った企業もあります。

その名は「イーベイ (eBay)」です。

イーベイはインターネット本来の力を理解していました。彼らはペット・ドットコムと違って、インターネット上で、誰でも何でも売買できる「完全なマーケット」を作ろうとしていました。

古いビジネスモデルに、インターネットをくっつけただけのドットコム企業と、イーベイ根本的な違いは何だったのでしょうか?

ペット・ドットコムは直線的なビジネスモデル。

直線的なビジネスモデルとは、自分たちで商品をまたサービスを作り、それを顧客に販売すること。価格はサプライチェーンを通じて、一方向に直線的に流れます。おそらく一番わかりやすいビジネスモデルです。

直線的なビジネスモデルは工場、倉庫、設備、人的資本などの大規模投資が必要です。要するにリアルな人、モノをあらかじめ揃えないといけません。大規模ほど効率的なのですが、その分、費用がかかります。直線的なビジネスモデルは社内で価値を生み出し。その価値を顧客に動かすことに力を入れます。価値の流れが左から右、プロデューサーから消費者へと流れます。そこでは、企業が社内に保有していて動員できる資源が、もっとも価値ある資産になります。

プラットフォーム革命より

イーベイはネットワーク型(双方向)なビジネスモデル。

ネットワーク型とはネットワークが企業と個人を結びつけ、お互いに価値交換を可能にするビジネスモデルです。ネットワーク型企業における価値の交換は左から右、右から左へんと多様な方向性持ちます。なので、企業が何かを所有しているよりも、何を結びつけられるかのほうが重要になります。ペット・ドットコム とは異なり、イーベイは高い倉庫の維持費も、輸送費も負担する必要がなかったのです。それはイーベイで売られる商品が、ありとあらゆるところから供給されているからです。

プロデューサーはいつでも、消費者になれ、消費者はいつでもプロデューサーになれる。(プラットフォーム革命より)

イーベイでは、商品も在庫も持たず、デジタルインフラだけを提供して、その周囲にコミュニティーを作ったのです。利益は手数料です。

出品者にとっては費用ほぼゼロで、グローバルな流通経路をえたことになるのです。ネブラスカの骨董品店が、ニューヨークやロンドンに買い手を見つけたのです。

「ユーザーに、プロデューサーにも消費者にもなれるパワーを与えたかった」- ピエール・オミダイア(イーベイ創設者・プログラマー)

商品が理論上無限に拡張でき、参加者も理論上無限です。商品が取引なので理論上無限にスケールします。

限界費用が低ければ無限に拡張できる、その拡張こそが誰に真似できない商品になる。インターネット本来の力です。

ドットコム・バブルを生き抜いた企業には全て共通項がある。全てプラットフォーム企業だったのです。

直線的なビジネスが、商品やサービスを作ることで価値を生み出すに対して、プラットフォームは繋がりを作り、取引を「製造する」ことで価値を生み出したのです。GMは自動車を作るが、ウーバーはドライバーと乗客の取引を作ります

八百屋さんは自分たちで、商品を仕入れて在庫を管理して、客を呼び込んで売ります。一方で、市場やマルシェは、みんなが取引できる場を作ります。この違いですね。出店が多いと顧客も増え、顧客が増えると出店も増えます。正のフィードバックループが発生するのです。

直線的ビジネスモデルは供給側が一人なので組み合わせ数は足し算で増えていきます。しかも増えるごとに社内のリソースを消費します。

1*1, 1*2, 1*3, 1*4 ….1*N

ネットワーク型は参加者(需要側*供給側)の組み合わせなので、掛け算で増えていきます。ただ、デメリットは減る時も掛け算で減っていきます。

組み合わせの数 = N × (N-1)

1 *0,2* 1,3 * 2,4 * 3 …N*(N-1)

いつも思うのですが、優れたサービス設計者というのは、どこかこのループ・フィードバック・再帰構造というの理解しているように思います。

どちらかなのか、簡単に見分ける方法として、スケールするのに社内の営業に依存する場合、それはもうスケールしません。直線的ビジネスモデルかプラットフォームを目指すのか、はっきり決めたほうがいいでしょう。

プラットフォームを目指すのであれば、コア取引がどれだけ低コストで円滑かになるかに投資する必要があります。なぜならコア取引が商品だからです。逆に言うとリアルの取引がどれだけ面倒かで、デジタルに置き換える価値があると思います。

経験じゃなくて、歴史から学びたいですね。

参考文献:プラットフォーム革命

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