大阪の最先端が集まる梅田から徒歩圏内、「中津商店街」を知っていますか? 長さ約160m、アーケードのある昭和レトロな佇まいの昔ながらの商店街で、履物屋だった建物をリノベーションするプロジェクトが始まっています。
「商店街に行けば、衣食がすべて揃っていた」時代は、もはやひと昔前の話。「シャッター商店街」があちこちに見られるように、空き家同様、空き店舗の増加は全国的かつ大きな課題となっています。郊外の広い商業施設にお客さんが流れた、ネットでの注文が浸透した…などの買い物文化の変化も要因ですが、後継者がいない、(商店街に賑わいがないため)新たに店をやろうという人があまりいない…といった循環がないことも理由にあるようです。とはいえ、日本ならではの「寄り合いのコミュニティ」「商店街文化」が衰退してもいいの??
そこでスタートしたのが、このプロジェクト。商店街の一角にある木造2階建てを、現代のクリエイティブな感性を持った人や企業のための場所に生まれ変わらせるというもの。実は、この中津ではここ数年、古き良き時代の商店街の雰囲気に惹かれて、個性的なお店が増えています。関西最大の経済マーケットの中心地・梅田から目と鼻の先というのに、昔ながらの長屋住宅や渋い裏路地もあり「昭和感」がまだ色濃く残っているのです。画一化された現代の街並みとのギャップに魅力を感じた人が集まっていて、例えば、本格広東風の中華粥屋さん、設計関連の会社が作った新感覚ラーメン屋さん。ラテ専門店、スパイスカレー。新陳代謝が進んでいる一方で、町中華や駄菓子屋など昔ながらのお店も存在感があります。
現代的な感性をもつ人によるお店と「昔ながら」の雰囲気が混在する中津。そんな「コミュニティ」で影響しあう場にしたいという思いを込めて、リノベーションする施設には「Ω Complex Nakatsu(オメガ コンプレックス ナカツ)」と名付けています。「魅力的で変わりつつあるエリアに、新たな風を吹き込みたい」。大阪中津リノベーションファンド、プロジェクトリーダーの糀屋総一朗さん(ローカルツーリズム株式会社)は、そう話します。クリエイターのオフィスや飲食店、セレクトショップなど、「新しい波を作る人たち」が集まる場にしたい。施設の設計は地元中津の設計事務所、SPACESPACEさん。気鋭の造園ユニットveigも参加しています。
「私たちの目指す地域創生は、『ガワ』である建物や施設だけではなく、そこで生まれる『仕組み』」と、糀屋さん。令和時代の、新たな「商店街文化」。アイデアや人の「complex」が、どんなクリエーションを創造していくのでしょうか。